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こだわりのカメラブランド――リコー「GR DIGITAL III」開発者に聞く永山昌克インタビュー連載(2/3 ページ)

» 2009年09月08日 08時30分 公開
[永山昌克,ITmedia]
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ストリートスナップに適した広角レンズ

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 最新モデル「GR DIGITAL III」では、開放値F1.9の明るいレンズを搭載したことがポイントのひとつだ。ただし、同社「GX」「CX」「R」シリーズなどが備えるイメージセンサーシフト式の手ブレ補正機構の搭載は見送られた。樋口氏は「手ブレ補正機構では、被写体ブレを防ぐことはできません。将来的に採用する可能性は分かりませんが、今回のGR DIGITAL IIIでは手ブレ補正機構の検討は特にありませんでした。それよりも、レンズを明るくすることで手ブレと被写体ブレの両方を低減できるよう、より明るいレンズを作ることに注力しました」と述べる。

 レンズユニットのメカ設計を担当した、同社 PMMC ICS設計室 設計1G シニアスペシャリストの大野武英氏は、「F1.9の大口径レンズで、周辺までの解像力を持たせるには技術的困難がありますが、収差補正のレンズを追加したり、レンズを動かす仕組みに独自の工夫を取り入れることで、より高精度な構造とよりよい描写を達成できました。明るさとトレードオフの関係で、従来よりレンズはやや大きくなりましたが、ボディ全体に大きな影響を与えないギリギリのバランスだと思います」という。ちなみに、GR DIGITAL IIIでは、画像処理によるデジタル的な収差補正は行っていない。

 プロダクトマネージメントを担当した、同社 PMMC ICS設計室 推進グループリーダー兼購買部署グループリーダーの刈間毅氏は、「明るいレンズや大型の液晶モニターを新搭載しつつ、“ポケットに収まる”というGRのコンセプトを崩さないことに苦労しました。縦横のバランスが異なる数パターンのモックを作成し、機能美的に最も美しく、かつこれまでのGRのイメージを継承するデザインを採用しました」という。

 銀塩GRから続き、28ミリ(相当)の焦点距離を採用するのなぜか、という問いに対しては「突き詰めると、難しい質問ですね。35ミリではちょっと狭いし、21ミリでは広すぎて使いこなすのが難しい…。最近は、他社のエントリー機も含めて24〜28ミリからのズーム機が増え、一般ユーザーにとっても28ミリはごく当たり前の焦点距離になりつつあると思います。そもそも当社の普及機では、業務ユースを視野に入れて、たくさんの情報量を一画面におさめられる、という理由から28ミリ対応の製品がスタートしました。また、GR DIGITALのあるユーザーからは、28ミリは狭い日本でちょうどストリートスナップがしやすい画角、という意見もありました」(樋口氏)。

photo 商品企画を担当した樋口氏(左)とプロダクトマネージメントを担当した刈間氏(右)
photo 左から、レンズユニットのメカ設計を担当した大野氏、画質全般を担当した中平氏、カメラのソフト関係のリーダーを担当した橋本氏

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