プレミアムって何だ? レクサスブランドについて考える池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/8 ページ)

» 2022年01月17日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

アームレストから4駆まで

 もうひとつ、実はこれは自分でバラしてみたことがないので確証があるわけではないのだが、極めて信頼している人から聞いた話なので、書いておく。当時のベンツの運転席アームレストは、見たところ全く他に機能を持たないタダのアームレストであり、その点国産車はずっと気が利いている様に見えた。アームレストにはCDケースを並べられる溝が切ってあり、そこにドライブ中に聞くCDが10枚くらいは入れられたのだ。

 「細やかな気遣いだ」と思うのは間違いで、W124のアームレストの中には、実は左右方向にタケノコ型のショックアブソーバーが入っていたらしいのである。側面衝突の際は、人体の内でも最も脆い骨である肋骨が横方向加速度の全体重を支えることになる。当然骨折する。そこで側方で体をささえるアームレストにタケノコ型のショックアブソーバーを仕込んで、可能な限りソフトに体を受け止めるようにしたのだ。CDが収納できることとどちらが本質的な気遣いか。

W124のアームレストの真の機能とは?

 あるいは当時のベンツには4マチックというオンデマンドAWDシステムがあった。通常FRで後輪を駆動しているが、例えばオーバースピードでコーナーに入って、クルマの挙動が乱れそうになると、フロントに駆動力を流して安定を取り戻す仕組みだ。日本に無かった仕組みではないが問題は見せ方だ。

 四駆ブームの日本では、デフォルト側ではない車輪にトルクを流すと、トルク分割を示すメーターが右に振れていく。そういうものを付ければ、より右に持っていきたくなるのは人情だ。運転上必要もないのに、メーターのエンターテインメント性が無駄にハイリスクな運転を促す仕掛けになっているのである。対して4マチックでは、スピードメーターの中にコーションマークが点灯するようになっていた。「お前は今危ない運転をしたので、4マチックが作動して、ミスを挽回してやった。危なかったので警告する」という意味だ。こうなると人の行動原理に対する姿勢と理念の違いとしか考えられなくなる。

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