ネットいじめに負けない親子交流法ネットファーザーの金言(3/3 ページ)

» 2009年12月28日 11時30分 公開
[吉田賢治郎,ITmedia]
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コミュニケーション力を強化する

 サトルくんのお父さんの2つ目の不安は、サトルくんの友達関係についてだった。

 「今回のような用意周到ないじめがあったのに、友達はなぜ助けてくれなかったのか」「学校でも友達の輪に入れずにいじめられているのではないか」、つまりサトルくんが友達とのコミュニケーションを十分に取れていないのではないかと不安になったのだ。さらには「いじめのきっかけが、サトルくんの行動にあるのでは」と心配にもなった。

 わたしは、何がいじめのきっかけになったのかを探すのではなく、サトルくんのコミュニケーション力を強化して存在価値を高めるきっかけを作る方が重要だ、とお父さんに話した。誰にでも個性があり、あらゆる個性に対していじめが行われる可能性がある。だから、いじめられる理由を考えてももぐら叩きになってしまう。そして、人は自分で考え自分で工夫しないと変われない。

 サトルくんは地元のサッカークラブに入った。より多くの人と出会い、会話し、1つの目標に向かって頑張ることがいまのサトルくんには大切だとお父さんが考えたからだ。中学の途中からクラブに入ることにサトルくんは少し抵抗があったようだが、いまではサッカーを楽しみに、そして生き甲斐にしている。そして、お父さんも新たな楽しみを見つけた。サッカーの試合に応援に行くことだ。前祝、祝勝会、反省会と称して同じクラブのお父さんたちとの飲み会に行き、親交を深めているそうだ。

『子どもをネットから守り、ネットで育てる』(翔泳社、吉田賢治郎著) 『子どもをネットから守り、ネットで育てる』(翔泳社、吉田賢治郎著)

 いじめ解決も親子関係も、“コミュニケーション力”が必要である。そしてネットは、コミュニケーションを円滑にする便利な道具である。コミュニケーション力とネットを現実の世界で生かせば、人生はより豊かになるはずだと私は信じている。

最後に

 4回にわたって、偽プロフによるいじめを例に「ネットでのいじめ問題」について書いてきた。今後も機会があれば、解決例や失敗例を提供していきたい。

 いまも多くの子どもたちが、いじめの苦しみから逃れるために死を選択している。わたしにそれを解決する大きな力はないが、IT業界の人間として、せめてネットでのいじめで死を選ぶ子どもを減らしたいと強く思っている。この記事がそれに少しでも役立てば幸いだ。

著者プロフィール:吉田賢治郎

吉田賢治郎

 日本の大手SI企業にて、業務システム販売のトップセールスマンとして活躍後、初期のインターネット構築やグループウエアシステムの企画・商品化、販売促進などでソリューション推進部のリーダーを務める。

 99年、ロータス株式会社に入社し、マーケティング本部 販売促進部長などを務めた後、2003年より現在の日本アイ・ビー・エム株式会社に勤務。

 ITmedia オルタナティブ・ブログ『けんじろう と コラボろう!』で、ビジネススキル、コラボレーションソフトウェア、青少年のネット問題および家族について執筆して人気を博している。

 著書に、『諭座 2008年9月号:ネット規制で子どもを守れるか』(朝日新聞出版)、『日本の論点 2009年度版:裏サイトから子どもを守るには〜子どもがネットのいじめにあったら』(文藝春秋社)、『子どもをネットから守り、ネットで育てる』(翔泳社)。


ネットファーザーの金言バックナンバーはこちら、吉田賢治郎さんのブログ『けんじろう と コラボろう!』はこちらです。


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