世界で勝つ 強い日本企業のつくり方

国産ICTは極めてハイレベルだ世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(1/4 ページ)

2010年は国内企業の海外展開が一層進むとみられる。海外進出の基盤となるのがICTだ。MM総研の中島洋代表取締役所長は、国産ICTのレベルの高さは世界でも類を見ないものであり、海外戦略においても通用すると力を込める。

» 2010年01月01日 00時00分 公開
[構成:藤村能光,ITmedia]

世界はアジア志向に

 日本企業にとって従来の中国は、安い労働力でソフトウェアをオフショア開発し、情報システムを安価に構築するための労働供給元という位置付けだった。だがここにきて、中国は有望な市場に成長している。日本側がリソースを共有する市場になっており、10年経てば中国が日本をオフショア開発に使うといった「転換」が起きる可能性も出てきた。(日本企業の)グローバル展開の意味が、従来の欧米志向から中国などのアジア志向に変わってきているという前提をまずは押さえておく必要がある。

 もともとオフショア開発がはじまったのは1990年前後だ。米国が国際競争力の落ち込みを回復させるために、情報システムの開発拠点を英語圏のインドに移した。インド経由で中国のソフトウェア技術者を開発リソースとして使うという構造もあった。同じ能力を持つ技術者でも、米国とインドの賃金差は20対1。開発のコストを下げることで、競争力を強化するという動きがあった。

中島洋氏 MM総研の中島洋代表取締役所長。全国ソフトウェア協同組合連合会の会長や首都圏ソフトウェア協同組合の代表理事も務める

 日本でのオフショア開発が本格化したのは2000年に入ってから。中国もインドも経済力、賃金が上がっていた。その結果、賃金格差は20対1から10対1、5対1と縮まっていった。今年の8月に北京や上海の上級クラスのシステムエンジニアの賃金を比較したところ、東京を1とした場合で0.8程度、地方では0.2くらいの割合になった。

 この結果から、日本企業が中国の安い技術者を使うという発想は時期はずれだということが分かる。日本企業は、1990年代に海外で流行したオフショアやBPO(業務プロセスアウトソーシング)といった外部委託を真似できなくなっている。これはきちんと認識しておくべきだ。

 製造業を含む日本企業は、中国を中心としたアジア地域全体に事業を展開することを考えている。これは欧米も同じであり、とりわけ中国は激戦区だ。人口で見ると米国が3億人、EU(欧州連合)が2億数千万人であるのに対し、中国は13億人に上る。日本や欧米が中国市場を一気に開拓しても、まだ(開拓できる)マーケットは存在する。

 中国国民の購買力はどうだろうか。全国民の上位10%だけでも、1億3000万人が当てはまる。極めて魅力的なマーケットだ。欧米の経済の冷え込みを考えると、しばらくは中国を中心としたアジア地域が事業展開の照準に定められていく。こうした中、情報通信技術(ICT)は新規事業のインフラを支える重要な役割を果たすだろう。

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