スタバファンを支える、コーヒー業界“もう1つ”の第3の波(1/3 ページ)

スターバックス コーヒーが、会員サービス「My StarBucks」のために構築したオンプレシステムのAWS移行を進めている。その背景と狙いとは。

» 2015年06月23日 08時00分 公開
[岡崎勝己ITmedia]

 「スタバ、最後の空白地“鳥取”に初店舗」──。これまで店舗がなかった県へ出店することが社会現象として話題になるほど日本にも浸透した米国・シアトル発祥のコーヒーチェーン店「スターバックス コーヒー」。

photo スターバックス コーヒー(同社Webサイトより)

 その人気の理由は、店の雰囲気やサービス、味などとともに、店をより楽しんでもらうことを目的にしたネット上の会員制サービス「My Starbucks」の存在も大きい。日本でも、日本法人のスターバックス コーヒー ジャパンが2012年にはじめた。

 店舗専用のプリペイドカード「スターバックス カード」へのオンライン入金・管理機能、会員限定クーポンの配布、コーヒーセミナーの優先予約など、ファン層から日常的に店舗を使う利用者まで、会員限定のサービスを提供する。ただそのアクセスの多さゆえ、内部ではしばしばサービスレベルが低下する課題に直面していたという。

 アマゾン データ サービス ジャパン主催「AWS Summit Tokyo 2015」のセッションに登壇したスターバックスコーヒージャパン ファイナンス本部情報システム部 カスタマーサービスチームの野溝忠利氏に、顧客サービスサイト運営の課題と課題解決ための具体的なアプローチを聞いた。

システムの密結合がボトルネックの原因に

photo スターバックスコーヒージャパン 情報システム部の野溝忠利氏

 スターバックスは、My Starbucksの開始とともに矢継ぎ早にオンラインの機能を拡充させてきた。いずれも目的は顧客満足度の向上のため、つまりスターバックスを日常的に利用するファンのためだ。用意した会員限定特典やコーヒーセミナー(有料)の復習動画などの独自コンテンツ配信を皮切りに、オンラインクーポン機能や各種メッセージのやりとりを行う機能など、ここ3年で7つものサービスや機能を開始した。あわせて、スターバックスのファン層/客層をかんがみ、当初よりスマホ対応(スマートフォン表示の最適化)も積極的に推進した。スマホでのアクセス率は2013年時点で半数以上、2015年現在は7割以上を占めるという。

 だが、こうした機能の強化とスマホ利用者の増加が相まって課題も浮かんできた。アクセスの急増に起因するシステムのレスポンス低下である。

 同社はサービスの短期リリースを目的としながらも、これまでサービスごとに個別のオンプレミスシステムを導入し、運用してきた。9つに達したとするオンプレサーバは、シームレスなサービスの使い勝手を実現すべく、認証基盤と密に結合した構成としていた(図1)。

photo 図1 My Starbucks基盤の旧構成 会員認証基盤と密に結合したシステムとしていた

 こうした環境は緊密で高速な動作を可能にする半面、システムの結合部分となる認証基盤への処理がボトルネックになり、ほかの機能が影響を受けることもある。アクセスの急増に対し、どうリソースを確保するかも悩みの種だった。

 「顧客への情報提供の一環としてメールマガジンを配信しています。配信直後はアクセスがグッと増え、平常時の7〜10倍に達します。これまでもレスポンス改善のためにコストと時間を費やし各種リソースの増強を続けてきましたが、利用者が増え続けていることもあり、抜本的な対応までには至らなかったのです」(スターバックス コーヒーの野溝氏)

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