静かなSurface RTデビューとビジネスタブレットの標準化(2/2 ページ)

» 2013年03月25日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 WindowsタブレットがiPadやAndroidの後塵を拝してしまったのは、企業(ビジネス)タブレットの標準化という視点では残念だった。Windows VistaにタブレットPCの機能を標準搭載するなど、Microsoftも新しいユーザーインタフェースやフォームファクターに対してずいぶんと以前から取り組んできたが、自ら市場をつくることはできなかった。現在、Windows 8を搭載したタブレットを販売している主なベンダーは、ASUS、Acer、Dell、HP、富士通、ONKYOくらいだろうか。日本の企業がある程度のボリュームで導入しようとすると選択肢はあまり多くない。パナソニックにも「TOUGHPAD」という製品ラインがあるが、特殊な用途向けとみるべきだろう。

PCはビジネスマンの武器、最新のテクノロジーを

 世界最大のPCメーカーであるHewlett-Packardの日本法人でPCやタブレットなどの事業を統括する岡隆史副社長は、「PCはビジネスマンが戦うためのツール。生産性を上げ、それを成果につなげる武器だ。使い方に適した姿かたちや性能が選べなければならない」と胸を張るが、日本企業の大半がWindows 7への更新を進めている段階では、国産ベンダーがWindowsタブレットに力を入れられないのも仕方がないのか。

 岡氏によれば、同社のWindowsタブレット(ElitePad)を含めた幅広い製品ラインアップは、世界中の企業顧客に支えられているものだという。実のところ、同社のワールドワイドのPC総出荷台数のうち日本HPの出荷台数が占める割合は2.5%に過ぎない(2012年実績)。日本市場では第4位、シェア約10%、特に企業向けPCでは第3位、シェアは約15%の同社だが、その顧客は世界170カ国で事業を展開するHPのグローバルなスケールメリットを享受できる。たとえ日本市場では数千台の需要でもグローバルでは何十万台にもなり、HPはワークステーション/デスクトップからシンクライアントやタブレットまで幅広い製品ラインアップを維持できている。

 「欧米企業は、リーマンブラザーズ破たん後の金融危機や欧州の金融危機にあっても、最新のPC調達を継続してきた。テクノロジーが差別化要素となることを理解しているからだ」(岡氏)

 一方、日本の企業の多くは、調達一本化などの努力でコストの低減に成功したものの、PCは社員が戦うためのツール、という認識が薄く、テクノロジーで差をつけるという発想にも乏しい。調達部門も生産性への貢献、ビジネスの差別化という視点ではなく、「新入社員用に何台をこの予算で」という考え方だ。

 「毎朝、社員が出社し、PCの電源を入れて数分待たされるとしたら、これを人件費に換算するだけでも最新のテクノロジーを導入する価値は理解できるだろう。客先に持ち歩くデバイスも同じ。その場で価格や納期を回答できれば、セールスのスタイルも変わる」と岡氏。

 岡氏は、「テクノロジーと造りの優れた、HPにしかないPC製品をこれからも幅広くラインアップしていく」と話すが、それこそ国産ベンダーが得意とするところではなかったのか。PC業界におけるサバイバル競争の厳しさを痛感するとともに、「軽薄短小」の技術や匠の技で一日の長がある国産ベンダーの頑張りにも期待したい。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ