第5回 日本は「機械化」が進んでいない?テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」

欧米企業のインフラの現場は、「運用」のスタイルや考え方も大きく違う。日本のように、運用管理を“マンパワーでカバーする”ことはほとんどないという。工場や農業の機械化は進んでいるのに、なぜ日本のITインフラは機械化が遅れているのだろうか。

» 2015年02月26日 08時00分 公開
photo 工場や農業の現場では機械化が進んでいますが……

 前回、仮想化インフラにおける日本と欧米の違い、海外の成功事例が日本にマッチしない理由について頭出しさせていただきました。

 欧米とでは、すでに構成や設計方針にまで違いが出ている。これは日本人の“管理したい欲”が影響しているため……というものです。

 日本人の性格については、われわれ日本人が一番よく知っていますし、薄々感じていたことかもしれません。また、気づいていても「運用がそうなっているのでどうしようもない」とあきらめている方もいらっしゃるでしょう。

 今回は、その“運用”について深堀りしたいと思います。現場エンジニアだけでなく、意思決定層の方もお読みいただければ幸いです。

日本の工場や農業は機械化が当たり前 では「ITインフラ」は?

 「運用」という意味でも、日本と欧米とではスタイルが大きく違います。

 欧米企業の仮想化基盤/プライベートクラウドでは、日本のインフラの現場のように運用管理で“マンパワーでカバーする”というのはほとんど見られません。管理しても無駄という考えで“自律制御に任せる”という運用スタイルがほとんどです。

 ただし誤解しないで下さい。「まったく管理しない」とか「アウトソースに委託する」という意味ではありません。帳簿を付けたり細かく管理するのは面倒というその性格から、人に管理させないで優秀な“ロボット”に代行させているだけです。具体的には、現状を分析して改善案を検討したり、仮想マシンのリバランスを行ったり、見やすい帳簿やリポートを生成するといった作業を機械に任せています。

 機械化という点で、日本のITインフラ業界は確かに遅れています。しかし、日本そのものが遅れているわけではありません。例えば、工場のレーンでは産業用ロボットが普及し、今日では当たり前のように毎日稼働しています。普及の理由は言わずもがな、コスト削減や品質均等化であり、「マンパワーよりもリーズナブルだから」です。農業も一緒だと思います。稲を一本一本人力で刈るのではなく、農機で刈る方がもはや一般的です。理由は楽であり、リーズナブルだからです。工場では産業用ロボット、田んぼや畑では農機が普及していますが、ITインフラ、しかも日本のITインフラはコンピュータそのものを扱っているにも関わらず、まだまだマンパワーがたくさん残っています。欧米人の言葉をそのまま借りれば、これは本当に「クレイジー」だそうです。

本当に人員削減につながりますか?

 機械化と聞くと「社員が余ってしまう」「人員カットしなければならない」と思われた方もいらっしゃるでしょう。

 しかし、本当にそうでしょうか。日本のインフラ運用の現場はそんなに暇でしょうか? 疲弊していて、むしろ猫の手も借りたいはずです。先ほどの農業はどうでしょう。働き手が減る中、少人数で収穫するのは時間も掛かるし身体がもたない。刈る角度や脱穀の粗さなど、導入に抵抗はあったと思います。しかしながら、自分の身体と受け継いだ土地を守るために機械に任せるのです。

 少人数だからこその機械化。農業とITインフラは意外にも境遇が似ています。

photo 日本のインフラ運用の現場はそんなに暇でしょうか?

 この話の流れだと、次は高額な「自動化、標準化ソフトウェア」の売り込みか……と思われた方が多いのではないでしょうか?

 違います。私の言及したいのは、むしろその逆です。

小川大地(おがわ・だいち)

日本ヒューレット・パッカード株式会社 仮想化・統合基盤テクノロジーエバンジェリスト。SANストレージの製品開発部門にてBCP/DRやデータベースバックアップに関するエンジニアリングを経験後、2006年より日本HPに入社。x86サーバー製品のプリセールス部門に所属し、WindowsやVMwareといったOS、仮想化レイヤーのソリューションアーキテクトを担当。2015年現在は、ハードウェアとソフトウェアの両方の知見を生かし、お客様の仮想化基盤やインフラ統合の導入プロジェクトをシステムデザインの視点から支援している。Microsoft MVPを5年連続、VMware vExpertを4年連続で個人受賞。

カバーエリアは、x86サーバー、仮想化基盤、インフラ統合(コンバージドインフラストラクチャ)、データセンターインフラ設計、サイジング、災害対策、Windows基盤、デスクトップ仮想化、シンクライアントソリューション



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