クラウド化と海外拠点の活用を軸に、コスト削減と節電に取り組むNTTデータ

NTTデータは、クラウド化による運用コストの削減や海外拠点を活用した節電対策など、自社システムにおける改善への取り組みを紹介した。

» 2011年06月27日 19時09分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 NTTデータは6月27日、自社システムの環境改善に関する取り組みについて報道機関向けに説明を行った。社内システムの更改に伴うコスト削減や、電力不足に伴う節電対策の状況などを紹介している。

プライベートクラウド化

システム更改における基本方針

 社内システムの更改における取り組みでは、既存システムに比べてコストの大幅な削減や、二酸化炭素の排出抑制が大きな課題となったという。このため、更改作業には外部向けに提供しているプライベートクラウドの構築・運用サービス「BizXaaS構築・運用サービス」を社内向けに適用。維持コストを71%(1億2000万円)、年間の二酸化炭素排出量を79%(708トン)、それぞれ削減した。

 更改ではミドルウェア以下のレイヤにおけるシステムインフラを可能な限り共通化しつつ、各レイヤでの柔軟な拡張性を確保できる構成を目指した。まず業務内容やそこで利用されるアプリケーションについて、重要性などの観点から現状分析を行った。対象は100システム以上になった。それを基にSLAのパターンを3〜4種類に絞り込み、情報部門トップの承認を得てシステムごとにSLAを設定した。

 基盤システム事業本部の山田正和氏によると、この段階ではシステムの可用性が重要なポイントになった。「例えば財務系ならほぼ100%の可用性が求められ、情報系ならそれより少しだけ緩和できると判断して、SLAの種類を必要最小限にする。これにより、システムの設計や開発、さらには維持に必要なコストも抑制できる」という。

 また選定した製品は商用ベースのもので、仮想サーバをホストするハードウェアには拡張性に優れるとの理由からブレードサーバを採用した。運用監視にはオープンソースベースの統合運用管理ソフトウェア「Hinemos」を全面的に採用し、ジョブ管理から統合管理までを階層的に1つの製品で構築した。

 こうして更改するシステムはプライベートクラウドとして運用される。山田氏は、その定義について「従来システムよりも拡張容易性に優れる点」と述べた。従来は一定規模以上にシステムを拡張することが難しかったが、クラウドではそうした制約の問題を解決できるとした。

システムに更改に伴うさまざまな削減効果

海外拠点を積極活用

 一方、今夏に予想される電力不足での節電対策は、東日本地域にあるサーバの域外への移設と、クラウドサービスを活用したオフィス業務環境の変革になるという。執行役員の遠藤宏氏は、「顧客へのサービスに極力影響しない形で当社での使用電力の削減に努力している」と述べた。

 同社の使用電力の多くを占めるサーバは、西日本地域のデータセンターや中国・無錫およびマレーシアなどの海外のデータセンターへの移設を進めている。特に開発業務向けのサーバは、遠藤氏が所管する基盤システム事業本部が使用するもののオフショア開発環境の大半を、本社から無錫に移設する。また、NTTデータグループ全社で使用する開発クラウドサービスも三鷹市からマレーシアに移設する。

節電対策の主な内容

 これに伴って、データセンター間のネットワーク帯域も拡張。東京・無錫間では5月に20Mbpsに拡張し、7月には東京・北京間も20Mbpsに拡張する。東京・マレーシア間では7月に100Mbpsの回線を新設する予定である。こうした対応は、今後のオフショア開発の拡大も見据えたものだという。

 このほかの節電対策では、データセンターへの給電に「HVDC方式」を導入して、交直変換に伴う損失量の低減化を進めている。また、仮想デスクトップやアプリケーションをサービス提供する「BizXaaS Office」を社内向けにも展開。約1万人の社員を対象に500ユーザーが同時接続できるリモートアクセス環境を整備し、ショールームでのデモストレーション作業でも利用できるようにした。今後や拠点集約などの進展に合わせて、クラウドサービスの自社導入を推進していく計画である。

 遠藤氏は、「大震災をきっかけにして、短期的には節電、中長期的には災害復旧や事業継続の仕組み作りに着手する企業が増えている。当社自身も積極的に取り組むことで、こうした企業の先駆けになりたい」と話している。

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