営業で培った経験をIT部門で生かす デサント・高丸さん情シスの横顔

「デサントのビジネス現場とシステム現場の双方を知る」。これが高丸さんの強みだ。会社全体をITで支援すべく今日も奮闘する。

» 2013年09月05日 08時30分 公開
[伏見学,ITmedia]

企業の情報システム部門の現場で活躍する方々を追ったインタービュー連載「情シスの横顔」のバックナンバー

 「すべての人々に、スポーツを遊ぶ楽しさを」――。こうした企業理念を掲げ、野球やゴルフ、水泳、フィットネスなどさまざまなジャンルのスポーツウェアを提供しているのがデサントだ。1935年に大阪の地で創業し、現在も大阪市天王寺区に本社を構える。

デサント 情報システム室 システム1課 主事の高丸久範さん。福岡県出身 デサント 情報システム室 システム1課 主事の高丸久範さん。福岡県出身

 同社の情報システム室 システム1課において主事を務める高丸久範さんは、2003年に新卒社員として入社した。営業部門に配属となった高丸さんは、入社間もなく東京に転勤。スキーウェアやスノーボードウェアの営業担当として4年間、小さなショップから大規模チェーン店、百貨店に至るまで、さまざまな小売店舗に商品を提案する日々を送った。その後、2007年4月に情報システム室に異動となり、再び大阪勤務となった。

 情報システム室は、社員とパートナーを合わせて現在約30人の組織。今年4月には、基幹システムを担当するシステム1課と、物流システムや店舗システム、Web関連などを担当するシステム2課にグループが分けられた。情報システム室の年齢構成は、大きく20代〜30代前半と50代以上の二極化になっている。入社してからシステム一筋のスタッフがほとんどで、高丸さんは非常に珍しいキャリアなのだという。日ごろは各人が黙々と仕事に打ち込む雰囲気があるものの、部署で慰安旅行するなど風通しの良い組織のようだ。

 高丸さんの主な業務は、基幹システムの保守、改修、運用である。情報システム室に異動したころ、まさに同社はメインフレームをオープンシステムにマイグレーションするプロジェクトが走っていたため、テスト作業を行う日々だったという。マイグレーションは2008年5月に完了し、システムによってできる業務の幅が広がったという。

オフィス移転でIT改革

 このプロジェクトを皮切りに、これまでにいくつかのプロジェクトにかかわってきた。その1つが「大阪オフィスの移転プロジェクト」だ。同社は2012年3月に現在の大阪オフィスを新設。それに伴い、働き方の改善をテーマに掲げてIT改革を行った。具体的には、専用のファイルサーバを導入したほか、無線LANを社内すべてに配備した。

デサントの大阪オフィス。JR桃谷駅の目の前だ デサントの大阪オフィス。JR桃谷駅の目の前だ

 ファイルサーバについては、今までも存在してはいたものの、業務サーバに共有スペースを設けた程度のもので、アクセス管理やデータのバックアップも十分ではなかった。そこで今回、組織に基づきアクセス権限を付与し、部署で運用してもらう仕組みにした。

 また、無線LAN環境を構築したことで、社内のどこでもインターネットにアクセスして仕事ができるようになった。これまではすべて有線ケーブルだったため、例えば、会議の際には毎回ネットワークハブとLANケーブルを会議室に引く必要があったのだ。インフラを見直したことによって、今後はスマートフォンやタブレット端末の業務活用も検討していきたいという。BYODにも関心があるそうだ。

業務部門と地道にコミュニケーションを

 このような社内プロジェクトにかかわる際に高丸さんが心掛けていることとは何か。「メンバーのモチベーションがすべて」だと高丸さんは言い切る。

 「プロジェクト業務というのは、通常の業務に上乗せされるものです。ですので、プロジェクトに対して高いモチベーションを持っていないと、あれこれと言い逃れをして、最終的には一部のメンバーしかプロジェクトにかかわっていないというケースがよくあります。プロジェクト成功のためにはメンバー各自のモチベーションをいかに維持し、高めていくかが不可欠なのです」(高丸さん)

 ただし、モチベーションは人それぞれ。上司に評価されることがモチベーションにつながるメンバーもいれば、飲みに行くことでモチベーションを上げるメンバーもいる。こうしたバラバラな目的を1つにするにはどうすればいいのか。高丸さん自身は「実際にシステムを利用するエンドユーザーの声やデータを集めて、『こんなに使ってもらっているんだよ』とメンバーに伝えることで、それを1つのモチベーション材料にしていました」と振り返る。

 また、ITプロジェクトを円滑に進める上には、業務部門とのコミュニケーションも重要となる。双方の立場を経験した高丸さんだからこそ感じるギャップもあるのだという。

 「当然、両者に温度差はあります。悪いケースにおいては、システム部門はユーザーが何を作ってもらいたいかを理解してないし、業務部門はシステムによって何ができるかを理解していません。その間が抜けたまま空中戦を繰り広げても、出来上がったシステムはどちらのニーズにもマッチしなかったという事態を引き起こしかねません。瞬時の解決策は分かりませんが、ギャップを埋めるために人材交流など地道な取り組みをしてくべきだと思います」(高丸さん)

 実際、高丸さんは、業務部門の若手社員を集めてExcelなどの講習会を開いたり、営業同行したりするなどして、自ら積極的にコミュニケーションを深めるようにしているという。

システムと業務の双方を知る

 今後のキャリアについて、高丸さんは「システムと業務現場の両方を分かっている人は少ないので、より高いレベルで期待に応えられるようになりたい。いずれは会社全体を支援できるようなシステムを作りたいです」と意気込む。

 そうした目標に向けて、今必要だと感じているのが「マネジメントスキル」だ。何でも自分で作りたいタイプで、人を動かすのは得意ではないそうだ。だからこそ、今後のキャリア形成において課題だと考えている。一方で、マネジメントする立場になっても引き続きプログラムコードをバリバリと書くなど、常に現場の第一線で働いていたいという願望もある。

 「ITとビジネスをつなぐ役割を」――。高丸さんの活躍の場は目の前に大きく広がっているのだ。

ITは使わなければ損。どれだけITを使いこなせるかが企業の成功につながると思います。そのように社員が仕事でスムーズに活用できるよう、その土壌を作っていくのがIT部門の役目だと考えています ITは使わなければ損。どれだけITを使いこなせるかが企業の成功につながると思います。そのように社員が仕事でスムーズに活用できるよう、その土壌を作っていくのがIT部門の役目だと考えています

企業の情報システム部門の現場で活躍する方々を追ったインタービュー連載「情シスの横顔」のバックナンバー

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ