HP BladeSystem+HP StorageWorks EVAが実現する仮想化ソリューションITトレンド 〜データマネジメント編〜

オープンシステムにおける仮想化技術が注目を集めている。日本HPは、ストレージとサーバの両方で仮想化技術を実装し、双方を組み合わせることで、より大きなユーザーメリットを提供しようとしている。

» 2006年07月28日 15時00分 公開
[ITmedia]
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SOAの潮流が後押しする仮想化技術の必要性

 オープンシステムでの仮想化技術が登場する以前のシステムは、ストレージやサーバといったリソースは個別/部門別に確保しているのが一般的だ。このような分断された「サイロ式」とも言えるシステムでは、ある部分でリソースが不足する一方で、リソースを未利用のまま余らせている部分も出てくるという、全体として非効率な点があった。このようなシステムに仮想化技術を導入すれば、リソースを個別に確保するのではなく、全体で1つの論理的なリソースプールを構成し、必要な用途に対して必要な量だけを割り当てるという柔軟に運用できる点がメリットとして大きく注目されている。

図1 新しいITアーキテクチャーの必要性

 それだけでなく、最近注目されているSOA(サービス指向アーキテクチャー)の導入が進んできていることも仮想化技術の必要性を後押ししている要因だ。システムを設計する際には、仕様に合わせてサイジング(規模の推定)を行なうが、この作業は実際には机上でやらざるを得ない部分が多い。そのため運用段階に入ってから、計算が合わずリソース不足が明らかになる例も少なくない。必要となるリソース量を厳密に予測できれば理想的だが、通常は後から必要に応じてリソースを追加することになる。特にSOAの場合、個々のサービスの負荷がどの程度になるか、事前の予測はより困難を極める。従来のシステム構成とは異なり、サービスごとにリソースを割り当てることになるため、従来の手法で負荷を予測するのは難しいからだ。

予測の精度を高めることに悪戦苦闘するよりも、実際に運用してみて、リソース不足が明らかになった時点で、即座にリソースを追加できるようにしておく方が現実的だろう。そのためにも、ITインフラのプラットフォームには、仮想化技術を使いやすいかたちで取り入れているものを選択する必要がある。

こうした用途で特に強みを持つのが、ブレードサーバと仮想化技術を実装したストレージ「HP StorageWorks EVA(Enterprise Virtual Array)」の組み合わせだ。

ブレードサーバの仮想化技術

 ブレードサーバは、エンクロージャにブレードを差し込んで利用するタイプのサーバだ。エンクロージャ内部には、ネットワークの配線などが既に出来上がっており、エンクロージャ側でネットワークやSANの構成を事前に準備しておくことにより、ブレードを差し込むだけですぐに運用可能な状態として利用できるのが特長だ。全体の構成はいわばホットスワップ対応のHDDと同様、運用中にほかのブレードを停止することなく抜き差しできるのである。従来のラックマウントサーバであれば、ケーブルの誤配線や電源の誤切断などの事故を警戒して、サーバ追加の際には同じラックに入っているサーバを念のためシャットダウンしてから作業するのが一般的だ。そのため、通常のサーバ増設などの作業は、計画停止などのタイミングでないとなかなか行えないということがあった。

「HP StorageWorks EVAはコントローラで仮想化するちょっと変わったRAID」と話すストレージ・ワークス製品本部 SWDテクニカルサポート部 シニアコンサルタントの野中 晴行氏

 また、障害発生時のサーバの交換は、ケーブルや電源などに細心の注意を払って実施しければならなかった。しかし、ブレードサーバを利用することで、障害を起こした機器の交換や新規追加などの作業に伴う「計画停止と計画外の停止」を最小にすることができ、運用管理の効率化を図ることができる。さらに、仮想化技術と組み合わせれば、リソース不足によるシステム拡張であっても、ほかのシステムの余裕のリソースを利用して、数分から数時間程度でリソース追加が可能になる。このように、状況対応に要する時間が大幅に短縮できるという点で、ブレードサーバと仮想化技術の相性はいい。

 こうした仮想化のメリットは以前から認識されており、メインフレームなどでは当たり前のように利用されていた。しかし、従来の仮想化は最初に高価なハードウェア上で大規模なリソースを確保し、それを細分化する方向のものなので、最初にそのようなリソースを用意できるような大企業でしか事実上利用できなかった。しかし、現在の仮想化技術では小規模サーバを集めて大きなリソースプールを作り、それを分割していく構成を取れるため、小規模から初めて必要に応じて拡張していくことが可能だ。このため、中小規模のユーザーでも導入しやすくなり、仮想化技術の敷居はぐっと下がった。

EVAストレージの仮想化機能

 サーバだけでなく仮想化技術は、ストレージにおいても注目されている。HP StorageWorks EVAは、ストレージにおける仮想化機能を搭載したミッドレンジストレージだ。ストレージの仮想化の実装手法はさまざまあるが、EVAではストレージ内に内蔵されたコントローラで仮想化を実現する点が特徴となる。EVAが搭載する最小8台、最大240台のディスクドライブを内蔵コントローラで仮想化して扱うことができる。

図2 I/O負荷の分散

 従来のストレージでは、統計的にごく一部のディスクにI/Oが集中してしまうという問題があることが分かっている。例えば、50台のディスクがあっても、そのうちの1本に全体負荷の25%が集中するという。EVAでは、こうした特定のディスクへのアクセス集中を避けるように自動的に分散を行なう。プールされたディスク全体にアクセスを分散し、プールにディスクを追加したり、RAIDレベルの変更も容易に行える。

 これは、EVAの領域管理が仮想化を前提に設計されているためだ。EVAでは、ディスクをブロック単位で利用し、どのブロックをどの領域に割り当てたかを内蔵コントローラのマッピングテーブルで管理する。内部的には、4つのデータブロックと1つのパリティブロック(4D+1P)を最小単位として割り当てていく。ブロックはアレイを構成するディスクドライブに均等に分散配置されるため、特定のディスクドライブにアクセスが集中することを避けることができるのだ。論理ユニットのサイズを動的に変更する場合も、新たに追加する容量をGUIで指定するだけで、既存の領域に変更を加えることなく簡単に追加できる。これは、領域の割り当てが物理的なディスクドライブに依存せず、コントローラのマッピングテーブルを変更するだけで実現できるためだ。

図3 バーチャルアレイにおけるLUN作成

 具体的に、ある論理ユニットの空き容量が不足してきたため、論理ユニットのサイズを拡大することを考えてみよう。一般的なRAIDシステムの場合は、まずその論理ユニットに記録されているデータのバックアップを取り、論理ユニットを削除してから新しいサイズで再度論理ユニットを作成、その後バックアップからデータをリストアするという手順を踏む。管理者にとって数時間を要する作業だ。一方、EVAでは、GUIの管理ツールで領域に対して、新しいサイズを指定するだけで変更できてしまう。もちろんディスクはオンラインのままでよく、サービスの中断時間もないし、バックアップ/リストアの手間も不要だ。

 論理ユニットのサイズが物理的なディスクドライブに依存しないことから、用途に応じた論理ユニットサイズを柔軟に設定できる点も、EVAの大きなメリットだ。データベースサーバなどでは、データの性質によってRAIDレベルなどを変える必要があるが、従来の物理的なディスクドライブに依存するRAIDストレージでは、ある程度以下のサイズの領域を確保することはできない。というのも、現在ではディスクドライブ1台当たりの容量が大きくなっており、複数のドライブをまとめて領域を確保し、RAIDレベルを設定する場合、最低でもディスクドライブ2台分の容量を割り当てざるを得ない。一方、EVAではブロック単位で独立にRAIDレベルを割り当てるため、物理的なドライブサイズに依存しない論理ユニット設定が可能で、容量を無駄なく利用できる。

「HP StorageWorks EVAはブレードサーバに近い考え方を持ったストレージだ」と話すシステム技術本部 IAサーバ技術部 部長の森田 宏氏

 さらに内蔵コントローラによるブロック単位での管理は、サービス停止時間の短縮というメリットも生む。EVAがサポートするスナップクローン機能では、領域をコピーして複製を作ることができる。前述のように、ブレードサーバ用の既存のブート領域をコピーして、新たに追加されたブレードに割り当てるような場合に利用できるが、このときデータ量が多いと実際のコピー完了までに相応の時間が掛かる。しかし、EVAでは領域のコピーを、ポインタの複製とブロックのコピーの2段階に分けて行なうことが可能だ。つまり、コピーが指示された時点で新たな領域を確保するが、実際のデータはコピー元のデータを参照させておく、という処理ができるのである。

 こうすることで、サーバ側から見ると新しい領域が即座に利用可能になったように見え、すぐにマウントして運用を開始できる。一方、データブロックのコピーはEVAの内部で順次処理されていく。コピーの完了を待たずに即座に運用を開始できるため、運用管理の負担低減に大きな効果を発揮する。

運用管理ソフトウェアの機能拡張

 ただ、サーバとストレージの組み合わせで、運用管理上、煩雑になる要素がある。設定情報を物理的なサーバにひも付けしなければならないという点だ。具体的には、ネットワークのMACアドレスやSANのWWN(World Wide Name)のようなハードウェア固有のアドレスを持ってしまっていることから必要になる設定である。これらの情報は物理的に機器を入れ換えると値が変わってしまうのだ。そのため、現状、ブレードの入れ替えなどを行なう場合には、これらの情報を参照して設定されているLUNのマウント先などを管理者が整合性を維持しつつ変更する必要がある。

図4 今後登場するバーチャルコネクト

 この点に関して、日本HPでは今年秋以降にリリースを予定している「HPバーチャルコネクト」という技術で対応する。仮想化の対象をI/Oポートにまで拡大して、物理的なMACアドレスやWWNとは別に、仮想的なMACアドレスやWWNをHP バーチャルコネクトによって割り当てることで、外部のストレージやネットワークに対して一元的な管理を可能にする。この技術を利用すると、サーバの物理的なNICやSANのファイバチャネル・ホストアダプタが変更された場合でも、外部のストレージからは従来と同じMACアドレスやWWNで参照できるようになる。機器の入れ替えに伴う修正作業を不要にしようという計画だ。

 ブレードサーバとEVAの組み合わせで実現される仮想化環境がより一層管理しやすいものになることが期待できる。

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制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2006年10月31日