途上国に無利子で融資を行っている世界銀行は、危険地帯での交渉も多い。紛争や自然災害などといった事態に直面しても、安全、確実に業務をこなすための同行のファイル管理術とは。
世界の貧困撲滅と繁栄の共有を使命とし、途上国に無利子で融資を行っている世界銀行。186カ国に220以上のオフィスを持つ同行は、途上国支援という業務の性質上、スタッフがネット環境の整っていない地域に行って仕事をする機会も多い。
回線状況が不安定な地域では、米国の本部システムに接続できないケースもあり、現場で資料を確認する必要に迫られた社員たちが、次第にインターネット上のコンシューマー向けクラウドストレージサービスに重要なドキュメントを保存するようになっていたという。
世界銀行は、こうしたシャドーIT問題をどのように解決したのか。CIOを務めるステファニー・フォン・フリーデバーグ(Stephanie von Friedeburg)氏に聞いた。
「スタッフは、機密ドキュメントをコンシューマー向けのDropboxやGmailに保存するようになっていました。この資料の中には、私たちの顧客である政府や民間企業との交渉データも含まれており、機密情報のセキュリティ対策を講じることが喫緊の課題になっていました」――。フリーデバーグ氏は、当時の状況をこう説明する。
そんなとき、当時のMicrosoftの幹部から勧められたのが、法人向けクラウドストレージサービスのBoxだった。Boxはちょうどそのタイミングで、非営利団体向けに安価なライセンスを提供するプログラムを準備していたという。
クラウドストレージの選定に当たっては、ちょうどグループウェアをLotus NotesからOffice 365に移行するタイミングだったこともあり、MicrosoftのOne Driveや法人向けDropboxも検討したが、最終的にはBoxを選んだ。
決め手はセキュリティだったとフリーデバーグ氏は振り返る。BoxはSSL、256ビットAES暗号化、顧客が暗号化キーを所有し管理できるEnterprise Key Managementオプションなど、コンテンツからネットワークレベルに至るまで、さまざまなセキュリティ機能を備えていたからだ。
「選定に当たっては、”ファイアウォール内にあるのと同レベルのセキュリティを確保すること”が条件でした。Boxはこの条件を満たしていましたが、選定当時、ほかのソリューションは足元にも及ばなかったのです」(フリーデバーグ氏)
もう1つのポイントは、細かいアクセス管理が可能な点だ。例えば、スタッフがメール添付で機密情報を送ってしまった場合、これまではその後の追跡や管理がほぼ不可能だった。それがBoxの導入で、ファイルやフォルダへのアクセス権を細かく設定できるようになり、“誰がいつ、どのファイルにアクセスしたかが分かる記録”も残せるようになった。
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