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» 2010年11月23日 08時00分 UPDATE

SFC ORF 2010 Report:アジア進出に不可欠な「標準化」

内需の成長が期待できない中、日本企業が売り上げ拡大に向けて躍起になっているのがアジア市場の攻略である。そのポイントについて、有識者が意見を寄せた。

[伏見学,ITmedia]

 1990年4月に慶應義塾大学の新設キャンパスとして産声を上げた、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)は、今年で設立20周年を迎えた。当初は総合政策学部、環境情報学部の2学部でスタートしたSFCだが、現在は看護医療学部のほか、大学院の政策・メディア研究科、健康マネジメント研究科を持つまでになった。

 かつては、キャンパスに通う学生を「未来からの留学生」と称すなど、SFCでは最先端の技術や教育が施されてきたが、20年経った今、新しい教育研究のあり方を実現すべく「未来創造塾」構想を打ち出し、ローカルおよびグローバル双方の知見などを兼ね備えた人材育成をまい進している。

 11月22日、23日の2日間で開催している「SFC Open Research Forum(ORF) 2010」では、SFCの学生や教員が日ごろの研究成果や取り組みを一般に向けて発表するほか、専門家や有識者などによるセッションが多数用意されている。初日のオープニングセッションでは、「SOIアジア ネットワーク基盤構築、教育連携、そして産業創造への挑戦」と題したパネルディスカッションが行われた。

 SOI(School on Internet)アジアとは、慶應義塾大学が中心となり、ITを基盤にアジア各国の大学とのネットワーク連携を目的としたプロジェクトである。1996年にインターネットインフラ連携で始まった同プロジェクトは、その後、2000年からは教育、研究、授業における連携、2008年からは起業家創造を目指した連携に取り組んでいる。現在までに、14カ国28大学とのネットワーク基盤を構築している。慶應義塾大学 総合政策学部教授の國領二郎氏は「ITを活用してアジアに市場を作るとともに、大学が核となり、新しい技術開発のためのエコシステムを構築する」とSOIアジアプロジェクトの狙いを説明する。

アジア市場攻略の鍵は?

経済産業省 商務情報政策局長の石黒憲彦氏 経済産業省 商務情報政策局長の石黒憲彦氏

 こうした取り組みの背景にあるのは、ビジネスのグローバル化だ。少子高齢化の波が現実問題として押し寄せる中、日本企業は売り上げを海外市場に求めていかねばならない。民間企業はもちろんのこと、政府レベルにおいても、経済産業省が「成長戦略と産業構造ビジョン」を発表し、特にアジア市場に対するさまざまな経済戦略を明言している。

 その1つが「パッケージ型インフラ海外展開」である。重点分野の絞り込みと分野別戦略の策定を行い、それを基にインフラを海外に輸出していく。現在、重点分野として挙げられているのが、道路や鉄道などの交通インフラだ。「(時刻通り正確に運行する鉄道システムなど)日本の強みを世界に誇れる技術がこの分野にある」と経済産業省 商務情報政策局長の石黒憲彦氏は胸を張る。

 ただし、単なるショーケースとして日本の技術やシステムをアジア市場に提案しても、ビジネスはうまく進展しないという。そのために不可欠なのが、標準化であり、現地の商習慣を深く知ることである。経済産業省では、技術の標準化や規格の統一に関して、米国の国立標準技術研究所(NIST)などとの連携を強化し、そうした懸念の解消に取り組んでいる。

NTTデータ 相談役の浜口友一氏 NTTデータ 相談役の浜口友一氏

 同じく、海外展開に対して標準化の重要性を訴えたのが、NTTデータ 相談役で、社団法人情報サービス産業協会会長の浜口友一氏である。アジア各国はインフラ構築の時代に突入しており、上述したように、日本企業はこれまで培った交通システムや建設システムをアジアでの案件にもそのまま適用したいという考えが強いが、「グローバルの標準に則っていなければ、たとえ日本が高品質で素晴らしいものを作ったとしても、海外市場で展開するのは難しい」と浜口氏は指摘する。

 そうした状況を踏まえて、浜口氏は「今後はSOIのようなプロジェクトを通じて、システムに対する考え方の標準化を(日本およびアジア諸国で)醸成できればいい」と期待を寄せた。

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