今となっては大した事のなくなった欧州車に、今でも高いリスペクトを払う人が少なくないのはそういう部分があると思う。そしてその本家であったダイムラーを始め、ドイツ車がコストダウンの嵐の中で、そういう思想を忘れ、そしておそらくは技術や思想の伝承が途切れた今、それはさながら遺棄された過去文明になっている。
顧客がうれしいことを、高い思想性を持って顧客に気付かせずにこっそりやるというこの話、筆者からするとレクサスのプレミアム化への最短コースに見える。いろいろ細々したコストは掛かるだろうが、内装に螺鈿(らでん)細工をするよりは、ずっとクルマの本質を訴求する話だと思う。
そうした人の行動に対する深い考察に根ざした機能を、トヨタのコストダウン手法を踏まえて次々と実現していったら、レクサスは伝説になれるかもしれない。今筆者は結構真面目にそう思っている。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。
- 全然違う! トヨタGR86とスバルBRZ
トヨタGR86とスバルのBRZに公道で試乗する機会がようやくやってきた。あらかじめ言っておくが、この2台、もう目指す走り方が全然違う。ビジネス面から考えると、ある程度かっちりとした成功を見込みたいスバルと、あくまでも攻めの姿勢を貫くことで、ある種のブレイクスルーを遂げてブランド価値を高めたいトヨタ。そのそれぞれのアプローチの違いだ。
- 新型86とBRZ スポーツカービジネスの最新トレンド
トヨタとスバルは、協業開発したFRスポーツカーとして、2012年からトヨタ86とスバルBRZを販売してきた。この2台のスポーツカーがこの度フルモデルチェンジを果たし、袖ケ浦フォレストレースウェイで、プロトタイプの試乗会が開催されたのだ。そこで86/BRZのインプレッションレポートと併せて、何がどう変わり、それがスポーツカービジネスをどのように変えていくかについて、まとめてみたい。
- リニアリティって何だ?
おそらく2020年は日本の自動車のビンテージイヤーになると思う。20年のクルマたちは、もっと総合的な能力で世界トップといえる実力を持っている。その総合力とは何かといわれると、それはおそらくリニアリティの圧倒的な向上だ。
- 新燃費規程 WLTCがドライバビリティを左右する
ここ最近よく聞かれるのが、「最近の新型車ってどうしてアイドルストップ機構が付いてないの?」という質問だ。全部が全部装備しなくなったわけではないが、一時のように当たり前に装備している状況でなくなったのは確かだ。それに対してはこう答えている。「燃費の基準になる測定方法が変わったから」。
- SUVが売れる理由、セダンが売れない理由
セダンが売れない。一部の新興国を除いてすでに世界的な潮流になっているが、最初にセダンの没落が始まったのは多分日本だ。そしてセダンに代わったミニバンのマーケットを、現在侵食しているのはSUVだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.