これで切り替えトークの基本は押さえました。それではこの基本を押さえた上で、2つの類型に合わせてちょっとしたアレンジを入れた切り替えトークの実例を見てみることにしましょう。
まずは、テーマAとBの間に関係がなく、Bに移るときにはAを忘れてしまってかまわないケースです。こちらのほうが簡単です。
「いったんAのことは忘れちゃってください」の一言がポイントで、これを入れることで「Aが分からなくても大丈夫、気にしないで次をやろう」という意識を作り出します。これがテーマ転換のサインです。
それに対して、Aを理解した上でBを考えよう、という場合はどうでしょうか。この場合は「忘れちゃってください」というわけにはいきません。かといってうかつに「Aを踏まえてB」とやると「消火」ではなく「放火」になってしまいます。
以上、発展型の場合は、不安があることを「認めて」しまうのがポイントです。受講生にとっては「分からない」ことそれ自体もさることながら、「分からないまま取り残される」というのが一番大きな不安になるので、「あなたが不安な気持ちになってることを私は分かってます。大丈夫ですよ」と講師のほうから不安の存在を認めてしまいます。そうすると受講生も安心して自分の不安を認めることができるという、不思議な現象が起きるんですね。
あとはその不安を期待に転換させることです。実際、「Aの理解の上でBが出てくる」、という関係の学習テーマがあると、Aだけではよく分からなかったものがBを扱うことで納得できる、というケースはよくありますので、こういう「期待への転換」が功を奏します。本当は理解しているのに、気持ちが不安なだけ、という受講生にはこれだけで十分です。
もちろん、本当にAの理解が全然できていない、という場合は気持ちだけ切り替えても無理なので、そういう場合は後で個別に対応しなければいけませんが。
そのような限界はありますが、限界をわきまえて使う分には、今回ご紹介した、
は、実は一対一で仕事を教えるような場面も含めて「教える」ための効果的なテクニックです。終わりと始まりを明示すること、基本はそれだけです。ぜひ意識的に使ってみてください。
IT技術者の業務経験を通して「読解力・図解力」スキルの再教育の必要性を認識し、2003年からその著述・教育業務を開始。2008年は、「専門知識を教える技術」をメインテーマにして研修・コンサルティングを実施中。近著に『ITの専門知識を素人に教える技』、
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