連載
» 2011年06月27日 14時48分 UPDATE

本田雅一のTV Style:半導体至上主義の先を見据えた東芝“REGZA”(1)

今春、東芝“REGZA”の映像エンジンが変わった。「メタブレイン」から「レグザエンジンCEVO」への切り替えが示すものとは? 6年前、メタブレイン・プロに着目して広く紹介した本田雅一氏が読み解く。

[本田雅一,ITmedia]

 長年培ってきたアナログテレビでの高画質化に関するノウハウを、デジタルのフラットパネルでも生かす――。東芝が、テレビ向けには明らかにオーバースペックと社内でも議論になった大規模カスタムLSIを開発し、映像処理エンジン「メタブレイン・プロ」として「Z1000シリーズ」に搭載したのは2005年のこと(発売当初はまだREGZAブランドではなかった)。あれからすでに6年が経過した。

ts_face01.jpgts_face02.jpg 2005年に発売された「Z1000シリーズ」(当初はREGZAではなく、beautiful faceブランドだった)と「メタブレイン・プロ」。メタブレイン・プロには64ビットプロセッサが2個、32ビットプロセッサが2個搭載されていた

 意外かもしれないが、当時はソニーが「WEGAエンジン」から始まるデジタルフラットパネル向けの映像処理に関して訴求をしたことがあったものの、メーカー側も製品を評価する側も、テレビに搭載するLSIや映像処理エンジンの性能に関する話を主題にすることはほとんどなかった。

 “半導体技術とデジタルフラットパネルテレビの高画質化の関係”という観点で取材記事を掲載したのは、おそらく筆者が本誌で書いたものが最初だったと思う(→2005年の記事)。なぜなら、それまで家電メーカーは、テレビから出てくる最終的な映像の善し悪しで判断してほしいというスタンスだったからだ。訴求したとしても、組み込まれている処理の概要を示すだけ。使っている半導体やエンジン全体のスペックは、あまり重要だと考えられていなかったわけだ。

 しかし、技術は積み重ねだ。ソフトウェアも時間をかけなければ成熟していかない。ましてや、テレビはデジタル化が進行中で、毎年のように自動画質調整機能やネットワーク/USB録画、DLNA対応、DTCP-IPダビング、テレビ番組表示の改善、超解像処理など新しい機能が加わっていった。

 東芝はその後、メタブレイン・プロに使われたLSIのメモリークロックを増速、さらに必要な機能ごとに強調動作を行うコンパニオンLSIを組み合わせるなどして、昨年末までメインの処理LSIを継承してきた。この早い進化の中で、常にアドオンで画質・機能の改善と追加を安定して行えてきたのは、プラットフォームの継続性があったからだ。

 もちろん、プラットフォームの継続性だけでは魅力的な製品になるわけではないが、必要になると考えられる能力を高めに見積もり、長期にわたって熟成と積み上げを行っていくスタイルは、東芝のテレビ事業が一時期の崖っぷちから復活してきた過程で、重要なポイントだった。

 現行機種に採用されている「レグザエンジンCEVO」も、すでにいくつもの記事で紹介されているように、搭載されているLSIは前回と同様に”オーバーキル(必要以上の高性能)”な仕様だ。プロセッサの能力は従来比約3.4倍、2個を同時に使う「レグザエンジン CEVO Duo」では6.8倍とのアナウンスが行われている。

ts_cevoduo01.jpg 今春発売の「ZG2シリーズ」に搭載された「レグザエンジンCEVO Duo」

 アーキテクチャも現代的なものになり、どちらかといえばスマートフォンに近い分業制になっている。ネットワーク処理とグラフィック処理からCPU負荷を可能な限り解放し、ネットワーク処理が加わっても全体のレスポンスに影響を与えず、GPUの積極活用で操作に対する利用者への応答が速くなり、実質的な能力向上以上に気持ちよくレスポンシブに動くようになった。

 もちろん、映像処理専用回路の部分も大幅にアップグレードされ、複数フレーム超解像技術の導入などもなされている。映像処理は元もと良かった階調処理や液晶パネル上での疑似階調表現に、色信号のアップコンバート処理が大きく改善したことで、さらなる情報量の増加と豊かなディテールが生まれている。

 とくに注視したい点が、高画質な映像ソースに対しても効果を感じるという点。映像処理においては、”元映像のエンハンス”によって高画質に見せている面が少なからずある。エンハンス処理は元映像の情報をある程度変えてしまうため、見栄えは良いものの現信号に対して忠実というわけではない。ところがレグザエンジンCEVOは、高画質な市販Blu-ray Discを見ても、従来エンジン採用機に比べて明らかにスッキリとした映像になっているのだ。フォーカスの合う部分がより鮮明になりつつも輪郭強調のニュアンスはなく、ピンから少しずつボケていく過程にも不自然さがない。これはエンハンスに頼らず、現信号に含まれる情報を最大限に引き出しているからだ。

 これらは従来から積み上げてきたノウハウや手法を、新しいLSI設計の中に反映させ、その上に新LSIの能力によって実現できる、言いかえれば従来はやりたくとも難しかった要素を追加しているわけだ。

 もっとも、レグザエンジンCEVOの能力を高めるために、東芝グループ内の研究開発成果や半導体技術をフルに生かし、異なる組織間も連動しながら製品作りをするというやり方は、彼らにとっては序の口だ。半導体至上主義の先に、新しいやりたい事を見据え、東芝は新たなエンジンの基本設計図を錬った

(以下、次回)。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

この記事が気に入ったら
ITmedia LifeStyle に「いいね!」しよう