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» 2009年07月10日 16時43分 UPDATE

ワークフローシステムの刷新:「みんなが使えるパッケージ」の条件とは何か

ワークフロー関連など、全社員が活用するツールは単純に機能が充実していればいい、という基準だけでは良い選定はできない。

[大西高弘,ITmedia]

誰かがすべての面倒を見るわけにはいかない

 大崎電気工業は電力量計や電流制限器などを製造販売するメーカーで、グループ全体で従業員1800人を超える。主要顧客は各電力会社で、メーター専業会社として、他の総合重電メーカーと肩を並べ高いシェアを維持している。同社は、1916年創業の歴史を誇る会社だが、IT活用については積極的に取り組んでいる。

 大崎電気工業は、掲示板やワークフローに関しては長年Notesを活用していたが、レスポンスや操作性に関してユーザーから不満が出始め、システムの更新が検討されることになった。情報システムセンターの吉田隆昭副課長は次のように語る。

 「掲示板やワークフローについてどんなツールを使うかは、もともと各部署で選んで管理してもらっていました。Notesも97年ころからある部署が使い始めて浸透していきました。情報システム部門でもNotesでスケジュール表を作って社内で公開し、使ってもらうというようなこともしていました。ただ、利用しているうちにレスポンスが落ちてくるし、ユーザーから『一括承認はできないのか』といった要望も出てきました」

 結果として大崎電気工業では、掲示板やワークフローに関してサイボウズのグループウェア製品「ガルーン2」を導入することになったのだが、この決定について吉田氏は次のように話す。

 「Notesでユーザーからのさまざまな要望に応えようとすれば、できないことはなかったでしょう。しかし、そろそろ会社全体で統一したツールを使おうとしたとき、今後もいろいろな要望にシステム部門が作り込むなどして対応し続けるのか、という問題がありました。ツールは統一したとしても、利用については各部署で責任を持って対応してもらいたい。ある程度知識のある人材がいつでも対応できるという体制なら、自由度の高いツールを活用していても大丈夫かもしれないが、当社はそうもいかない。では、別のパッケージをあらためて検討してみようということになったのです」

 吉田氏はまず、ワークフロー専用のパッケージソフトウェアを検討してみたが、自社のケースには合わない、という判断に至ったという。

 「確かに、専用ソフトですからいろいろなことができる。しかし導入コストもそれなりに掛かってしまう。ワークフローだけでそこまでの投資ができるかと考えると、専用パッケージも選択肢からは外れていきました」

一部で利用されていたサイボウズ製品

oosaki.jpg 「パッケージの選定には明確な方針が欠かせない」と語る吉田隆昭副課長

 そんな状況の中、吉田氏の頭の中に浮かんできたのは、サイボウズだったという。

 実は、大崎電気工業では研究開発部門でサイボウズが活用されていた。

 「部門の中だけで利用するならツール選びは自由でしたから研究開発部門では、サイボウズを活用していました。ユーザー数も150を越えていた。無視できない数ですよね。これだけのユーザーがいて、全社統一にしたからこっちを使ってくれと別のツールを使ってもらうのは大変だな、とも考えていました。だからといってサイボウズを全社で使うという判断にはすぐにはならなかったですね。取りあえずどういうものなのか確かめてみようと」(吉田氏)

 大崎電気工業にも、同社なりの決裁や承認の流れがある。これについてガルーンが対応できるかどうか。結果は「問題なし」だった。吉田氏によれば、データベースに直接アクセスできないので、自由度がない分、内部統制上も安心できるという。

 「アクセス権限があればデータベースの中に入ってファイル操作ができる、というのは確かに便利なケースもありますが、一方でコンプライアンス確保のためにさまざまな対策が必要になります。ワークフローではそうした権限はないほうがいい、という判断になりました。また、部分的に当社の承認の流れにそぐわない部分もありましたが、そこは業務を変えてもらって対応する形で大丈夫だ、という結論に至りました。ワークフローシステムに流した後、間違いに気づいた場合はガルーンではキャンセル機能を使って取り消す形になる。そうした使い方が一番合理的だなということですね」

 また、導入価格についてもメリットが大きいことが分かったという。

 「サイボウズでは乗り換えパッケージ料金というのがあるのですが、当初は研究開発部門のユーザー分だけだと思っていたのですが、新規導入する分についてもこのサービスが適用されることが分かりました。このことも導入決定に大きく影響しましたね」と吉田氏は語る。

全社員が使うことを前提に

 「パッケージ導入には、導入後の活用が属人的にならないこと。そしてある程度の自由度は欲しいが、特別な機能はいらない」――。そうした導入検討の際の方針がその後の選択に生かされる格好となった。

 導入後の効果として、吉田氏は次のように話してくれた。

 「スケジュールと施設予約では便利になりましたね。全社統一で活用しているので、スケジュールは違う部署同士でも確認することができます。施設予約では、例えばお客さんを埼玉にある研究開発センターや生産現場の見学にお連れする場合があるのですが、今までは、東京にいる営業担当者は直接埼玉に電話をして施設予約の確認をする必要があったのです。それが、いつでもどこからでも予約ができるようになりました。またガルーン導入後はID管理も簡単にできるようになり、そのあたりも便利ですね」

 ただし、一点吉田氏が「ぜひ改善してもらいたい」と主張することがある。

 「当社では、経費の計算などで小数点以下の数字が出た場合、四捨五入する決まりになっているのですが、現在のガルーンではそれができないんですよ。それが必要な場合は今のところ昔のシステムにガルーンをリンクさせて利用していますが、何とか次のバージョンでは改善してもらいたいですね」

 施設予約、掲示板、稟議などのワークフローにサイボウズ製品を活用している大崎電気工業だが、営業管理にもサイボウズの「ドットセールス」を使っている。このシステムはスケジュール管理を主な機能にしており、他のサイボウズ製品とも連動できる。

 「営業案件については他のデータベースソフトを使って管理していましたが、個々の営業担当者の動きの管理については、紙ベースの週報で共有している状態でした。業務改善の意識は強かったのですが、どういうものが当社に向いているかがはっきりしなかった。そこでシステム部門としても協力しようということになった。いろいろ見ましたが、あまり細かい項目まで入力させることになると、使いきれないまま結局はお蔵入りになってしまう可能性がありました。営業担当者が見ても『これはうちでは機能過多』というものが多かった。そこでサイボウズ製品を見てみたら、これならどんなに忙しい人でも大丈夫だね、ということになった」と吉田氏は話す。

 ドットセールスは、報告のための入力画面が1つでスケジュール登録から活動報告が分断されることなく入力できるという点が評価されたという。現在は40人ほどで運用されている。まずは活動報告を入力する習慣をつけていこうと取り組んでおり、管理者が週単位で現場の営業マンのスケジュールを見るようにしている。数年前に立ち消えになった商談が復活してという話もあったりと、まずは効果が出てきているという。

 今後の活用について吉田氏は次のように話してくれた。

 「ガルーンについては、関連会社からも利用したいという要望が出てきているので、グループ各社への展開方法について検討しているところです。ドットセールスについては、活動報告にひもづいた案件管理を進めて、さらに高いレベルの利用を実現していきたいですね」

 活用そのものが属人的なものにならない、というパッケージ選定の条件が今回の全社的な活用を軌道に乗せる要因となった。パッケージ選定では機能の充実だけに目が奪われがちで、そうした機能と価格との比較が先行しがちになる。全社員が利用するパッケージソフトでは、「身の丈に合った」選定とは何かを考える必要が出てくる。大崎電気工業の今回の事例は、そうした選定ポイントの1つを示したものといえるだろう。

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サイボウズ | ワークフロー | 掲示板 | Notes


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