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» 2011年01月25日 08時00分 UPDATE

導入事例:年賀状をクラウド経由で送る時代に――「ネットで年賀状」インフラ構築記

「ネットで年賀状」は、PCの前にいながら年賀ハガキを投函できるサービス。博報堂アイ・スタジオとしては初めてのサービスのため、インフラ構築には苦労もあったという。

[石森将文,ITmedia]

 今さら言うまでもなく、年賀状は日本人に根付いた文化である。だがWebや携帯電話の普及により、郵便という手段ではなく、いわゆる“あけおめメール”やオンラインのグリーティングカードで済ませる人も多い。実際、年賀ハガキ自体の発行枚数も、減少傾向にある。実際、日本郵政グループの発表によると、平成23年度用年賀ハガキの総発行枚数は38億2024万5000枚であり、前年度から約7700万枚減少した。

jyuuji.jpg 博報堂アイ・スタジオ 戦略アカウント室 アカウントプラナー 十字賢氏

 ここに「紙 vs. ネット」という単純な構図を見て取る向きもあろう。だが博報堂アイ・スタジオの十字賢氏は「ネットをインタフェースとし、年賀ハガキを送れるようにすれば、デジタルネイティブな若年層にも支持されるのではないか?」と考え「ネットで年賀状」を企画したという。「ハガキというマテリアルが手元に届くことは、世代を問わずうれしいもの」(十字氏)

 「ネットで年賀状」の仕組みはこうだ。ユーザーはまず、用意されたテンプレートやパーツを組み合わせ、年賀状をデザインする。メーラーのアドレスブックやPC版の年賀状作成ソフトの住所録データなどをインポートし、宛名印刷もできる。

 またこのサービスがユニークな点は、投函も行ってくれるということだ。つまりユーザーは、年賀ハガキを買いに行ったり、宛名印字をしたり、投函しに行ったりという手間をかけることなく、PCの前から年賀状を出せるわけだ。手書きのメッセージを加えたいユーザー向けには、両面とも印刷済みのハガキを自宅配送するサービスも行っている。

 2010年11月15日にサービスを開始し、年が明けた1月15日までの2カ月にわたりサービスを提供した「ネットで年賀状」だが、その企画は2010年の春頃に立ち上がっている。博報堂アイ・スタジオはデジタル分野のクリエイティブをコアコンピタンスとしており、プランニング自体はお手のものと言えるが、Webサービスを立ち上げるに当たってのインフラ構築や運用管理を専業とするわけではない。リッチコンテンツを扱うWebサービスである「ネットで年賀状」が順調に推移すれば、ネットワークに相応の負荷がかかると予想されるため、十字氏はオンデマンドでITリソースを利用できるサービス、つまり何らかのクラウドサービスを「ネットで年賀状」のインフラとして利用することとした。

クラウド利用のノウハウを今後に生かす

net-nenga.jpg 「ネットで年賀状」は2011年1月15日までサービスを受け付けた

 iDC事業者を中心に、同種のサービスはいくつか提供されているが、「実績の豊富さとコストパフォーマンスが決め手となり」(十字氏)、IDCフロンティアが提供する「NOAH」に決めたという。

 NOAHはインターネット経由でサーバリソースを使える、パブリック型のクラウドサービスだ。パブリッククラウドの場合、その可用性が不安視されることもあるが、NOAHは月間99.99%の稼働を保証しており「安定性は十分だと判断した」(十字氏)。

 なお「ネットで年賀状」を実施するのは今回が初めて。「クリスマスイブから正月までがアクセスのピークと見込んだ」とする十字氏だが、「実績に基づくトラフィックを算定できないので、正直なところ正確な判断が難しかった」と話す。

 サービスのフローやインタフェースの開発も並行して進めており、セッションが発生するタイミングや回数も随時変更される状況であったが、「負荷テストの過程からIDCフロンティアの協力を得、受発注関係というより、共同開発に近い形で進めていった。期間も短く、かなりの無理をお願いしたと思う」と十字氏は笑う。

 特にサーバ構成の決定については、IDCフロンティアのノウハウによるところが大きかったという。例えば今回、基本的にはクラウド上の仮想サーバを利用するがDB系だけは物理サーバを占有するという、物理と仮想のハイブリッド構成を採っている。それは個人情報を扱うサービスのため、セキュリティには万全を期す必要があるという「ネットで年賀状」の特徴から、物理サーバを盛り込んだ構成での要望に対して、ハイブリット構成によるサービス提供が可能という、IDCフロンティアの提案によるものであったという。

 十字氏は今回の取り組みの中に、サービスの安定運用という以上の効果も見出しているようだ。「クラウドを利用することで、サービスの企画そのものにヒューマンリソースを集中できた。またクラウドを使う知見やノウハウを博報堂アイ・スタジオとして蓄積できた意義も大きい」。

 「ネットで年賀状」は、今回限りの企画ではなく、次年度も実施する予定だという。「今回、多くの改善要望をユーザーから得た。年賀状という国民の文化をサポートすることに加え、今度は『ネットで年賀状』という新しい文化を築いていきたい」(十字氏)。

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