社員と対話しないリーダーを見過ごすな職場改善道場(1/2 ページ)

組織における問題の多くはコミュニケーションに関係する。ただし社員同士がやみくもに対話の量を増やせば解決するものではない。組織の中核となる人物の行動が鍵を握るからだ。

» 2009年03月02日 08時30分 公開
[伏見学,ITmedia]

 職場には常に何らかの問題がある。若手社員のやる気がない、目標が達成できないなどさまざまだが、その多くは社員同士のコミュニケーション不足が引き起こすものだ。三菱総合研究所とNTTレゾナントがサラリーマンに対して実施した調査(2006年)によると、約4分の1が「社内コミュニケーションが取れていない」と回答している。中でも「部署を超えた社員同士のコミュニケーション」を不足に感じる回答が6割を超えたほか、「同部署の上司と部下のコミュニケーション」の不足は4割だった。しかし、コミュニケーションの重要性は感じつつも、具体的な改善方法が見つからないのが現状である。

 オフィスのデザイン構築などを手掛けるコクヨオフィスシステム(KOS)は、顧客に対してだけでなく、自社においても常にワークスタイルの変革に取り組んできた。特にこだわるのがコミュニケーションの活性化である。その取り組みはオフィスを見れば一目瞭然だ。

 本社のある「霞が関ライブオフィス」は、個人の座席を設けないフリーアドレスを採用し社員の移動を自由にするほか、広さを十分確保したロッカールーム、オフィス中央にあるバーカウンターのような作業スペースなど、コミュニケーションを活発にするための仕掛けが至るところに施されている。視界をさえぎる柱や高い本棚などがないため約800坪のオフィス内の見通しは良く、誰がどこにいるかすぐに発見できる。会議室も周囲に開かれているため、いつでも飛び入り参加が可能だという。同社の取締役兼常務執行役員の黒田英邦氏は「当社自身が働き方の実験場になることで、顧客の課題を解決できる先進的なアイデアを提供できるようになる」と胸を張る。実際、当オフィスには半年で5000人もの見学者が訪れ、職場改善の参考にしているようだ。

社内のほぼ中央に設置された作業スペース。社員が頻繁に通るためコミュニケーションを取りやすい 社内のほぼ中央に設置された作業スペース。社員が頻繁に通るためコミュニケーションを取りやすい

コミュニケーションを可視化する

 このように率先して業務改革に取り組むKOSでは、多くの企業に見られるコミュニケーション上の問題はないかに思われた。しかしながら、リーダーと部下のコミュニケーション不足といった同様の課題は存在した。そこで取り組んだのが、社員同士のコミュニケーションを可視化し組織が抱える問題点をあぶり出すことだった。日立製作所が開発する「ビジネス顕微鏡」と呼ぶシステムを用いて、コミュニケーションを可視化し定量的に分析した。

 同システムは、名札型の端末に内蔵した赤外線センサーにより、装着者同士の対面時間および活動状況を検出できる。そのデータが社員のコミュニケーション量を表す数値となる。測定データをサーバに集約、分析し、社員同士のコミュニケーションの頻度や組織を構成する社員の相関関係などを浮かび上がらせる。従来は職場のコミュニケーション状況を把握したい場合、社員へのアンケート調査が主だった。「アンケートだと回答者の意識や感覚に左右されたり、定性的なデータになってしまう。ビジネス顕微鏡を用いれば、客観的かつ定量的なデータを大量に取得できる」と日立ハイテクノロジーズの経営戦略本部 ビジネス顕微鏡グループで部長代理を務める石井恭子氏は説明する。

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