ITmedia システムインテグレーターにとって、Salesforce.comのビジネスモデルはある意味で脅威だと考えられます。日本では、大手のシステムインテグレーターが市場で大きな影響力を持っています。システムインテグレーターに対する施策はありますか。
ハリス 米国ではAccentureと2004年に提携しています。さらに、26年間アクセンチュアでシニアパートナーを務めた人材を、今回Salesforce.comに招くことができました。こうした動きがきっかけになり、AccentureもSalesforce.comのビジネスを真剣にとらえてくれるようになってきました。
何よりも重要なことは、顧客に付加価値をもたらすことです。顧客の成功が重要なゴールであって、システムインテグレーターもオンデマンドの技術を利用することで顧客に価値を提供できると考えるべきです。今後は、システムインテグレーター自身が考えを変えざる得ない状況がやってくるでしょう。
ITmedia ビジネスウェブに進化するにあたり、顧客のサービスに対する可用性や信頼性に対する要求のハードルはさらに高くなると考えられます。これに対する戦略はありますか。
ハリス インフラ提供のキーワードは「信頼」であり、われわれはMirrorforceというソリューションに多くの投資をしています。Mirrorforceの2つのデータセンター間で、信頼性の高いレプリケーションとディザスタリカバリ環境を整えることで、高い可用性を実現しています。
さらにそのMirrorforce上で動くWinter'06では、アプリケーション性能の大幅な向上も実現しています。今後も可用性、信頼性、セキュリティに対しては、より多くの投資をしていきます。また、高い技術力を持つハードおよびソフトベンダーとの協業もしていきます。
ITmedia ここ最近は、Salesforce.comユーザー数は急拡大し、ビジネスは大成功していますが、成功の要因は何だと考えていますか。
ハリス 社内の営業担当者の力によるところが大きいです。というのは、われわれは、さまざまなマーケティング活動をした上で、見込み客を発掘し、それを営業担当者に渡します。そして、営業担当者が顧客にアプローチしてビジネスにつなげる。これがうまくいっているというのが、ビジネスの成功の大きな要因です。今後はもう1つ、AppExchangeについても大きなポテンシャルになると期待しています。
ITmedia つまり、自社のCRMのサービスを使いこなした結果での成功ですね。
ハリス もちろんそうです。「Eating Your Own Dog food」(犬も食べないようなドッグフードを作ってはならない)というように、自社のサービスを売りたければ自社のサービスを使いこなす必要があります。使いこなせれば、顧客に自社のサービスの良さをきちんと伝えることができるのです。
ITmedia AppExchangeのアプリケーションをさらに増やしていくには、技術者の確保が重要と考えられます。
ハリス ポイントはコミュニティだと考えています。Salesforceの中にAppExchangeを開発する専門チームもありますが、それだけではだめです。コミュニティでSalesforce自身と、パートナー、ユーザーが相互に補完し合って共同して活動する「ソーシャルプロダクション」という仕組みができれば、AppExchange上のアプリケーションがたくさん生まれてくると考えています。
ITmedia 技術者に向けた具体的な施策はありますか。
ハリス 現在、たくさんの技術者向けドキュメントを用意しています。「AppExchange for Dummy's」というような、誰でも簡単にAppExchangeのアプリケーションを構築できるようにするための参考書も作っています。APIに関するドキュメントなども用意していますが、どうしても英語の情報が多く、翻訳に時間がかかります。AppExchangeは全く新しい試みなので、情報提供が遅れてしまいがちなのです。
Dreamforceは年に1度のイベントなので、米国ではシティーツアーという形で全米各地に展開するイベントがあります。この中で、技術者向けのセミナーも実施していきます。
ITmedia Salesforce.comというとすぐ使える、簡単に使えるというイメージがあるためか、技術者の介入する余地があまりないイメージが強いです。
ハリス 確かにその通りです。開発者向けにメッセージを伝えるエバンジェリストが必要です。AppExchangeのチームにもマーケティングの部隊があるので、今後技術者向けのメッセージをより多く出していきます。
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