このパターンに対しては、自分がどんな時にうつや不安になりやすいか、毎回客観的にチェックしておいてほしいです。症状が現れる直前どんな出来事があったか、自分が何を考えていて、どんな感情になったかを簡単でいいのでノートに記入しておいてください。そして、症状が起きるパターンに気付くだけで、大抵の場合はそのパターンから抜けられるようになります。
私が実践している例を紹介しましょう。
ある朝、目が覚めた瞬間、うつではありませんが、憂うつな気分でした。いつから憂うつになったか、症状の始まりの地点を見つけます。
「昨日、寝る時は? なんとなく憂うつだった。お風呂入っている時は? ずっと憂うつだった。その前のどの地点から? 友人と電話で話す前は……ああ、憂うつじゃなかった。電話で話しはじめのうちは憂うつじゃなかった。最後のあたり、電話を切る前あたりから気分が憂うつだったな」と、過去を振り返ります。
そして、その憂うつになる直前に何があったのかを考えていきます。
「友人に自分の将来の夢を語った時に、『バカじゃん。お前にそんなことできるはずないだろ』と言われた。その直後どうだったか。ああ、それから憂うつになったんだ。この友人は悪気は全然なく、冗談で言っているのは分かっている。だから言われた時は『そうだよな』と流したけれど、親友だから本当は『お前ならできるよ』と励ましてほしかった。だから憂うつになったんだ。ああ、そうか。じゃあ、そんなに気にする必要はないな」
というように、大抵の場合は原因が分かると気がラクになります。
それでもやっぱりまだ気になる場合は、心理的な問題というより対人関係上の問題でしょう。この場合はさらに対処が必要になります。
先の例でいえば、もう一度電話をかけて、なるべく冷静で温かい雰囲気で話します。「昨日こんな話をしてたじゃん。自分の夢を語った時さ、『バカじゃん』って言っただろ。悪気がなかったのは分かっているし、お前だったら応援してくれているのも理解してはいるんだけど、やっぱり親友だから、『お前ならできるよ』って励ましてほしかったんだよ。やっぱりちょっと気になったから、伝えるために電話したんだよ」とニュートラルに言う。
すると、友人も「ごめん、ごめん。悪気はなかったんだよ。俺は絶対できると思ったんだけど、ついふざけて言っちゃって」「だろう? そう思ったんだよ」というように、電話をしただけで憂うつから抜けることができます。
つまり気付くだけで抜けられる時と、それに対処することで抜けられる場合があります。
それでもダメな時は専門家に相談してください。ひどいトラウマになっている場合は、さすがにこの記事を読んだだけではちょっと対処できないですね。
ピークパフォーマンス 代表取締役
平本相武(ひらもと あきお)
1965年神戸生まれ。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了(専門は臨床心理)。アドラースクール・オブ・プロフェッショナルサイコロジー(シカゴ/米国)カウンセリング心理学修士課程修了。人の中に眠っている潜在能力を短時間で最大限に引き出す独自の方法論を平本メソッドとして体系化。人生を大きく変えるインパクトを持つとして、アスリート、アーチスト、エグゼクティブ、ビジネスパーソン、学生など幅広い層から圧倒的な支持を集めている。最新著書は「成功するのに目標はいらない!」。コミュニケーションやピークパフォーマンスに関するセミナーはこちらから。
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