“Cisco抜き”になったHPのデータセンター

HPが自社の全データセンターからCicso製品を排除したと発表した狙いの1つは、3COM買収で獲得したネットワーク製品が大規模データセンターの運用で使えることを示すことにあったようだ。

» 2010年09月28日 16時37分 公開
[Jeffrey Burt,eWEEK]
eWEEK

 米Hewlett-Packard(HP)と米Cisco Systemsとの間でほそぼそと続いてきた関係に終止符が打たれた。HPは9月27日(現地時間)、自社の6カ所のデータセンターからCiscoのコアルータとコアスイッチを排除したことを明らかにした。

 これらのデータセンターは現在、HPのProCurve部門のネットワーキング製品および同社が米3COMの買収に伴って獲得した技術で運用されている。HPによる3COMの買収は4月に完了した(買収金額は27億ドル)。

 データセンターからCiscoの製品を締め出すという動きの背景には、幾つかの狙いがあったようだ。その1つが、HPのネットワーキング製品は大規模なデータセンターを運用するのに使えること、そしてデータセンターの稼働を停止せずに配備可能であることを示すことだ。

 「われわれは今年の4月、自社のデータセンターのコアWANルーティングとスイッチングでCisco製品を排除すると発表し、現在、それが実行された。この計画は前倒しして実施したが、予想していたよりも高いパフォーマンスを実現できた」――同社グローバルIT部門のケン・グレイ副社長は発表文でこのように述べた。「当社の技術者たちは、HPのような規模の企業向けのネットワークを当社の製品で運用することが可能であることを見事に証明した。そしてわれわれは、データセンターの稼働を停止することなしに移行を実施した」

 今回の動きは、本格的な統合データセンターソリューションを企業に提供することを目指してHPとCiscoの間で繰り広げられている競争でHPが新たに放った一撃でもある。両社間の緊密な関係は昨年から崩壊し始めた。きっかけとなったのは、Ciscoがネットワーキング専業ベンダーからの脱皮を目指し、自社での技術開発および他社との提携を通じてデータセンター市場への進出拡大に動き出したことだ。

 Ciscoは2009年3月、オールインワン型データセンターソリューション「UCS(Unified Computing System)」を発表した。この製品は、Ciscoのサーバとネットワーキング技術に加え、米EMCや米VMwareなどのベンダーが提供するストレージ、仮想化技術、管理ソフトウェアで構成される。これによりCiscoは、HPだけでなく米IBMや米Dellといったベンダーとも直接競争することになった。

 この動きに対抗してHPは昨年、3COMを買収する意向を明らかにした。買収の狙いは、HPのProCurve製品群に欠落していたデータセンター用コアスイッチを獲得するとともに、イーサネットスイッチング能力を拡大し、さらに3COMのネットワークセキュリティ部門のTippingPointを手に入れることだ。HPのネットワーキングインフラだけで運用されることになった同社のデータセンターでは、3COMとTippingPointの製品が利用されている。

 HPは現在、ネットワーキング分野で同社が提供できるものとCiscoが提供できるものとの違いを強調しようとしている。

 HPのランディ・モット執行副社長兼CIO(最高情報責任者)は「世界各国の顧客に話を聞くと、彼らは数十年間にわたって縛り付けられてきたプロプライエタリなプロトコルに代わり得るオープンなアーキテクチャを提供する総合的ネットワーキングポートフォリオのプロバイダーを求めている」と発表文で述べている。「われわれが3COMの技術を最初に評価したとき、HPおよびHPのIT技術にとって並外れた価値があることが分かった」

 HPは6カ所のデータセンター(テキサス州ヒューストンとオースティンおよびジョージア州アトランタに各2カ所)を自社技術の実験場として利用してきた。同社は数年前に、世界各地に85カ所あったデータセンターをこの6カ所に集約した

 HPはこれらのデータセンターに数機種のA-Series製品を配備した。その内訳は、20台のA8812ルータ、6台のA6616ルータ、18台のA6604ルータ、16台のA12508スイッチ、12台のモジュラー型A9505スイッチとなっている。HPによると、このネットワークは260Gbps以上のWANデータトラフィック(インターネット転送速度は120Gbps)をサポートする。これは、同社のデータセンターの従来のネットワークインフラで処理できた帯域幅の約4倍だという。

 これらのデータセンターでは、HPのInternet Servicesや、同社のWebサイトを介したオンライントランザクションなどのサービスが稼働している。

 HPの年次アナリストデーの前日に行われた今回の発表は、同社の経営体制の移行期とも重なる形になった。同社は現在、マーク・ハード氏の後任CEOを探している。8月に辞任に追い込まれたハード氏はその後、Oracleの共同社長に就任した。ハード氏の後任として社内候補者の人選が進められており、間もなく発表があるといった観測も今月に流れた。

 HPでは年次HP IT Forumに向けた準備も進めている。今年は11月18〜19日にアトランタで開催される。今回のイベントでは、データセンター分野でのHPの取り組みが紹介されるほか、顧客向けに数本のブレークアウトセッションが予定されている。

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