OracleのSaaSには「ソーシャル」やExadataが付いてくる?Oracle OpenWorld San Francisco 2012 Report

「Oracle OpenWorld San Francisco 2012」がハイライトを迎えた。基調講演に登場したエリソンCEOは、「Oracleのアプリケーションサービスは、優れたインフラ、プラットフォーム、そしてソーシャル技術がセットで提供される」とライバルたちにはない強みをアピールした。

» 2012年10月03日 11時23分 公開
[浅井英二,ITmedia]
OracleのエリソンCEO

 米国時間の10月2日、カリフォルニア州サンフランシスコで開催されているOracleの年次カンファレンス、「Oracle OpenWorld San Francisco 2012」はハイライトを迎えた。日曜日夕方に行われたオープニングの基調講演に続き、再びOracleのラリー・エリソンCEOが午後の基調講演に登場、モスコーニセンターのメイン会場は会期中最大の熱気に包まれた。エリソン氏は、詰め掛けた約1万人の顧客やパートナーらに同社の広範なクラウドサービス「Oracle Cloud」を改めて売り込んだ。

 一般にクラウドは、サービスの種類によって「IaaS」「PaaS」「SaaS」に分類して語られる。Oracle OpenWorldの初日、エリソン氏が明らかにしたIaaS参入によって、Oracleもすべてのレイヤでクラウド事業を推進することになった。同社は、サーバ/ストレージからOS、ミドルウェア、そしてアプリケーションに至るフルスタックを緊密に統合して企業顧客に提供しているが、オンプレミスと全く同じ製品や機能をクラウドでも利用できる選択肢を提供する。しかも、ほとんどすべてに競争力のある製品をそろえていることは、ライバルたちにはないOracleの強みだろう。

 下の図は、レイヤごとにOracle Cloudの製品や技術を整理したものだ。赤い部分がFusion ApplicationsなどのSaaS、そして一番下からIaaS、その上にPaaSが載るが、ユニークなのは真ん中に位置する「ソーシャルサービス」だ。

 エリソン氏が新しいレイヤとして位置付けたソーシャルサービスは、ソーシャルメディアを活用して潜在顧客を見つけたり、顧客体験をより良いものにしたい企業に向けた一連のクラウドサービスだ。企業はこのソーシャルサービスを利用することで、TwitterやFacebookを介して消費者の声に耳を傾け、見込み客を見極めて販売につなげたり、商品やサービスに関して不満を募らせていることが分かれば、コンタクトセンターが早期に問題解決にあたることもできるという。

 これらソーシャルサービスは「ソーシャルリスニング」から「ソーシャルマーケティング」「ソーシャルエンゲージメント」と幅広い領域をカバーするが、Collective Intellect(ソーシャルアナリティクス)、Vitrue(ソーシャルマーケティング)、SelectMinds(ソーシャル人材ソーシング)、Involver(ソーシャルアプリ開発プラットフォーム)など、いずれもこの5月から9月のあいだに買収した製品ばかりだ。彼らがこの分野におけるポートフォリオ拡充をいかに急いだかがうかがえる。

 なお、同社がソーシャル分野などを強化すべく、この十数カ月で買収した主なベンダーは以下のとおりだ。

買収発表 企業名 製品分野
2011.6 FatWire Software Webエクスペリエンス管理
2011.7 InQuira ナレッジマネジメントベースCRM
2011.10 RightNow クラウドカスタマーサービス
2011.10 Endeca ソーシャルアナリティクス
2012.2 Taleo クラウドタレント管理
2012.5 Vitrue クラウドソーシャルマーケティング
2012.6 Collective Intellect ソーシャルアナリティクス
2012.7 Involver ソーシャルアプリ開発プラットフォーム
2012.9 SelectMinds クラウドソーシャル人材ソーシング

 「Oracleのアプリケーションサービスは、優れたインフラサービス、プラットフォームサービス、そしてソーシャルサービスとセットで提供される。個別のアプリケーションを提供するSaaSベンダーとは違い、われわれのすべてのアプリケーションは、アプリケーション間で連携を図れることはもちろんのこと、ソーシャル技術の利点も享受できる」とエリソン氏。

 ちなみに、Oracleは、今回のOracle OpenWorldでインメモリ技術を導入したExadataのバージョン3、「X3」を発表している。このX3は、Oracle Cloudを担うインフラストラクチャーサービスのビルディングブロックでもあり、ユーザーのデータベースはインメモリに格納され、高速に処理されることになるという。このことは、同社がこれまで培った技術や製品はもちろん、将来の開発や戦略的な買収によって獲得した技術や製品もクラウドサービスとして提供されることを意味する。

 「われわれは顧客企業が必要とするものをすべてOracle Cloudで提供していく。それは完璧なアプリケーションスイートを意味するだけでなく、Java EEをはじめとする業界の標準的なミドルウェアやSOAプラットフォームもすべてクラウドサービスとして提供する。この20年でわれわれは標準の大切さを学んだ。クラウドだからといってそれを忘れていいわけではない」(エリソン氏)

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