クラウドデータセンター青森誘致に向けて協議会設立へ顧問にグーグル元名誉会長村上憲郎氏

青森県などが共同で、「むつ小川原グリーンITパーク推進協議会」の設立準備を進めている。国際戦略総合特区へ戦略的グリーンITパーク設立構想を提案しているのは青森県のみ。

» 2011年02月14日 16時42分 公開
[林雅之,ITmedia]

 青森県、八戸大学、六カ所村、新むつ小川原、日本風力開発、東北電力、NTT東日本などは2月10日、『むつ小川原グリーンITパーク推進協議会』の設立準備幹事会を開催した。顧問にはグーグル元名誉会長村上憲郎氏、会長には八戸大学総合研究所所長の大谷真樹氏が就任する。大谷氏は会長就任のあいさつで「村上氏の顧問就任は大変心強く、六カ所村の風力発電などを活用した環境型のデータセンターを対外的に積極的にPRし、活用を提案していきたいと」と述べた。

むつ小川原グリーンITパーク推進協議会の設立準備幹事会の様子

 NTTコミュニケーションズu-Japan推進部の林雅之氏は、データセンターの国内立地推進に向けた政府の取り組み、郊外型クラウドデータセンターの事例やデータセンター立地に関する動向などを紹介し、「青森県は政府の国際戦略総合特区への提案をしており、アジアのクラウドのハブに向けた誘致を目指すとともに、地産地消のデータセンターモデルのあり方などの議論を深めていくべきではないか」と中立的な立場で意見を述べた。

 青森県は、平成22年5月に県庁内でデータセンター立地推進に向けた庁内検討体制を整備。8月からは青森県の優位性を生かしたあおもり型データセンターモデルに関する調査を実施し、9月には政府の国際戦略総合特区へ『戦略的グリーンITパーク設立構想』を提案している。データセンター立地関連では、10程度の地域が地域活性化特区への提案をしているが、国際戦略総合特区へ提案しているのは青森県のみとなる。

 今後の展開について青森県商工労働部次長の永井岳彦氏は、「風力発電や蓄電池を活用し、環境と経済を両立させたアジアのハブとなるような国際競争力のあるデータセンターの誘致にむけて、今後本格的に取り組んでいきたい」と述べた。風力発電は電力の安定供給が懸念されるが、大容量の蓄電池の併設と東北電力からの送電により、電力の安定供給と経済性の高い利用が可能となる。

 さらに永井氏は、立地環境の優位性をアピールした。むつ小川原地区は、原子燃料リサイクル施設や国家石油備蓄基地があるように、強固な岩盤に覆われており、地震や落雷も少ない。札幌市と比較した場合、夏の気温が低く、冬の気温が高く、太平洋側であるため雪対策コストも少なく済み、データセンター内の外気冷却に適しているという。また、東北新幹線の全線開通によって、最寄りの七戸十和田駅から1時間弱で現地に到着できる。

 事業者向けの優遇制度面も充実している。電力立地給付金による永年の割引が適用され、原子力発電施設など周辺地域企業立地支援給付金(F補助金)による8年間の大幅割引ができるなど、電力を大量に使用するデータセンター事業者にとっては、大幅なコスト減が期待される。また、データセンター事業者向けの優遇制度についても準備を進めている。

 また、国際核融合エネルギーセンター(ITER)では、今後スーパーコンピューターの導入が予定されており、尾駮(おぶち)レイクタウンで実施されているスマートグリッドの実証、次世代エネルギーパークでの風力発電・地熱・バイオマスなどの新エネルギー関連施設など、環境とITが融合する先進的な研究開発地域としても注目を集めている。

 永井氏は「まず協議会ホームページを立ち上げ、電気・通信各社や大手建設会社や地元企業など、誘致に向けて賛助会員や一般会員を積極的に募っていきたい」と述べた。展示会への出展や、むつ小川原開発地区へのバスツアーも企画しているという。

 幹事会では、各社から、今後の方向性や取り組みについて活発な議論がなされ、最後に会長の大谷氏が「国内外の提携なども視野にいれ、積極的にむつ小川原のモデルをPRしていきたい」と述べ、閉会した。

 クラウドコンピューティングの進展に伴い、北海道石狩市など国内各地で郊外型クラウドデータセンター立地の動きが進んでいる。青森県が協議会を設立し誘致に本格的な取組みをはじめたことにより、特区も含めた自治体の誘致合戦は、益々加速しそうだ。

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