プレミアムって何だ? レクサスブランドについて考える池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/8 ページ)

» 2022年01月17日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

で、レクサスはトヨタと何が違うのか?

 という長い話を前提にレクサスNXを見てみよう。トヨタはこの10年に及ぶTNGA改革で、クルマの基本性能をしっかり高めた。そこにプレミアムブランドとしての高級素材やデザインを散りばめた。定石通りであり、まあさすがにひと目見て、どこそこがボロいなんてことはもうない。一番安いNXの250は、鼻先が軽く好もしいハンドリングと乗り心地で「なるほどな」と思わせるものになっていた。

 試乗コースが蓼科の山岳路なので、登坂の負荷でエンジン音が高まることがあり、高級車として見た時そこはちょっと我慢な部分であったが、価格的にレクサスのエントリーモデルだと思えば、そこは我慢のしどころ。というか文句があるなら金を積んで350hなり450h+なりを買えば良い話だ。

レクサスNX350hのversion L、ソニッククロム仕様

 筆者はレクサスを買う人の懐具合がちょっと想像できないので、いい加減なことを言うかもしれないが、多分450h+を買っておくのが正解だと思う。当然、戸建て住まいで自宅に充電器があるという前提になるけれど。

 これが集合住宅にお住まいで充電器を占有できないのであれば、350hになるだろう。流石TNGA世代のコンポーネンツを手に入れたレクサスともなると、モノそのものに文句を付けるのは簡単ではない。出来はとても良い。

 で、ここでレクサスの原初の課題である「それはトヨタとどう違うのか?」ということが顔を覗(のぞ)かせる。間もなく国内でもブランド成立20年を迎えようとする今でも、そこは明確な回答が見つからない。特にTNGAによって、トヨタの走行性能レベルが上がってきた結果、具体的には外観と内装が違うだけで本質的に同じモノということになりがちだからだ。

 確かに特に内装において、質感もデザインセンスもレクサスの方が品が良いところはあるが、インフォテインメントの初期画面など、もうちょっとデザイン的に何とかならないかとも思う。やるべきことはまだある。詰めが甘いところは指摘しておくけれども、実はそこは本質ではない。

 何より足りないのは「レクサスだから買いたい」と客を盲目にさせるプレミアム性である。何が違うかをファクトとエビデンスで証明しなくてはならない内はプレミアムではない。トヨタはファクトとエビデンスで良いのかもしれないが、レクサスはそんなものを飛び越えた先に行かなくてはならない。ブリストルならクルマはどうであっても買うように、レクサスがトヨタと比べられる内はプレミアムじゃないということになる。

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