HPとMicrosoftの提携 引き金はCisco、VMware、IBMの動き

クラウドコンピューティング推進を目的としたHPとMicrosoftの提携は、Cisco・EMC・VMware連合の「VCE」やIBMの「Smart Analytics Cloud」に続く動きだ。

» 2010年01月14日 16時56分 公開
[Jeffrey Burt,eWEEK]
eWEEK

 1月13日に発表されたHewlett-Packard(HP)とMicrosoftの提携拡大は、ベンダー各社が特定のアプリケーションやサービスを実現するために、提携を通じてそれぞれのハードウェア資産とソフトウェア資産を緊密に連係した製品を提供するというトレンドに沿ったものだ。

 ベンダー各社がハードウェア資産とソフトウェア資産を結び付けようとしているのは、それぞれの製品を緊密に連係することによって、容易に配備できるデータセンターソリューションをクラウドコンピューティングなどの環境向けに提供するという狙いがある。

 こういった動きの中で最も注目されたのは、昨年11月に発表されたCisco SystemsとEMCとVMwareの提携だろう。3社はそれぞれのリソースを持ち寄り、「VCE(Virtual Computing Environment)」を構築する計画だ。このクラウドコンピューティングプラットフォームでは、3社のハードウェアとソフトウェア製品が連係するという。

 IBMは昨年11月、「Smart Analytics Cloud」製品を発表した。これは同社のシステムとソフトウェアを組み合わせることにより、ビジネスインテリジェンスサービスを実現するというソリューションだ。

 Oracleによると、自社のソフトウェアとSunのハードウェアの緊密な連係は、合併後の両社の顧客にとってメリットになるとしている。Oracleによる74億ドルのSunの買収は、1月中に完了する見込みだ。両社は昨年9月、「Exadata Database Machine」バージョン2を発表した。これはSunのハードウェアとOracleのデータベースアプリケーションを結合した製品だ。

 そして今回はMicrosoftとHPが提携し、MicrosoftのソフトウェアとHPのProLiantサーバの緊密な連係による業務効率の向上、アプリケーションパフォーマンスの改善、業務運用機能の強化、コスト削減を約束している。

 「ある意味では、HPとMicrosoftの提携は、ベンダー各社の一連の提携と軌を一にするものだ」と米調査会社Pund-IT Researchのアナリスト、チャールズ・キング氏は指摘する。「単独では比較的限定されたソリューションしか持っていないベンダー同士が提携することにより、それぞれの製品の寄せ集め以上のものを提供できるのだ」

 米Endpoint Technologiesのアナリスト、ロジャー・ケイ氏も同意見だ。

 「これは、CiscoとEMCによって生み出されたダイナミックな動きに対する反応だといえる」とケイ氏は語る。

 1月13日に行われた報道関係者との電話会見で、HPのマーク・ハードCEOとMicrosoftのスティーブ・バルマーCEOは「両社の提携拡大は、IT業界の流れに合わせるというよりも、顧客のニーズに対応することに主眼がある」と口をそろえた。

 「これは、何らかの動きに対する反応というようには考えてもらいたくない」とハード氏は語った。

 両社は、この取り組みに向け、今後3年間で2億5000万ドルを注ぎ込むとしている。さらに、HPのハードウェア上でMicrosoftのソフトウェアを最適化するために、両社の技術者が緊密に共同作業を行う。ハード氏によると、HPとMicrosoftの製品を組み合わせたパッケージの販売促進に1万1000人の専任営業スタッフを投入するという。

 これらのパッケージとしては、Exchange ServerやSQL ServerなどのMicrosoft製品を組み込み済みのサーバ、ストレージ、ネットワーキング、アプリケーションなどが用意される予定だ。パッケージで採用されるHP製ハードウェアは、これらのアプリケーションを競合企業のハードウェアよりも効果的に運用できるように最適化される。

 またHP ProLiantサーバは、Microsoftの仮想化技術Hyper-Vと管理ソフトウェアのSystem Centerなどの技術に合わせて最適化される。System CenterはHPのInsight Managerとも緊密に連係する。Microsoftのサーバ&ツール部門のボブ・マグリア社長によると、両社は2カ月以内に、System CenterでProLiantシステムの消費電力をきめ細かく制御する機能を発表する予定だという。

 この提携にはMicrosoftのクラウドインフラWindows Azureも関連し、両社がサービスを提供するとともに、MicrosoftはAzureインフラ用にHPのハードウェアを採用する。

 米Sageza Groupのアナリスト、クレイ・ライダー氏は「この提携では管理機能が重視されているようだ。クラウドでは管理が非常に重要な問題となっている」と語る。

 Pund-ITのキング氏によると、この提携で注目すべき問題の1つは、両社のほかの技術パートナーとの関係がどうなるかという点だ。例えば、HPのサーバ上にVMwareの仮想化製品を配備している企業は多く、また、MicrosoftはDellなどのOEMとも協力関係にある。

 「両社はこの提携で非常に面白い綱渡りをすることになりそうだ」とキング氏は話す。

 バルマー氏は、両社は今後もほかのベンダーとの協力関係を維持するとしており、ライダー氏によると、こういった“コーペティション”(協業+競合)は普通のことだという。

 「これは広大な運動場であり、競技をする場所はたくさんある。フォースクエアー(訳注:ボール遊びの一種)では競争相手であっても、キックボールではパートナーになるかもしれない」(ライダー氏)

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