オンラインストレージ市場で台頭する非IT出身のアイロンマウンテン9ぺタバイトのデータを預かる

SaaSやクラウドを利用したサービスの1つにオンラインストレージがある。IT畑出身のベンダーが多数ひしめく中で、保管サービスを源流に持つベンダーが頭角を現している。

» 2009年06月04日 09時50分 公開
[ITmedia]
「技術に加え、適切なデータ管理ノウハウがある」と話すラムジー氏

 「地下90メートルのデータセンターに、膨大なデータと4億ケース以上の重要文書を預かっている」(編注:初出時は「2億」でしたが、同社で再度調べたところ4億以上であり、再掲しました)――オンラインストレージサービスの米Iron Mountainは、IT畑出身ベンダーがひしめくSaaS(サービスとしてのソフトウェア)市場の中で、文書保管ビジネスを源流とするユニークな企業の1つだ。

 日本法人アイロンマウンテンデジタルのガース・ラムジー社長は、「“SaaS”や“クラウド”といった旬のキーワードからオンラインストレージへの関心も高まっているが、われわれは既に12年前からサービスを提供している」と話す。

 Iron Mountainは1951年に創業し、契約書や事業計画書といった企業の重要書類を預かるサービスを専業としてきた。同氏によれば、利用企業の多くはディザスタリカバリ(DR)や事業継続性計画(BCP)を目的としており、オンラインストレージサービスも文書の電子化の流れを受けて始めたものだという。

 SaaSやクラウドの普及拡大で、企業が抱える重要なデータ資産を社内で保存・管理するよりも、オンラインサービスに委ねる意識が米国などで広まりつつある。データ資産の大半は再利用されることがなく、自社で保存・管理するには物理的なスペースの確保やコスト面で負担が大きいものの、DRやBCPの観点からみれば不可欠な取り組みでもある。

 オンラインストレージサービスは、ストレージベンダーやクラウドサービス企業を中心に提供されており、国内でもサーバホスティングサービスなどの一部として提供されることも多い。ラムジー氏は、同社がこの分野に特化して半世紀以上の文書管理ノウハウを蓄積してきた点や、企業での管理業務コストの軽減化に注目している点が他社との差別化になると説明する。

 例えば、サーババックアップサービスの「LiveVault」では、サーバにエージェントをインストールすれば、差分バックアップだけで15分単位でリカバリポイントを自動作成し、データをAES 256ビットで暗号化してVPNで経由でデータセンターへ転送する。復号鍵はユーザーが持つため、同社がデータを閲覧することはない。また、米国のデータセンターは廃鉱山の地下深くに堅牢な仕組みを構築したという。

LiveVaultの仕組み

 バックアップに対応するプラットフォームは、WindowsやUNIX、Linux、VMwareの広範であり、リカバリも指定した復元ポイントの全データや差分データのみといった方法を利用できるなど、同社のサービスではDRやBCPを効率的に実現する機能に注目する。国内に2カ所のデータセンターを開設済みであり、「国外にデータが流れる心配はない」と同氏は話す。

 LiveVaultでは、欧米の企業を中心に約5500社、2万台以上のサーバをバックアップしている。全米に約600カ所の拠点を抱える金融機関では、従来拠点の担当者が個別に行っていたテープバックアップをオンラインストレージに変更したことで、年間1億5000万円の運用コストを削減したという。

 ラムジー氏は、「データ管理者のリソースが今後も潤沢になることはないだろう。一方で保管すべきデータが爆発的に増え続けていく」と話し、企業でのデータ管理方法について見直すべきタイミングにあると指摘している。

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