Google Buzzの“だだ漏れ”騒動に思う――Beaconの二の舞になるのか

非公開だと思っていた個人的な情報が、皆に公開されてしまっていた――Google Buzzの騒動は、FacebookのBeacon問題を思い出させる。Googleがユーザーの声を聞いて修正していかなければ、BuzzはBeaconのように失敗してしまうだろう。

» 2010年02月26日 10時41分 公開
[Clint Boulton,eWEEK]
eWEEK

 Google Buzzが、Googleの天才技術者を持ってしても予想できなかったプライバシーの問題を抱えているという記事が山のように書かれている。

 たぶんこれは問題だろう。Google社員は論理に基づくアルゴリズムや、技術的な課題やクールなコードを書くことに秀でている。だが今や、その評判も台無しだ。Googleは、世の中を見て「普通の人たちは、Googleの作っているものをかっこいいとも便利だとも思わないかもしれない」と理解することができないようだから。なんたる思い上がりだ。

 Buzzは米連邦取引委員会(FTC)に、監視すべきたちの悪いサービスとして目を付けられた。電子プライバシー情報センター(EPIC)が苦情を申し立てたためだ。集団訴訟も起こされた。人々が声を上げているという兆候だ。

 そして今度はAltimeter Groupのアナリスト、シャーリーン・リィ氏(おそらく、彼女ほどソーシャルサービスについて明快なコメントができるアナリストはいない)が、サッカーママや過保護なパパに警告を発した。Buzzは子供でもあまりに簡単に使える上に、プライバシーが不十分だと。

 リィ氏は、9歳の娘が、自分のBuzzがすべてのBuzzユーザーに公開されていることを知らずに友人とBuzzで話していたとして注意を促している。

 当たり障りのない投稿だったが、それが公開されていた。それに気付いたのは、Buzzが親切なことに、わたしを娘のフォロワーにしたからだった。子供に先を越されたことがないのがわたしの自慢なのだが、今回ばかりは子供の方が先にBuzzを使っていた。娘は、友だちとの個人的な会話だと思っていたことが、みんなに公開されていることをまったく理解していなかった。

 幸い、投稿は1件だけだった。でも一番心配なのは、娘の友だちの中に、全然知らない人と話している子がいたことだ。電子メールなどの個人情報を明かしている子もいた。何も分かっていない4年生の子供なのだから恐ろしい。

 この件でリィ氏にメールをして、Googleに対する集団訴訟に参加するつもりか聞いてみた。彼女からは、次のような返事があった。

 そのつもりはない。その上、わたしはGoogleの利用規約に違反しているのだから、そうする根拠もない(訳注:13歳未満はGmailを使えないが、リィ氏は自分の生年月日で娘のアカウントを取得していた)。それに、わたしはどちらかというと、この話を広めて、子供にBuzzを使わせないようにすることで精神的な勝利を手に入れたい。幸い深刻な事態にはならなかったが、「iorgyinbathrooms」(I orgy in bathrooms=トイレで乱交)というアカウントがBuzzで娘をフォローしていたのにぞっとした。

 Googleはこの件に口を挟んできて、リィ氏などのユーザーは、子供が何をやっているのかちゃんと監督するべきだと示唆した。

 われわれは、興味のあることを友人と簡単に話せるようBuzzを設計した。オンラインでの子供の安全を守ることは当社にとって重要だ。Buzzを使うにはGoogleはカウントが必要で、アカウントの新規作成時には生年月日の入力を必須としている。13歳未満の子供がアカウントを作成できないようにするためだ。Buzzを立ち上げて以来、われわれはユーザーからの意見に耳を傾け、彼らの懸念に対処するために多くの改良を加えた。まだ初期の段階だが、多数の改良を施す予定だ。もっと意見を寄せてほしいと思っている。ユーザーがデータを管理できるようにすることを念頭に置いて、Buzzの改善を続けていく。このような改善を加えていく一方で、インターネットで子供の安全を守る上で、保護者の監督に代わるものはないということを心に留めておくのも重要だ。

 確かにリィ氏は自分の娘がBuzzにアクセスするのを防止できなかった。だが、彼女の話以外にも、GoogleはBuzzをめぐってPR上の問題を抱えている。別れた暴力夫に友人リストがさらされたというケースが報告されているだけではなく、子供たちは手当たり次第に――(リィ氏の娘のように)モルモットの写真を付けたりして――メッセージを投稿している。

 ネットをうろつく変な連中のことを考えると、これはよろしくない。自らプライバシーの危機を招いているようなものだ。

 わたしがBuzzについて書いた記事の幾つかに寄せられたコメントは、映画「セブン」でケビン・スペイシーが演じた役も無害に見えるほどの怒りに満ちていた。多分ないだろうが、もしもGoogleの生首を箱詰めにする方法があれば、やってしまう読者もいるだろう。ある読者はこんなコメントを寄せた。

 驚くほどの愚かさだ。Googleはスイッチを入れてしまった。文字通り何百万人ものプライバシーを侵害し、厚かましくも、「完成」品をリリースすることがいいとは思わないと言っている。隠されていると思っていたものをGoogleに一方的に暴露されたことで、何人の人が身体的に、あるいは仕事の面で危機にさらされただろう? 集団訴訟によって、Googleは個人情報を持つことには責任が伴うと思い出すかもしれない。

 こうした状況はBeaconを思い出させる。BeaconはSNSのFacebookが以前に導入した広告技術で、(ギフトの購入履歴など)特定の人にばらされたくない情報が公開されていることにユーザーが気付くまではうまくいっていたが、悲惨な結果になった。

 FacebookやGoogleのようなエリート企業の超有能プログラマーがソーシャル的に設計したサービスが、ソーシャル的にこんなひどいものになるとは驚きだ。

 Googleによい点があるとすれば、それは同社が指摘した通り、ユーザーの意見に耳を傾けているということだ。同社はフィードバックに目を通している。Google社員はリィ氏のブログを読んでいるため、おそらくは同社の製品管理責任者ブラッドリー・ホロウィッツ氏が先日明らかにした変更に加えて、さらなる改良を検討しているだろう。

 Facebookは変更を加えることを渋り、Beaconに多少の改善を加えた後で、間違いを認めて同システムを停止した。だがGoogleはユーザーを満足させるために全力を尽くしているか、あるいは少なくともプライバシー対策を取ると表明している。

 この取り組みは今後も続いていくだろう。実際この問題は、「ユーザーが苦情を言って変更を提案し、Googleが迅速にそれに対応する」という巨大なクラウドソーシング実験になっている。Buzzが立ち上げから2週間の間に進化していく様子を見るのは面白かった。

 Buzzユーザーは、プライバシーを完全に、詳細にコントロールできるようになるまでは満足しないだろう。彼らにはそうする基本的な権利がある。気に入らない点があれば、Googleに文句を言っていくべきだ。

 リィ氏のような建設的な批判が最善のやり方だが、何であれ効果はある。

 Googleはユーザーが指摘した問題を修正するだろう。そうしなければ、BuzzはBust(失敗)になる。Beaconのように。

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