SUBARUの航空機生産を支える1人の男と「QlikView」「見える化」で業務改革(2/4 ページ)

» 2017年05月15日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 「航空機は息が長く、40年前に開発した飛行機でも現役で飛んでいますし、生産し続けているものもあります。ボーイング767だったり、777だったり、自衛隊のヘリコプターだったり……比較的新しい787まで、さまざまな機種が合わさるとレコードが百万単位になってしまい、データサイズが膨らんでAccessで扱いきれない量になってしまったんです」(野中さん)

 その解決策として出てきたのがBIだった。ERPシステムの導入時から付き合いのあるベンダーに相談したところ、BIを勧められたのがきっかけだ。さまざまな製品を検討したが、手軽さやライセンス形態などを考慮した結果、クリックテックの「QlikView」を導入するに至った。

 「実は別のBIツールを導入する直前までいっていたんですが、テスト導入をしたときにデータモデルを提示する部分でてこずっていました。QlikViewはデータモデルの設計などをすっ飛ばして集計結果を出すことができ、ツールの見た目も良かったのが印象に残っています。扱うレコード数でライセンス形態が決まる製品もありますが、QlikViewはユーザー数で決まります。弊社の場合、今後航空機の機種が増えることを想定すると、後者の方が価格を抑えられると考えました」(野中さん)

 野中さんのこだわりで、データの閲覧については工場の従業員全員ができる体制にし、データ作成や編集を行うのは20人程度と想定してアカウントを購入した。簡易的なデータベースを作成できるというメリットもあったため、業務改革プロジェクトの予算でシステムを構築できたという。そして、稼働用のサーバと合わせてQlikViewを2013年の10月に発注。年内には稼働を開始したそうだ。

photo 生産管理システムや会計システムなど、さまざまなデータをQlikView用のファイルに変換し、パワーユーザーが分析した結果をさまざまなユーザーが見られるように設計している(資料提供:SUBARU)

非公式組織「ICTリーダー会」を発足

 BIツールを導入した後に野中さんが行ったのは「パワーユーザー探し」だ。業務部門でも扱えるとはいえ、誰もがすぐに使えるようになるわけではない。そこで野中さんが目を付けたのが社内の“有名人”だ。

 「私たちの文化として、良くも悪くもExcelで何でもやってしまうというものがあります。ExcelのマクロとかSQLとかAccessで何とか業務を回していく。ERPのデータ自体は取得できるので、それを使って業務ツールを自作する人が各部署にいたんです。そういう人たちを“有名人”と呼んでいました。まずは彼らに声をかけ、QlikViewの講習を受けてもらいました」(野中さん)

 彼らはExcelのマクロで夜中じゅう計算させたり、Accessで8時間ずっとクエリを回していたりとさまざまな苦労を味わっている。SQLを普段から扱っていることもあって、少し知識を与えれば、あっという間にQlikViewの使い方を習得したという。そんなパワーユーザーを集め、野中さんは非公認の組織「ICTリーダー会」を発足させた。

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