あのダイソンもそうだった――誰よりも早く「実行」するトップ1%の人だけが実践している思考の法則

ビジネスを成功させるには、ロケットスタートが一番。悩んでる時間にライバルは着々と実行に移しています。実行しなければ……そう、あなたのアイデアはまさに絵に描いた餅で終わってしまうのです。

» 2013年05月21日 10時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

 成功する一握りの人々だけが実践する共通の「思考の法則」を知るには、いったん私たちが常識だと考えてきたルールをリセットする必要があります。そして彼らの行動や考え方に注目し、そのエッセンスを吸収して、その根底にある思考のサイクルを身に付けることが重要です。

 成功者はみな、次にあげる5つのビジネスプロセスを何度も、高速回転で循環させています。私は、キーワードとなった5つの英単語の頭文字をとって「5Aサイクル」と呼んでいます。

  1. 顧客の抱える問題の「認知」(Awareness)
  2. 問題解決のための従来と異なる「アプローチ」(Approach)
  3. アイデアのスピーディな「実行」(Action)
  4. 仮説と実行結果の差異に対する「分析」(Analysis)
  5. マーケットニーズに合わせた柔軟な「適応」(Adjustment)

 各プロセスについてもう少し、詳しく説明しておきましょう。今回は第3のプロセス、「実行(Action)」です。

荒削りでも、実行はスピードが一番

ビジネスを成功させるには、ロケットスタートが一番。悩んでる時間にライバルは着々を実行に移そうとしています。実行すれば失敗しても有益がデータが得られますが、実行しなければあなたのアイデアはまさに絵に描いた餅で終わってしまうのです

 問題が認識され、それを解決できると思われる方法を思い付いたら、次は何でしょうか? そう、「実行」(Action)です。アイデアができた後に、のんびりと事業計画を作っている暇はありません。どんなに綿密な計画を作ってもその通りにはならないからです。

 「実行しなければ成功もしないし、失敗もしない」とは、ユニクロ創業者の柳井正氏の言葉です。本当に有効なデータとは、実行した結果に得られたものだけです。

 あなたがより早く成功したいのであれば極論な話、より早く失敗することです。どんなに恵まれた環境と才覚がそなわっていたとしても、失敗せずにストレートに成功することはできないからです。

 逆に失敗することで、成功に近づくための重要な示唆が得られます。ユニークなサイクロン方式の掃除機で家電業界に革命を起こしたジェームズ・ダイソン氏も、次のように言っています。

 「成功の99%は失敗から。ミスを重ねるほど成功に近づける」

 ダイソン氏はアイデアを思い付いて製品を完成させるまで、実に5127回の失敗を経験しています。大量の失敗を糧に、あの革新的な製品を生み出したのです。

 だからこそ「スピード」。結果がどう出るにせよ、誰よりも早く実行すること。これは成功の母がもっとも好きな言葉です。

 事前の調査結果がよくないと実行されずに捨てられるアイデアも山ほどあります。投資規模が大きいと、どうしても保守的な判断が頭をもたげてくるものです。社運をかけて投資するようなビジネスで失敗は許されないため、なおさらです。だからこそトライしたいのが「小さな実験(フィジビリティ・スタディ)」です。

許容範囲の失敗を何度も経験してみること

 世界有数のコンピュータ企業になる前のヒューレット・パッカードは、新製品の事前調査で「失敗確実」とされた電卓プロジェクトを、小さなテスト販売を皮切りに大成功させました。

 日本を代表する高級旅館、ホテルの宿泊予約サイト「一休コム」の社長は、本当にホテルの予約がインターネットで入るのかをYahoo!オークションなどを使って自分でさばいてみて試しました。どちらも、「小さな実験」で得られた結果を基にさらに大きな賭けに出て成功したのです。

 「最初からうまくやろう」と考えるから、うまくいかないのです。試作品の制作、無料サンプルの配布、規模を小さくした販売実験など何でも構いません。許されない失敗ではなく、許される失敗、許容できる失敗を何度も経験してみることです。

 そして、この小さな実験の結果得られる「生きた数字」を次の検証プロセスで生かしましょう。


 なお本連載の基となった『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』(永田豊志著、かんき出版刊)では、5Aサイクルの具体例として、グーグルのほか、ダイソン、アマゾンなど今をときめくイノベーティブな企業群のエピソードを18のケースストーリーで紹介しています。

集中連載『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』について

 本連載は2012年12月19日に発売した『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』(永田豊志著、かんき出版刊)から一部抜粋しています。

  • なぜ、Amazonは「大量の小口注文」をさばけるのか?
  • なぜ、Googleは「独自の検索システム」を編み出せたのか?
  • なぜ、ディズニーランドは「夢」を売ることができるのか?
  • なぜ、ダイソンは「羽根のない扇風機」を開発できたのか?

 本書は、イノベーションを起こして、ビジネスで勝ち残るための「思考法則」についての解説書です。これからの働き方は、大きく変わります。今まで通りに目の前にある仕事を頑張って働くのではなく、新しいイノベーションを起こしてソリュ―ション(問題解決)することが不可欠になります。本書はあなたの仕事にイノベーションを起こすために、トップ1%のできるビジネスマンだけが実践している「思考の法則」を著者、永田豊志氏が見つけ、分かりやすくまとめたものです。

 「営業」「企画」「経理」「総務」「財務」「マーケティング」――など、あなたが何を専門に従事しているかはまったく関係ありません。すべてのビジネスパーソンに必要な「思考」だからです。ぜひ、本書を読んで、変化の激しい時代に、あなたがたくましく生き残れるよう役立ててください。

著者紹介:永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 ビジネスマンの「知的生産性の向上」をテーマに精力的に執筆・講演活動も行っている。近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『ノート・手帳・メモが変わる絵文字の技術』(中経出版刊)、『すべての勉強は、「図」でうまくいく』(三笠書房刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

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