コラム
» 2009年08月04日 15時54分 UPDATE

そもそも企業はクラウドを採用するのか:Google AppsはMicrosoft Officeにとって脅威か?

多くの企業がクラウドそのものに不信感を抱いている現在、オフィススイートをサブスクリプションサービスとオンプレミス型の両形態で提供するMicrosoftに強みがある。

[Nicholas Kolakowski,eWEEK]
eWEEK

 Microsoftのプロダクティビティスイートの次期版「Office 2010」の一部の機能から判断すれば、読者はきっとGoogle AppsがMicrosoft Officeにとって脅威になっていると思うだろう。Microsoft Officeの省機能版をクラウド上で利用可能にし、それをMicrosoft Liveの会員に無償で提供することにより、MicrosoftはGoogle Appsと真っ向から勝負しようとしているようだ。さらに同社では、企業ユーザーを満足させるために、Office 2010をホスティング型サブスクリプションサービスとオンプレミス(社内保有)型プラットフォームの両方の形態で提供する計画だ。早い話、大企業はクラウド上で運用されるプラットフォームを利用すれば経費を節減できるかもしれないが、自社の機密情報が空中に漂うようなことは受け入れられないからだ。

 一方、SMB(中堅・中小企業)市場および大企業市場でのシェア拡大に本腰を入れ始めたGoogleは、Gmailなどのプラットフォームから“β”表記を外し、自社製品は業務用としても十分に安定していることを企業の購買担当者やITマネジャーにアピールしている。さらに同社は今週、これに続く取り組みとして、Google Appsを業務で利用するメリットを訴えた野外広告キャンペーンを開始した。このキャンペーンは米国の4都市で1カ月にわたって展開され、「Going Google」のメリットについて毎日異なるメッセージが表示される。

 Googleがやることは何でもそうだが、この野外広告の発表もニュースになった。しかし、企業市場では、Microsoft OfficeにとってGoogle Appsはどれほどの脅威になっているのだろうか。

 どうもそれほど大きな脅威ではなさそうだ。といってもそれは、MicrosoftあるいはGoogleがクラウドベースのプロダクティビティプラットフォームを提供する能力に関することではない。多くの企業がクラウドそのものに対して抱いている不信感の問題なのだ。

 Enderle Groupのアナリスト、ロブ・エンダール氏は数週間前の取材で「パブリッククラウドは特定の用途には最適な環境だが、ビジネスには適さないだろう。特に、顧客とのコミュニケーションを維持できるかどうかが収益を左右するような企業の場合、パブリッククラウドをビジネスの基盤とすべきではない」と語っている。

 「プライベートクラウドの場合、利用環境の品質を保証することができる」と同氏は付け加える。「Google Appsは確かに成熟しつつある。小規模企業の環境ではかなり満足できるようになった。だが大企業環境には不向きだ。サービス障害が発生すると、あっという間に深刻な被害につながるため、クラウドに対する許容度は厳しくならざるを得ない」

 魚釣り道具専門の小売店やバーベキューレストランといった小規模ビジネスであれば、自社のデータや電子メールをGoogle Appsに託すのは、経費節減という観点から見れば悪い考えではないかもしれない。信頼性という点に関しても、数時間のダウンタイムが発生したところで、それがルアーの売り上げに響くことは恐らくないだろう。しかしMerrill Lynchのような企業の場合、機密情報をクラウドに託し、そのクラウドが最悪のタイミングを選んでダウンすることがないよう祈るというのは、あまりも無謀だ――少なくとも現時点でのクラウドの進化段階においては。

 実際、GmailやGoogle Appsで障害が発生するたびに、「クラウドベースのアプリケーションはまだ企業環境で利用できる段階には至っておらず、大企業で本格的に受け入れられるためには、コンセプトとしてのクラウドがもう少し成熟する必要がある」と多くの人々が主張する。

 MicrosoftはOffice 2010をホスティング型サブスクリプションサービスとオンプレミス型プラットフォームの両形態で提供することにより、Google Appsに対する不満の多くを自社製品への追い風にしようとしているのだ(ただしGoogleは新しい広告キャンペーンにリンクしたサイトで、クラウドベースのプラットフォームのセキュリティと可用性をめぐる人々の懸念に対処しようとしている)。さらに重要なことは、Microsoftのビジネス部門は同社の主要な収益部門であり、Office 2010の拡張型・非クラウドベース版を提供することが収益維持を可能にするのだ。これは、直近の四半期売上高が前年比で17%減少したMicrosoftにとって極めて重要な課題だ。

 言い換えれば、MicrosoftはOfficeの基盤に対する深刻な脅威をまだ受けてはいないかもしれないが、Office 2010は同社が将来について真剣に考えていることを示しているということだ。

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