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» 2011年04月25日 08時00分 UPDATE

Weekly Memo:マイクロソフトの戦略サービス「Office 365」の正体

日本マイクロソフトが先週、企業向けクラウドサービス「Office 365」のパブリックベータ日本語版の提供を開始した。注目度の高いこのサービス、はたしてその正体は――。

[松岡功,ITmedia]

Office 365が注目される理由

 「Office 365は、マイクロソフトが持つ優れたオフィス業務の生産性向上ツールを、企業規模にかかわらず、どんなデバイスでもクラウ ドベースで利用できるようにするサービスだ」

 日本マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部のロアン・カン本部長は、同社が4月20日に開いた記者説明会でこう語っ た。この日、同社は「Office 365」のパブリックベータ日本語版の提供を開始した。限定ユーザーに対して2010年10月に提供を始めたプラ イベートベータ版に続いて、より幅広いユーザーを対象に提供範囲を広げたもので、こうしたステップを経て機能や操作性のさらなるブラ ッシュアップを図っていく構えだ。正式なサービスの開始は、2011年中としている。

記者説明会に臨む日本マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部のロアン・カン本部長 記者説明会に臨む 日本マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部のロアン・カン本部長

 米Microsoftが2010年10月に発表したOffice 365は、直後からユーザーおよびベンダーの高い関心を集めている。その理由は、同社がかね て展開してきた企業向けクラウドサービス「BPOS(Business Productivity Online Suite)」と、オフィスアプリケーションとして圧倒的 なシェアを占める「Office」を組み合わせた商品だからだ。

 具体的には、BPOSの後継サービスに位置付けられ、メールおよびメッセージングベースの「Exchange Online」、コラボレーションプラッ トフォームである「SharePoint Online」、インスタントメッセージングやビデオカンファレンスの機能を提供する「Lync Online」といっ た各種機能のほか、従来のBPOSにはなかったボイスメールやSharePointでのドキュメント検索などの機能も追加されている。

 そしてこれに、WebブラウザからOfficeが利用できる「Office Web Apps」、およびクライアントにインストールして利用する「Office Professional Plus」のソフトウェアライセンスが組み合わせられた形で提供される。

 Office 365のサービスラインナップとしては、利用規模に応じて、小規模事業者向けの「for Small Business」、主に大企業に向けた高 機能版の「for Enterprise」、教育機関向けの「for Education」の3つのエディションを用意。それぞれのエディションの中で、提供され る機能や利用形態に応じて、価格の異なる複数のプランが提供される。その詳細については、関連記事等を参照いただきたい。

クラウドサービス普及の指標になりうるOffice 365

 日本マイクロソフトは記者説明会で、Office 365が提供する価値について次の5つを挙げた。

 1つ目は「最高の生産性の実現」。OfficeとBPOSが同一環境で利用できるようになったことで、個人だけでなくチームとしての業務の生産 性向上を一段と追求できるというのが意図だ。

 2つ目は「どこからでもアクセス可能」。クラウドベースなので、インターネットにつながれば、場所に関係なく、どんなデバイスからで もアクセスできる柔軟性を強調していた。

 3つ目は「使い慣れた操作性」。使い慣れたOfficeの操作環境をベースに、Office 365の豊富な機能を利用できることから、クラウドサー ビスへのハードルが非常に低いことこそがマイクロソフトの最大の強み、と強調していた。

 4つ目は「堅牢なセキュリティと信頼性」。およそ15年というメールサービスの運営実績をはじめ、マイクロソフトはさまざまな分野です でにクラウドサービスを展開しており、セキュリティ対策や信頼性への実績やノウハウを十分に蓄積していると説明していた。

 5つ目は「ITの制御と効率化」。4つ目とも関連するが、クラウドサービスの運用管理についても、有力なツールを用意しているとした。

 この中で注目されるのは、3つ目の「使い慣れた操作性」だ。Office 365は発表直後からユーザーおよびベンダーの高い関心を集めている と先にも述べたが、マイクロソフトの優位性はまさにこの点にある。筆者がOffice 365に注目したのは、BPOSの後継サービスであることと 、マイクロソフトのパートナー企業であるソリューションプロバイダー大手各社の素早い取り組みを目の当たりにしたからだ。

 マイクロソフトにおけるBPOSのパートナー展開については、2009年4月13日掲載の本コラム「Microsoft Online Servicesに向けたパートナーの思惑」でも 述べたように、マイクロソフトの真剣ぶりもさることながら、パートナー企業側の期待も非常に大きいものがある。

 Office 365はそのBPOSのパートナーモデルを踏襲しており、マイクロソフトにするとBPOSとOfficeを組み合わせることで、パートナーモ デルの一層の強化とともに企業向けクラウドサービス市場を一気に席巻してしまおうとの思惑があるのだろう。

 そのパートナーモデルの広がりを強く感じたのが、今年1月25日に発表されたリコーグループとマイクロソフトのクラウド分野での提携で ある。この時点でリコーはOffice 365に照準を合わせている。

 さらにもう1社、ソリューションプロバイダー大手の素早い取り組みを紹介する。大塚商会が2月上旬に東京で開催した大規模なプライベ ートフェアで、Office 365を中心としたマイクロソフト関連製品・サービスについて、部屋を別に設けてプレゼンテーションを行っていた 。こうした扱いからも、大塚商会がOffice 365の登場を大きなビジネスチャンスと見ていることが分かる。

 こうして見ると、Office 365はマイクロソフトの戦略サービスというだけでなく、企業向けクラウドサービスのさらなる普及を占う重要 な指標になり得るのではないか。マイクロソフトにとっても大きな正念場である。

 ちなみに、冒頭でコメントを紹介したロアン・カン氏は、日本マイクロソフトに9カ月前に着任し、今年からインフォメーションワーカー ビジネス本部の本部長を務めているが、かつて数年間、ビル・ゲイツ会長のスピーチライターを務めたこともある若手マネジャーである。 この人事を見ても、Office 365に対するマイクロソフトの力の入れようがうかがえる。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュ ータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務 める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグルー プ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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