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» 2010年12月10日 18時00分 UPDATE

夫婦で始める“エクストリームコミュニケーション”:夫は納得、妻は満足――の会話ノウハウを探せ!

【新連載】夫婦円満のためにはコミュニケーションが大切だと理解はしていても「何を、どう話せばよいか」でお悩みの人も多いのではないでしょうか。ごくごく普通の夫である私が試行錯誤の上に発見した、ちょっと変わった夫婦間コミュニケーションのノウハウについてお話します。

[シックス・アパート 中山順司,Business Media 誠]
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 夫婦間のコミュニケーションは難しいものです。付き合いも長いと、話題もなくなります。

 年中一緒に暮らしていれば、会話のネタも尽きてきますよね。夫婦円満のためにはコミュニケーションが大切だと理解はしていても「何を、どう話せばよいか」でお悩みの人も多いのではないでしょうか。

 これからお話しするのは、ごくごく普通の夫である私が試行錯誤の上に発見した、ちょっと変わった夫婦間コミュニケーションのノウハウについてです。


話したがる妻、話さない夫

 わが家では、妻はこんな会話をしょっちゅう私に仕掛けてきます。(下記は2010年6月ごろ)

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 ねえ、アナタ。私たち、最近コミュニケーションが足りてないと思うの。いろいろ話さない?


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 それはかまわないけど……例えば何を?


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 いろいろよ、ふだんの生活のこととか……。日常生活とか、身の回りの出来事についてよ!!


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 えっと、それは菅内閣の発足とか、宮崎の口蹄疫問題とか、小惑星探査機はやぶさの地球帰還についてとか? ワールドカップの対デンマーク戦で本田が決めた無回転フリーキックのこととか?


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 そういう重苦しいのとか、サッカーの話題じゃなくて。


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 じゃあ、いったい何を?


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 ほら、そうやってコミュニケーションを避けようとする!(怒)


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 そんなつもりはないよ、じゃあキミは何を話したいの? 提案してみて。


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 うーん、すぐには思いつかないんだけど……。


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 なんだ、自分で何を話したいかも分からないのか。


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 なによ、アタシに丸投げしないでよ。ひどいわ。それってオトコの怠慢よ。


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 えー、オレのせい?(言いだしっぺはお前なのに……)


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 とにかく、夫婦としてもっと話し合うことがあるでしょう? 具体的な話題なりテーマはアナタに任せるから考えてくれる? それにしても、本田のフリーキックを話し合うってなによ、バカも休みやすみ言いなさい、だいたいアナタって人は……(以下省略)。


 ――このように、いつも私が悪者になってしまいます。

焦る妻、戸惑う夫

 どうやら妻には「夫と何を話せばよいか分からないが、何かを話さなければ、何かまずいことが起きそう」という漠然とした焦りがあるようです。神経質になるなよとなだめるのですが、妻の耳には届きません。

 さて、妻でさえよく分かっていない(!)夫婦で話し合うべきテーマを探せとの命を受けたものの、私にも見当がつきません。そこで、まずは「コミュニケーション」の定義について、改めて確認してみました。そして私と妻では、そもそもの定義に大きなギャップがあることに気がついたのです。

私の定義 妻の定義
定義 議論や意見の交換を通じて問題解決を試みる行為 目的やゴールを設けぬまま言葉のキャッチボールをし、共感しあう行為
目的 明確にする あいまいでOK
時間 なるべく短時間で終わらせる 時間はあらかじめ制限せず、気の済むまで続ける
テーマ 事前に設けた議題をクリアする 議題やテーマは臨機応変に変化してかまわない
成果 成果を求める(新しい知識、両者間の合意、情報の習得など) 共感しあう、互いの理解を深める

 うーむ、まったく正反対です。私の定義は妻には「事務的でドライすぎる。味気ない」と映るようです。互いの話がかみ合わないのも、無理はありません。

 読者のみなさんからも「わが家も似たようなもんだ」とか「ウチの旦那、そんな感じだわ」という声が聞こえてきそうです。似た状況のカップルは多いような気がしますが、いかがでしょうか。

 むろん私としても、夫婦としてよりよいコミュニケーションをしたいとは思います。しかし、目的も意味もなく、ダラダラした会話に付き合いたくないのもまた事実なのです。

 そこで、夫側の要望である「話し合いには、目的や意味あるべし」と、妻側の「他愛なくてもよいから、言葉を交わして共感しあうこと」を同時に満たすテーマを本格的に探し始めました。今年の6月のことでした。

TVがキッカケで大激論

 答えの見つからないまま数週間が過ぎたある日曜日、たまたまTVで、性同一性障害を取り上げたドキュメンタリーを妻と見ていました。

 私は同意を求める口調で「もし自分の子がこういう障害を抱えたとしても、親としては寛容に受け止めて、支えてやりたいよなあ」とつぶやきました。ところが妻は、「とんでもない! 問答無用で勘当でしょ!?」と正反対の感想を述べたのです。私は面食らいました。

 「えっ、お前、そういうスタンスなの?」

 「あなたこそ、そんな考え方だったの?」

 これまで性同一性障害について夫婦で話したことは一度もなく、互いのスタンスは知りませんでした。ですが、そこは長年連れ添った夫婦です。お互いなんとなく「妻(夫)は自分と同じ考えだろう」とタカをくくっていたのでした。

 その後、私たちは番組そっちのけで互いの意見を激しくぶつけ合うことに。結論は出ず、互いに納得できぬまま、いやーな雰囲気で話し合いは終わりました。

 妻のことは理解しているつもりだったのに、ぜんぜんそうではなかった事実と、育児に関わる価値観にヘビーなズレがあった事実のダブルパンチに、私はかなりのショック。「話すことがない=互いをよく理解し合っている」わけではないと痛感した次第です。

 妻も少なからず動揺した様子。「ヤバイ、妻を不機嫌にさせてしまった。あんな同意、求めなければよかった。どうやって事態を収拾しようか……」と後悔していたら、予想外のセリフを言い放ったのです。

 「あなたの性同一性障害に対する考え方を、今日初めて知ることができたわ。あなたの意見には賛成できない部分もあるけれど、言い分は分かったつもりよ。長い付き合いだけど、まだまだお互い知らない面があるみたい。こういう話し合いができてよかったわ」

 確かに言われてみれば、結果的に衝突はしたものの、全力で短距離走を走りきった直後のような、心地よい疲労感もありました。そのとき、ひらめいたのです。妻と話し合うべきテーマとは、まさにこれではないのかと。

 “これ”と言われても何のことかわかりにくいですね。別の表現に置き換えてみると、

  • 自分の中では確たる価値観があるのだけど、自分以外の人間には話したことのなかったコト
  • 自分が当事者になる可能性があるにもかかわらず、「他人事だから」と決め付け、意識の外に追い出してしまっているコト
  • 話しあうべきと薄々気づいてはいても、相手の本心を知るのが怖かったり、自分の素顔を見せるのが照れくさいがために避けているコト
  • しかし、夫婦が長い人生を共に歩むうえで、一度は話しあっておいて損のないコト

 といったことになります。

名付けて、“夫婦間エクストリームコミュニケーション”

 そこで、そういったテーマをリストアップすることにしました。新聞、ネット、ラジオ、雑誌、TVニュースにいつも以上に注意を払い、何冊ものドキュメンタリー書籍に目を通し、さまざまな社会問題や事象を「もし自分が当事者だったら」という視点で拾っていった結果、3週間で約150個も発見できたのです。

 それらをカテゴライズしてみたところ、以下の14のカテゴリに落ち着きました。

  1. 金銭感覚
  2. 教育/育児
  3. 住居/財産/資産
  4. 仕事/キャリア
  5. 習慣/くせ/生い立ち
  6. 趣味/嗜好/思考
  7. 健康/病気
  8. 家事/食生活/日常生活
  9. 夫婦/人間関係
  10. 社会問題/政治
  11. 親/家族/親戚
  12. 道徳/倫理
  13. 老後/ライフワーク

 重々しいテーマがズラリと並びました。見るからにヘビーでナイーブなものばかり。ある意味、究極のコミュニケーション対象といえるでしょう。そこで私はこれを、“エクストリームコミュニケーションリスト”と名付けました。

 そして実際に妻と、150のテーマを1週間かけてすべて話し合ってみました。

 あるテーマでは侃々諤々(かんかんがくがく)と議論をし、別のテーマでは意外な発見に驚きあったり、ときには互いに腕組みをして悩んだり、思いを言葉でうまく表現できずに地団駄を踏んだりしました。クタクタに疲れはしましたが、濃密な時間を過ごすことができました。

夫婦間のオートマチズムの一里塚として

 本連載では、具体的な150個のテーマをカテゴリごとに紹介しつつ、自分なりに発見したコツやノウハウを紹介していくつもりです。長年連れ添った夫婦でやっても新しい発見はあるでしょうし、新婚さんや結婚前のカップル同士でやれば、今以上に互いを理解しあえることうけあいです。

 ただ、結果的に(我が家での性同一性障害のスタンスのように)パンドラの箱を開けてしまうことになったり、逆にケンカの火種を作る可能性も無きにしもあらず、です。そこは自己責任でおこなっていただくということで。

とはいえ妻の、

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 お互いの価値観を深く理解しあえて本当によかったわ。結論が出なかったり、意見が食い違うこともあったけれど、それが発見できたことも収穫ね。150のリスト以外にも話すことはあると思うから、これからも続けていきましょう。私も意識して探してみるわ。ただひとつ心残りなのが、結婚前にこのエクストリームコミュニケーションができていたらもっとよかったのに。


 という感想が、われわれにとって有意義だったことを物語っています。

 サッカー元日本代表監督だったオシム監督の語録に「私は結婚して40年になるが、まだ嫁とオートマチズムは取れていない」というのがあり、思わず苦笑いしてしまったことがあります。

 私も妻も、オートマチズムには程遠い未熟な夫婦ではありますが、今回の対話をキッカケに一歩成長できた手応えがありました。この連載が、“みなさんと、みなさんの大切な人との間のオートマチズムの一里塚”になることを願っています。

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