RFIDによる小売業の革新、SAP for Retailを導入した独METRO

SAP AGグローバルフィールドオペレーションサポートのバイスプレジデント、トーマス・ハリデー氏が、小売業に関するSAPの取り組み、METROグループにおけるSAPのアプリケーションをベースにしたRFID導入などの事例などを紹介した。

» 2004年06月19日 15時20分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 SAPジャパンが6月17、18日に開催したSAPPHIRE '04では、NetWeaverなどの同社のテクノロジーの紹介のほか、世界のさまざまな導入事例などを交えた業種別のソリューションも数多く紹介された。このうち、SAP AGグローバルフィールドオペレーションサポートのバイスプレジデント、トーマス・ハリデー氏が、小売業に関するSAPの取り組み、METROグループにおけるSAPのアプリケーションをベースにしたRFID導入などの事例などを紹介した。

 小売ソリューションについて同社は、「迅速な追随者」であることに従来は満足していたが、現在はイノベーターでありたいと考えているという。同社の強みは、品揃え計画、ビジネスインテリジェンス、サプライチェーン、PLM(製品ライフサイクル管理)といった幅広いアプリケーションを包括して持っていること。

 消費者を中心に、顧客マーケティング、マルチチャンネル販売、需要予測、新商品投入などの需要側の分析、一方、商品補充、納入日程計画、合弁事業計画などの供給側の取り組みを行うことで、サプライチェーンが最適化する。これが、「今後も小売業のIT投資に拍車をかける」という。

 SAPの小売業における顧客数は2003年12月現在で1853社。このうち、アジア・パシフィックは228社、米国は284社、そして、欧州・中近東・アフリカが1341社と大きな割合を占めている。顧客には、カルフール、セブンイレブン、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング、Harrods、METRO AGなどが含まれる。

 NetWeaverにおける小売業向け取り組みも、「人」「情報」「プロセス」という3つの枠組みで考えると分かりやすい。

 人の統合では、ブラウザを利用した役割を中心としたワークプレースの構築、情報の統合では、企業全体の分析と意思決定サポート用の小売データウェアハウスの構築、小売マスターデータの管理、統合、処理の改善、製品ライフサイクルの最適化、RFIDの利用などが挙げられた。また、プロセスの統合では、サプライヤーパートナーとの業務の統合、オープンな業界標準を利用したコラボレーションなども視野に入ってくる。

世界でも最大規模のMETROがRFID導入

 小売業のIT化と言えば現在、Wal-MartによるRFID導入が最も注目されている。Wal-Martに対抗するべく、日本のイオンなども加盟するWeb上のB2B取引所、ワールドワイド・リテール・エクスチェンジ(WWRE)といった組織も、RFIDを含めたさまざまな取り組みを展開している状況だ。

 そして、ドイツに本拠を置き、食品、現金店頭販売、百貨店など多数の企業を傘下におく巨大小売グループの1つ、METROグループも、最新技術の検証と体験の収集を、食品小売子会社のEXTRAグループの実店舗で行う「フューチャー・ストア・イニシアティブ」(FSI)を打ち出した。そして、FSIでも、注目のRFIDプロジェクトが走り出した。

 フューチャーストアが目指すのは主に、電子広告やパーソナルショッピングアシスタントを利用した「コンフォート・ショッピング」、店頭における商品管理などの効率化を図る「スマートチェックアウト」、モバイル端末による「店内情報管理」、そして、物流やスマートシェルフに生かすための「RFIDによる在庫管理」という4つの取り組み。この4つを実現するために、中心となる無線LANサーバが設置された。

 RFIDの取り組みとしては、すべての乾物類のパレットとケースにRFIDチップが添付された。CDやDVD、ビデオ、スマートシェルフ(Gillette、P&G、Kraft)の品目レベルにも添付。そして、RFIDで読み取ったデータの分析に、SAPのBW、SCEM、SAP Auto-ID、エンタープライズポータルなどを採用した。これにより、出荷・入荷ゲート、店内ゲートにいたるまで、商品の流れがSAPのアプリケーション内で完全にトラッキングできるようになった。

 RFIDサーバに集まったデータは、SAP Auto-IDインフラストラクチャを介して、DWHのSAPビジネス情報ウェアハウス、SAPイベントマネジャーに送られる。さらに、それらの情報は、エンタープライズポータル上で参照できることにより、GilletteやP&Gといった消費財メーカーやMETRO本社と情報を共有し、次の発注や納品の精度向上に生かされるわけだ。

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