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» 2012年07月27日 09時00分 UPDATE

公共データのオープン化が経済効果をもたらす 経産省

日本でも公共データの公開、いわゆる「オープンガバメント」が推し進められている。それによる成果は行政の透明化だけにとどまらないという。

[伏見学,ITmedia]

 内閣が設置する「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)」ではこのたび、公共データの活用を促進するための基本戦略「電子行政オープンデータ戦略」を発表した。

 同戦略の目的および意義として、(1)透明性・信頼性の向上(2)国民参加・官民協働の推進(3)経済の活性化・行政の効率化、という3点を挙げている。透明性や信頼性については、公共データが二次利用可能な形で提供されることにより、国民が自らまたは民間のサービスを通じ、政府の政策などに関して十分な分析や判断を行えるようになる。

 国民参加や官民協働の推進に関して、公共データの活用が進展し、官民の情報共有が図られることにより、官民協働による公共サービスの提供や、行政が提供した情報による民間サービスの創出が促進されるだろうとしている。

 経済の活性化や行政の効率化については、市場における公共データの編集、加工、分析などを通じて、さまざまな新ビジネスの創出や企業活動の効率化が促され、日本全体の経済活性化が見込めるという。

行政のオープン化を先行して推進

 このように、公共データのオープン化を政府全体で推進するに至ったのには、経済産業省の取り組みが大きくかかわっている。経産省では、2008年10月に開催した「行政CIOフォーラム」の中で、行政情報のオープン化を主要課題に掲げるなど、早期から検討をスタートしていた。2009年10月には、オープンガバメントプロジェクトの第1弾として、国民の意見を収集するサイト「アイディアボックス」を立ち上げたほか、2010年7月にはオープンガバメントに関する実証研究サイト「オープンガバメントラボ」、同年9月には統計データをオープンデータ化し、それを利活用できるサイト「データボックス」を設置した。

 2011年7月には、東京電力福島第1原発の事故による電力供給不足を背景に節電意識が高まる中、電力需給データが閲覧できるポータルサイト「節電.go.jp」を開始。APIも公開したことで、各種ガジェットやデジタルサイネージと連携したサービスがいくつか生まれた。2011年10月には文字情報基盤を公開し、戸籍や住民票で使う文字と互換性のあるフォントを無償で提供した。半年間で約2万件のダウンロードがあったという。2012年1月には、各府省や自治体が提供する被災地支援制度を一元的に集約する「復旧・復興支援制度データベース」を立ち上げAPIを公開するなど、さまざまな分野で公共データのオープン化を進めているのだ。

 そして今年6月、ITの融合が進む重点分野(医療、ヘルスケア、交通、農業)において新事業創出に向けたアクションプランを具体的に議論する場として「IT融合フォーラム」を新設した。公共データや公共性の高い民間データは、大きな財政負担なくイノベーションを創出できる“宝の山”であり、まずは国がデータの開放を積極的に進めるとともに、それを活用して異分野融合による価値を生み出していきたいという思いが背景にあるという。

 こうした取り組みについて、経産省CIO補佐官の平本健二氏は「日本の産業振興のため」と力を込める。民間にニーズのある公共データを提供して、新たなサービスを創出することで、市場の活性化や経済効果が生まれることを期待する。

欧米では経済波及効果あり

 これは単なる絵空事ではなく、先行事例に基づいている。既に欧米を中心とする先進諸国は成長戦略の一環として、公共データの開放と民間での利活用促進を実施している。例えば、EUでは2003年に公共データ利活用に関するEU指令を制定し、各国はこれに基づき制度を整備している。EUの研究機関によると、公共データ活用サービスの市場規模は280億ユーロで、民間が公共データを活用することで年間1400億ユーロの経済波及効果があると試算。これをGDP(国内総生産)比で日本に置き換えると、1兆円の市場規模、5.4兆円の経済波及効果があるという。

 また、米国ではオバマ政権の発足直後からオープンガバメントに関する施策を強化し、2009年5月に連邦政府の公共データ約5万件を国民に提供するサイト「Data.gov」を開設した。この1つの成果として、農家および農作物専門のインターネット保険会社である米Climate Corporationは、National Weather Service(国立気象サービス)がリアルタイムに提供する地域ごとの気象データや、農務省が提供する過去60年の収穫量、土壌情報などを活用して、地域や作物ごとの収穫被害発生率に基づいた農業保険を開始、急成長を遂げている。

「日本でも以前から気象データなどは民間サービスと連携していた。例えば、今後は工事情報や事故発生情報といった公共データとさまざまなアイデアが結び付くことで新サービスが登場していくだろう」(平本氏)

 そうした動きを推進すべく、経産省は今月、「DATA METI構想」を打ち出した。公共データの開放について、実施可能な取り組みからスタートさせようと、具体的には、横断利用可能な知的基盤データベースの構築、さまざまな支援制度情報の公開基盤の検討、日本版NIEM(National Information Exchange Model:米政府が公共情報の交換に活用する体系)の検討および実証などを行っていく。「経産省が各府省に先立って導入事例を整備し、オープンデータ普及の呼び水にしていきたい」と平本氏は強調した。

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