かつての企業のセキュリティ投資は、コスト負担になり利益を生み出さないという意味合いが強かった。だが内部統制対策が求められたこともあり、フィジカルセキュリティ関連の製品やサービスを導入する企業が増えている。
先行導入が進んだのは入退室管理システムであり、その際にICカードを認証用デバイスとして利用する企業が出てきた。ICカード化した社員証や学生証は、それ1枚で監視システムやデスクトップセキュリティ、文書管理、電子錠キャビネット、リモートアクセスなどのシステムへの認証が可能になる。勤怠管理システムとの連係も可能だ。ICカードを軸としたセキュリティシステムの利用が広がるにつれて、ICカードが企業内で果たす役割も大きくなっている。
子どもの登下校管理やポイントサービスなどの顧客管理システム向けに、ICカードを利用する事例も増えている。SuicaやPASMOにICカードの機能を追加して使うのも、企業のカード利用の特徴の1つだ。
図3は、2009年から2013年におけるカード関連サービスの平均成長率と富士キメラ総研が調査した10サービスを基に割り出した、各サービスの市場シェアの相関図である。平均成長率が10%以上なのは、顧客管理システム、入退室管理システム、ドキュメントセキュリティの3つの分野だ。
顧客管理システムの導入は、流通業の店舗を中心に進んでいる。目的はポイントサービスの展開やマーケティングデータの取得による顧客の囲い込みだ。カルチュア・コンビニエンス・クラブ(TSUTAYA)など提供する「Tカード」、三菱商事やローソンが展開する「ポンタ(Ponta)」など、ポイントサービスによる企業を超えた顧客開拓が行われている。今後も、共通のプラットフォームを有するICカードの利用が増えると考えられる。
フィジカルセキュリティの中核を担う入退室管理システムも導入が進み、市場は拡大する見通しである。ドキュメントセキュリティ市場は立ち上がったばかりだが、セキュリティの強化やコスト削減を目指した製品やサービスの導入が、今後は増えるとみられる。
ICカード発行市場は一部を除き、普及期を過ぎて市場に飽和感が出てきている。カード関連のビジネスは、既に発行されているICカードを活用するシステム/サービスが増え、それらを連携する方向にシフトしている。SuicaやPASMOの既発行済みICカードを利用したサービスも徐々に登場してきており、今後はICカードをインフラとする各種サービスの登場が期待される。
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