団塊後を担う若手エンジニアに求められる「JML」――ウルシステムズ漆原社長構造改革としての2007年問題

ウルシステムズの漆原茂社長に2007年問題について聞いた。同氏はシニアのエンジニアが退職した後に、若手がJMLを持ってシステムを構築するべきと話す。さて、JMLとは?

» 2006年01月31日 12時37分 公開
[聞き手:怒賀新也,ITmedia]

 オンラインムック「構造改革としての2007年問題」

 「2007年問題など存在しない」という意見を持つ人も多い。ジャスダックへの上場を間近に控えるウルシステムズの漆原茂社長も、どちらかと言えば、「特に何も起こらない」といった考え方だ。同氏に、2007年問題について聞いた。

ITmedia 2007年問題というキーワードについて、どのように印象をお持ちでしょうか?

漆原 個人的にはあまり影響はないと考えていますが、個別の問題はあると考えます。団塊の世代の技術者が書いたソースコードには、コメントなどの説明が書かれていないケースが多いからです。それを残したまま、団塊世代の技術者が退職するとすれば、影響はあるでしょう。

ユーザー主導でシステムを構築することの重要性を強調する漆原社長

 問題が起き得るとすれば、もうすでに起きているとも言えます。熟練の人が持っているスキルのいいところだけを形式知化して、企業の資産として残すことがテーマです。「人間の温かみがあるような部分」を拾うわけです。

 われわれはそこで、「なぜ、その企業がこういう業務を行っているのか」を知るために十分にインタビューを行います。そして、コアな部分だけは、手作りであれ何であれ、実装しなくてはいけません。今後、そこだけは、若手の技術者が作らなくてはいけない部分であり、そのために必要なことは団塊世代の技術者から引き出して、形式知化しなくてはいけません。

 したがって、2007年問題について言えば、退職する技術者には、若手にしっかりとノウハウを残して去ってもらいたいと考えます。また、もっと若手を信じるべきとも感じます。つまり、「2007年問題」というものは存在せず、そうした問題は常にある、というのがわたしの考えです。

ITmedia 若手のエンジニアはどんなことに気を付けるべきでしょうか。

漆原 UMLのような個別のスキルに注力することも大事ですが、私は「JML」を身につけるべきと考えています。JMLとは、Japanese、Money、Logicの略です。技術屋さんのイメージは、コンピュータ室に閉じこもって、何かを作っているというものが一般的です。それはJMLが欠けているからです。それが分かれば、シニアの技術者を含め、もっとビジネスサイドから話を聞けるようになるでしょう。ベーシックスキルでもあります。

 そう考えると、2007年問題に絡めて、企業のシステムの中で危険なポイントや知っておくべき事柄を整理できるという意味では、良い機会かもしれません。重要なのは、コアとコアでない部分を分けることにあります。

ITmedia 先日、エンタープライズアーキテクチャの基となる理論を作ったザックマン氏にインタビューをした際に、全体最適の視点で情報システムを構築することの重要性が強調されました。

漆原 ザックマン氏の考えはどうあれ、できあがった仕組みがしっかりと動いていればそれでいいと考えます。理想論を掲げて、それを目指して無理をしてシステムを作ろうとすると、コストの高いシステムになってしまいます。

 細かい点も含めてシステム化する場合には、必ず制約があります。例えばそれはコストです。そこで、われわれがいつも考えていることが、ユーザー企業主導のシステム構築を支援することなのです。ユーザー側の企業のCIOや経営企画は、ベンダーに任せるのではなく、責任感を持ってプロジェクトを回す心構えがなくてはいけません。はっきり言えば、ユーザー企業側が覚悟を決めていないプロジェクトはうまくいくわけはないのです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ