チームは“生もの”、管理しないとすぐ腐るそのひとことを言う前に(1/2 ページ)

「ただの仲良しグループ」も「ギスギスした関係」も超え、やっとチーム内の雰囲気が安定してきたと思ったのに、それでもパフォーマンスが上がらない。ですが、ここで諦めてはいけません。ここからがリーダーとして正念場といえるでしょう。

» 2015年06月11日 08時00分 公開
[岩淺こまきITmedia]

連載「そのひとことを言う前に」

 職場で感じるストレスの原因は、うまくコミュニケーションがとれないことによるものが多いようです。本連載では、伝え方や接し方、聴き方に至るまで職場でよくあるエピソードをもとに、仕事や物事がより円滑に進むようなコミュニケーションや考え方のヒントをご紹介します。言葉を受ける側の立場や気持ちを理解し、自分が発する言葉について見直してみてはいかがでしょう。


 コミュニケーションがダメなチームは、いつまでたっても成果が出ない。リーダー(プロマネ)として“チーム内で起きているコミュニケーション”に目を向け、成果を出せるいいチームを作る――このテーマもいよいよ3回目です。

 ここまで2回の記事を通して、「和気あいあいの仲良し状態」も「衝突だらけのギスギス状態」もチームとしてベストな状態ではないとお話ししてきました。

 心理学者のタックマンが提唱した「タックマンモデル」では、こうした状態を乗り越えると、メンバーが安心して仕事にあたれる“Norming(規範期)”という状態に入るとしています。そのためにも、リーダーはメンバー間の衝突や不満に向き合い、一つ一つをルール化して処理する必要があるのです。

復習:パフォーマンスの高いチームが生まれるプロセス「タックマンモデル」

  1. Forming(形成期):お互いのことや何のために集まったかなど、目的や利用できる資源などが分からない状態
  2. Storming(混乱期):チームの目的やお互いの役割などを理解したあとに、いざこざや対立などが発生している葛藤状態
  3. Norming(規範期):チーム内の規律ができ、関係性が安定している状態
  4. Performing(機能期):チームに結束力と一体感が生まれ、チームの力が目標の達成に向けられる状態
  5. Adjourning(散会):何らかの理由で、チームが解散する状態

 さて、さまざまなルールが決まれば、安定して成果出せるかというと、そううまくはいきません。あなたのチームでは、このような会話が交わされていませんか?

<とある会議での場面>

リーダー:何かここまでで意見はないかな?

メンバーA:特にありません。

メンバーB:はい、大丈夫です!

リーダー:では、この件はこれで決定ということで。

<業務終了間際に>

リーダー:急で申し訳ないけど、今日このタスクを対応しなくてはいけなくて、誰か対応できないかな?

メンバーC:すみません、ちょっと……。

メンバーD:うーん。じゃあ、私がやります

リーダー:ありがとう、Dさんお願いします。

photo 一見会話がスムーズなように見えても……?(写真はイメージです)

メンバー間の理解は深まったが……

 こうした会話は一見、何の問題もなさそうに見えます。人間関係による衝突もなく、はたから見れば、スムーズに仕事が回っているようにも見えるでしょう。しかし、ここにはメンバー同士のことが理解できたからこそ起こりうる“落とし穴”があります。先ほどの会話の中には、メンバーのこんな(本音)が隠されているかもしれないのです。

ケースA:言っても言わなくても同じこと

リーダー: 何かここまでで意見はないかな?

メンバーA: 特にありません(言っても言わなくても、変わらないから。何も言わなくていいよね)。

メンバーB: はい、大丈夫です!(意見を言うと即担当になるんだもん。言ったもん負けみたいになるし……

リーダー: では、この件はこれで決定ということで。

メンバA+B: (やっぱりねー。言わなくてよかった

ケースB:あの人に任せれば大丈夫

リーダー: 急で申し訳ないけど、今日このタスクに対応しなければいけなくて、誰か対応できないかな?

メンバーC: すみません、ちょっと……(NG出せば、最後はDさんがやってくれるだろうし

メンバーD: うーん。じゃあ、私がやります(Cさんの方が先輩だし、仕方ないよな)。

リーダー: ありがとう、Dさんお願いします。

 これらは両方とも「Norming」がうまくはたらいていない例です。メンバー間の理解が進んだために新たな“諦め”や“甘え”が生まれています。このほか、定めたルールが“なあなあ”になっていないかにも気をつけましょう。「昼休み明け、13時に午後の業務が開始するはずが、数人でランチに行ったメンバーだけ帰ってこない」といったことになっているチームは要注意です。

 ルールができたのに、ゆがみが発生する。これはチーム内に新たな“暗黙知”ができ始めているサインです。

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