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企業の80%がVistaを飛ばしてWindows 7へ――ただし、時間を置いて

» 2009年04月14日 11時51分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK

 企業の10社中8社がWindows Vistaを飛ばして直接Windows 7を導入する計画を立てている。ただし、すぐに乗り替えるつもりはないという。

 Windows Vistaのときと同様、システム管理アプライアンスメーカーKACEが企業のWindows 7移行計画についての調査を依頼した。Microsoftにとっての朗報は、調査に参加したIT担当者の83%が、Vistaを飛ばして直接Windows 7に移行すると答えたことだ。だが悪いニュースもある。そのうち12カ月以内に移行する予定があるのは、わずか17%だ。

 このデータは、先週ChangeWaveが発表した調査結果と食い違っている。ChangeWaveの調査では、53%の企業がVistaを飛ばしてWindows 7に移行すると答えていた。これはChangeWaveの調査の質問があいまいだったせいだと思う。KACEも調査を実行したDimensional Researchも、質問内容を公開していない。ここではその調査結果と幾ばくかの分析を掲載するが、少なくとも多少注意して扱うべきだろう。

 Dimensional Researchは、オンライン調査ソフトZoomerangを使っている1142人のIT担当者にWindows 7に関する調査への参加を依頼した。意外なことに、Windowsをインストールしていた回答者は99%だけだった。残る1%はMacかもしれないし、Linuxかもしれない。

Windows 7の採用計画。12カ月以内に移行する企業は17%、12〜24カ月は42%

 先述の悪いニュースは、そんなに悪くないかもしれない。調査報告書では、IT担当者に「12カ月以内」にWindows 7にアップグレードするかと聞いたようだ。「Windows 7がリリースされてから12カ月以内」ではなく。この違いは大きい。Dimensional Researchが調査を実施したとき、Windows 7の公式な出荷日は分からなかった(今も分からない)。Windows 7が少なくとも夏まではRTM(製造工程向けリリース)にならないであろうことを考えると、3月から12カ月というのはMicrosoftに非常に都合がいい。この12カ月から6カ月ほど差し引いて考えることになる。

 これは、質問がリリースから12カ月以内と明言しておらず、多くの回答者が「12カ月以内」を「Windows 7リリースから12カ月以内」と解釈しなかったことを前提としている。調査の質問と回答は具体的でなければならない。

Windows 7の移行プラン。Vistaを飛ばすと回答したのは83%、Vistaを経てWindows 7に移行する企業は10%

 12カ月以内にWindows 7にアップグレードしないと答えた83%の企業のうち、43%はその理由として不況を挙げている。調査で挙がった理由には以下のようなものがある。

  • Windows 7を利用するのに必要な新しいハードを買うための費用が減った、あるいは予算が凍結された
  • OS移行の管理に必要な人員が減った
  • 費用削減のため、Linuxへの移行を計画

 今回のWindows 7の調査結果は、企業のVista導入計画の調査結果と驚くほど一貫している。2006年7月にJupiterResearchが実施した調査(当時JupiterResearchに在籍していたわたしが行った調査だ)では、社員100人以上の企業の54%が、24カ月以内にVistaにアップグレードする計画だと答えた。Dimensional Researchの調査では、24カ月以内にWindows 7へ移行する企業は約59%に上る。もちろん、Vistaの導入は計画通りには進んでいない。アナリストの推定では、2008年末の時点でVistaを導入していた企業はたった10%という。

Windows 7に関する企業の懸念。ソフトの互換性、ハードウェア要件、ユーザーのトレーニング、安定性、パフォーマンス、セキュリティが挙がっている

 Dimensional Researchの調査では、ほかにも興味深い点がある。

  • Windows 7にアップグレードする企業の半数強が、主な理由として「Vistaを避けるため」と答えている
  • 調査に参加したIT購買担当者の17%が、Windows 7β1をテストしている
  • 企業の14%が別のOSに乗り替えており、そのうち27%がMac、25%がUbuntuを挙げている

 このOS乗り替えに関する調査結果は明確さに欠けており、誤解されやすいかもしれない。ほとんどの企業は複数のOSを使っている。OSを乗り替えていると答えた14%の企業は、全社的な乗り替えという意味では言っていないはずだ。WindowsとほかのOSを増やすという意味なのだろう。それでもMicrosoftにとっては心配の種になるはずだが。Dimensional ResearchはMacに移行している企業の割合を強調しているが、Ubuntuの方が重要だと思う。Macは2008年の28%から低下しているが、Ubuntuは前年の21%、2007年の17%から上昇している。

 当然ながら、Windows 7に関する懸念を見てみると、ソフトの互換性を一番に挙げる回答者が目立って多かった(88%)。それには以下の2つの理由があると思う。

  • 相互運用性と互換性がすべてのIT部門の最大の懸念事項であることは以前から調査で示されている
  • Vistaをテストした多くの企業が、ソフトの互換性問題で痛い目に遭った

 この調査結果が実情を反映していると仮定すると、Microsoftは大きな懸念を抱くだろう。Vistaで使えるアプリケーションのほとんどはWindows 7とも互換性があることをIT購買担当者に知らせるために、さらなる努力をしなければならない。だが問題は、ほとんどの企業がXPから乗り替えるということだ。多くの企業はVistaともWindows 7とも互換性のないアプリケーションを持っている。

企業が懸念するWindowsのコスト。72%がWindows 7への移行コストを懸念

 それからMicrosoftが考慮すべきなのは、72%の企業が「Windows 7に移行するためのコストと諸経費」を懸念しているのに対し、「次第に時代遅れになるXPを維持するための費用」を懸念している企業は28%という点だ。Microsoftはこうした企業が、不況の影響で移行より待つ方を選ぶことに気付くだろう。

 今後数カ月のうちにこの種の調査がもっと出てくると思う。問題はそうした調査結果の間にどれだけ整合性があるのかということだ。

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