「ただの仲良しグループ」も「ギスギスした関係」も超え、やっとチーム内の雰囲気が安定してきたと思ったのに、それでもパフォーマンスが上がらない。ですが、ここで諦めてはいけません。ここからがリーダーとして正念場といえるでしょう。
職場で感じるストレスの原因は、うまくコミュニケーションがとれないことによるものが多いようです。本連載では、伝え方や接し方、聴き方に至るまで職場でよくあるエピソードをもとに、仕事や物事がより円滑に進むようなコミュニケーションや考え方のヒントをご紹介します。言葉を受ける側の立場や気持ちを理解し、自分が発する言葉について見直してみてはいかがでしょう。
コミュニケーションがダメなチームは、いつまでたっても成果が出ない。リーダー(プロマネ)として“チーム内で起きているコミュニケーション”に目を向け、成果を出せるいいチームを作る――このテーマもいよいよ3回目です。
ここまで2回の記事を通して、「和気あいあいの仲良し状態」も「衝突だらけのギスギス状態」もチームとしてベストな状態ではないとお話ししてきました。
心理学者のタックマンが提唱した「タックマンモデル」では、こうした状態を乗り越えると、メンバーが安心して仕事にあたれる“Norming(規範期)”という状態に入るとしています。そのためにも、リーダーはメンバー間の衝突や不満に向き合い、一つ一つをルール化して処理する必要があるのです。
さて、さまざまなルールが決まれば、安定して成果出せるかというと、そううまくはいきません。あなたのチームでは、このような会話が交わされていませんか?
<とある会議での場面>
リーダー:何かここまでで意見はないかな?
メンバーA:特にありません。
メンバーB:はい、大丈夫です!
リーダー:では、この件はこれで決定ということで。
<業務終了間際に>
リーダー:急で申し訳ないけど、今日このタスクを対応しなくてはいけなくて、誰か対応できないかな?
メンバーC:すみません、ちょっと……。
メンバーD:うーん。じゃあ、私がやります
リーダー:ありがとう、Dさんお願いします。
こうした会話は一見、何の問題もなさそうに見えます。人間関係による衝突もなく、はたから見れば、スムーズに仕事が回っているようにも見えるでしょう。しかし、ここにはメンバー同士のことが理解できたからこそ起こりうる“落とし穴”があります。先ほどの会話の中には、メンバーのこんな(本音)が隠されているかもしれないのです。
リーダー: 何かここまでで意見はないかな?
メンバーA: 特にありません(言っても言わなくても、変わらないから。何も言わなくていいよね)。
メンバーB: はい、大丈夫です!(意見を言うと即担当になるんだもん。言ったもん負けみたいになるし……)
リーダー: では、この件はこれで決定ということで。
メンバA+B: (やっぱりねー。言わなくてよかった)
リーダー: 急で申し訳ないけど、今日このタスクに対応しなければいけなくて、誰か対応できないかな?
メンバーC: すみません、ちょっと……(NG出せば、最後はDさんがやってくれるだろうし)
メンバーD: うーん。じゃあ、私がやります(Cさんの方が先輩だし、仕方ないよな)。
リーダー: ありがとう、Dさんお願いします。
これらは両方とも「Norming」がうまくはたらいていない例です。メンバー間の理解が進んだために新たな“諦め”や“甘え”が生まれています。このほか、定めたルールが“なあなあ”になっていないかにも気をつけましょう。「昼休み明け、13時に午後の業務が開始するはずが、数人でランチに行ったメンバーだけ帰ってこない」といったことになっているチームは要注意です。
ルールができたのに、ゆがみが発生する。これはチーム内に新たな“暗黙知”ができ始めているサインです。
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