どうする、危険地帯のファイル管理 世界銀行の解決策は(2/2 ページ)

» 2015年11月16日 08時00分 公開
[末岡洋子ITmedia]
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危険地帯でのBCP対策に威力を発揮

Photo 世界銀行のCIOを務めるステファニー・フォン・フリーデバーグ氏

 フリーデバーグ氏によればBoxは、想定外のメリットももたらしたという。世界銀行のオフィスは紛争や自然災害など危険な事態に直面することもある。その場合は現場のスタッフがサーバを安全な場所に移し、IT担当者が設定作業をしたあとにやっと業務を再開できる――という状況だった。

 それが現在では、緊急時にすぐスタッフが安全な場所に移動し、素早く業務を再開できるようになった。スタッフはサーバのデータを消してすぐ避難し、移動先の新オフィスでPCをネットに接続すればすぐ、仕事で使う重要なファイルにアクセスできる。実際、南スーダンなどの紛争地帯でこうした事態が発生した時は、Boxに救われたという。

 「スタッフたちの1年分の出張回数は合わせると15万件にもなります。こうした環境下で、出張の際に必要なファイルをPCに入れて持ち歩くのは最適な方法ではありません。出張先ではタブレットを通じてBox内のファイルにアクセスできるようにしたいと考えています。いくら魅力的なサービスでも、アプリがモバイルに非対応なら当社の導入検討からは外れます」(フリーデバーグ氏)

 Boxの機能拡張にも注目しており、同社が公開するAPIを利用したポータルの作成も進んでいる。今後は、スタッフがファイルを保存するのに利用する共有サーバをBoxベースに移すことも検討しているという。

 ただ、フリーデバーグ氏はクラウドが安全だと確信しているわけではなく、依然、セキュリティへの懸念はあるという。Boxの導入で、個々のスタッフが好き勝手にコンシューマー向けクラウドストレージサービスを使うという”シャドーIT問題”は解決したが、「対策はまだ完璧ではない」と話す。

 世界銀行ではクラウドの利用に当たり、契約面や機能面で必要な要件を定義しているほか、情報を246種類のカテゴリーに分類し、機密性のレベルに合わせたヒートマップを作っている。例えば、機密性が低く公有の状態に近い情報にはセキュリティ投資の必要はないが、確定していない融資などの機密性が高い情報については、コストをかけて安全性を確保する必要がある。

 同行は現在5つあるデータセンターを将来的に統合することも検討しているという。データセンターの半分が災害復旧とバックアップ用だが、ここでクラウドを活用すればコストを削減できる。世界銀行にとって、クラウドがITのメインになる日はそう遠くなさそうだ。

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