mySAP ERPの成功を受け、SAPは今年初め、コンポジッションプラットフォームとして技術的に実証されたNetWeaverをさらに一歩進め、ビジネスプロセスのためのプラットフォームとして進化させることを明らかにした。4月には「Business Process Platform」のプレビュー版がリリースされている。
「われわれは、NetWeaverのコンポジッションプラットフォームの機能と30年に及ぶビジネスプロセスの経験を1つのビジネスプロセスのための基盤に統合することを決めた」とカガーマン氏。
Business Process Platformのプレビュー版は、500のエンタープライズサービスがライブラリとして提供されるという。「エンタープライズサービス」は、単なるWebサービスとは異なり、ビジネスの言葉で理解できるのが特徴。カガーマン氏によれば、ビジネスアナリストでもビジネスプロセスを変更できるようになるという。エンタープライズサービスは、SAPだけでなく、顧客やパートナーらと一緒に定義を進めている。ESAがSOAに対する実用的なアプローチといわれるゆえんでもある。今回のSAPPHIREでは、CiscoやIntelなど大手ベンダーがESAに関する提携を発表している。
もちろん、ベストプラクティスを盛り込んだスイートの提供もこれまでどおり継続する。
「ある企業は“ベストプラクティスもいいが、10%のプロセスはユニークでそれが差別化なっている”と話してくれた。Business Process Platformは、その両者を一緒にすることができる」(カガーマン氏)
パッケージソフトウェアの良さとカスタム開発や組み替えたソリューションの良さを合わせて享受できるわけだ。
Business Process Platformのプレビュー版は限定出荷にとどまっているが、2006年になると広範なISVらがアクセスできるよう出荷を拡大する。またその一方で、中堅企業向けのmySAP All-in-OneをBusiness Process Platform上の「Suite in a box」としてテスト提供する予定だ。2007年にはインダストリーごとにBusiness Process Platformを用意し、mySAP Business Suiteのすべてのアプリケーションを対応させて、ESAを完成させる。
「ITはもはやコストセンターではなく、戦略的なテコの役割を果たし、さらにはビジネスに組み込まれていく」(カガーマン氏)
硬直化したバリューチェーンが、企業を超えて容易に組み替えられるようになると、自ずと淘汰が起こる。企業は専門性を高め、ビジネスネットワークの中で必要に応じてバリューチェーンを構成し合うわけだ。
「ビジネスプロセスは緩やかにつながり、動的に追加や変更が可能で、それでいてうまくコラボレーションできる“Adaptive Business Networks”が出来上がる。ビジネスレベルの“プラグ&プレイ”だ。プレーヤーである企業はその規模に左右されることもない」(カガーマン氏)
ただし、Adaptive Business Networksはすべての企業に成長を約束するわけではない。カガーマン氏によれば、この新しいネットワークには幾つかの規範が生まれ、そのためには新しいアーキテクチャーであるESAが不可欠になるのだという。
彼はそのうち3つを挙げて説明している。ビジネスプロセスが緩やかにつながることから、意思決定も自ずと分散させなければならない。また、必要に応じて迅速にビジネスプロセス、ビジネスシナリオを組み替えられることも求められる。そしてその結果、彼が「ポジティブコンペティション」呼ぶ、新たな進化が促される。
「いつでも置き換えられるため、互いに競争する中からサービスの水準や製品の品質を改善されていく」(カガーマン氏)
新たな競争を「ポジティブ」と考え、ビジネス機会ととらえられるかが、企業の将来を左右するということだろうか。
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