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» 2016年07月20日 13時00分 UPDATE

クラウド導入で負担が減ったフジテックの情シスがやっている仕事 (1/3)

クラウド導入で仕事が減った情シスはどうすればいいのか――。そんな課題に取り組んでいるのがエレベーター大手のフジテックだ。新たな役割を担った情シスは今、どんな仕事で現場に貢献しているのか。

[御手洗大祐,ITmedia]

 「情報システム部門と現場との間に距離がある」――。エレベータ大手、フジテックの情報システム部門に部長として入社した友岡賢二氏は、こう感じたという。

 フジテックといえば、エレベータ業界の中でもいち早く事業のグローバル化に取り組んだ企業。今や世界25の国と地域で事業を展開しており、海外での売上が6割を超えている。国内外に多くの拠点を持ち、拠点間の連携はうまくいっているにもかかわらず、本来、一体であるはずの「現場のプロセスとIT」がかみ合っていなかったというのだ。「プロセスを深く理解しないままシステムを作っていたり、作ったシステムがどう使われているのかへの関心も薄かったですね」――。友岡氏は当時をこう振り返る。

 モバイルとクラウドの活用が遅れているのも気になる点だったという。「普通の人々の暮らしがクラウドとモバイルでどんどん変わっているのに、社内に目を向けるとワークスタイルが旧態依然として変わっていないんですね。改革の必要性を強く感じました」(同)

 こうして情報システム部門の改革に乗り出した友岡氏は、どんな方法で現場とIT部門の距離を近づけていったのか。そのプロセスを聞いた。

Photo フジテック情報システム部門の友岡賢二氏

クラウド化で変わる情シスの役割

―― 情報システム部門をどんな風に変えていこうと考えたのですか。

友岡賢二氏(以下、友岡氏) これからの情報システム部門の姿を考えるヒントになったのは、2冊の書籍でした。1冊は、米テクノロジー思想家のニコラス・カー氏が書いた「クラウド化する世界」、もう1冊は、その2年前くらいにジャーナリストのトーマス・フリードマン氏が書いた「フラット化する世界」です。

 ニコラス・カー氏は著書の中で、「情報システムは最終的に電気やガス、水道と同じようなユーティリティになる」と言っています。彼は当時、既に登場していたGoogleやTwitter、FacebookやAmazonなどのWebサービスを見て、そう書いたんですね。

 実は、海外拠点で広域の停電が起こった時に、まさにそれを実感しました。発電機があるので問題ないと思っていたのですが、数時間もすると燃料が尽きて止まってしまったのです。自分たちでいくらお金を掛けても、1社でできるシステムのケアには限界があることを思い知りました。

 もう1つ「フラット化する世界」に書かれていたことも印象的でした。これまでは国や企業がパワーを持っていましたが、インターネットの普及によって個人や国、企業はフラットな関係でコミュニケーションが可能になるというんです。グローバル化が進む中、企業ではなく個人の力でITを使った革新が進んでいくという見方に共感しました。

 その後、2011年に東日本大震災が起こりました。住民を守るために行政はさまざまな情報を発信しなければならなかったわけですが、機器が壊れたり津波に流されて、なかなか思うようにいかなかった。そんなときに、一般の人々がTwitterを使って「ここに物資が欲しい」「ここに支援の人が必要」というやりとりを始めました。ここでコンピュータを取り巻く世界が大きく変わった気がしたんです。AWSが日本のリージョンを立ち上げたのも、ちょうどこの時期でした。

 個人の体験でいえば、システム運用現場の苦労と、コストが掛かって大変なことが感覚的に分かっていたので、AWSが使えるようになった時にクレジットカードさえあれば10分くらいでサーバを立ち上げられることに感動しました。

 AWSのS3のサービスを立ち上げて、自分の撮った写真をアメリカのリージョンにアップロードして、それをヨーロッパのリージョンに移す――ということを、自分のPCから簡単にできてしまうのを体験したのは大きかったですね。こうした経験を経て、世の中が新たな方向に進んでいく中では、企業もそのエコシステムの中で変わっていくべきだと思ったのです。

今や、クラウドのほうが安全?

―― クラウド化については、セキュリティ面の不安などから反対する声も多かったのではないでしょうか。

友岡氏 国外に情報システムを持つということに対して、さまざまな課題や懸念があるのは当然のことです。しかし、結局はどのリスクを取るかという話だと思うんです。リスクを議論する時によくあるのが、世間一般の基準と社内の基準を比べた時にどれだけ妥当性があるのかという視点。この視点でもう一度、リスクそのものを見直す必要があるんです。

 ITの世界は常に不完全なまま発展していきますが、不完全ながらも徐々に進化しながらプラットフォームとして使えるようになっていきます。スタートアップであれば早い段階で導入できると思いますが、大企業になればなるほど導入が遅くなるのは仕方がないことでしょう。それでも今は、“クラウドの方が安全”といえる企業が大半だと思います。

 しかし、それを阻止するという点で、古い考えのSIerと情報システム部長の利害が一致するんですよね。互いに傷を舐めあうことで、変われない構造を作っている。情報子会社を作った時に、SIerとパートナー関係になっていたり、そこがデータセンターを運営していたりするような構造になっている会社も実は多いんですよね。

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