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» 2011年08月08日 14時21分 UPDATE

本田雅一のTV Style:「スマートテレビ」の論点をもう一度整理してみよう(2)

「スマートテレビ」において重要なのは、新たなサービスに柔軟に対応できるかどうか。なぜなら、インターネット上で提供されるサービスが変化していく速度とテレビの買い替えサイクルを比較すると、前者の方が圧倒的に速いからだ。

[本田雅一,ITmedia]

 先週の月曜日は「スマートテレビ研究室」でシンポジウムを開催した(→動画アーカイブはこちら)。ご覧になっていただいたかもしれないが、その中の議論でわたしがスマートテレビであるための条件として提示したのは、新たなサービスへの柔軟な対応性である。もちろん可能な範囲で……ではあるが、この条件はとても重要だろう。

 なぜなら、インターネット上で提供されるサービスが変化していく速度とテレビの買い替えサイクルを比較すると、前者の方が圧倒的に速いからだ。テレビの買い替えサイクルは5〜10年。しかしインターネット上のサービスは毎年どころか、数カ月に一度は新しいサービスの開始やサービス内容の更新が行われる。

 今日購入したテレビが、来年始まる新しいサービスに対応できない、というのでは話にならない。もちろん、性能上の制約がある場合は致し方ないが、昨年購入したテレビでも、今年から始まる新しいサービスには接続したい。だから、これからはテレビにも”新たなサービスに対応するためのアプレット”を動作させる仕組みが必要になってくる。

 日本ではオンデマンドのビデオ配信サービスは遅れているじゃないか。本当にそんなものが必要なのか? という疑問もあると思う。しかし、今後はネット経由の映像配信サービスが日本でも増加すると考えている。理由のひとつはクラウドコンピューティングの発展で、ネットワークサービスを運営するコストが下がっていることだが、ほかにも主な理由が2つある。

 まず、日本のテレビ局がビデオ配信に対してやや消極的な態度を示す中、米国で人気のビデオ配信サービスが日本でもサービスを始めそうだからだ。海外ドラマ人気の中にあって、オンデマンドで米国のドラマを見ることができるとなれば、使いたいと思う読者もいるのではないだろうか。

 実際、PC向けを主体とする無料インターネット放送チャンネルの「hulu」は、今秋から日本での営業を開始すると言われている。当初の中心は海外ドラマとのことで、日本のテレビ局が持っている映像などは放送できないため、本当にうまく行くのか? という疑問の声も聞くが、こればかりはやってみなければ分からない。

 huluが上手く行けば、それに続く会社もあると考えられる。”どのインターネット映像配信サービスが良いか”は、”どの衛星放送サービスを選ぶか”とよく似ている。競争が激しくなれば、より魅力的なインターネット映像配信サービスも生まれやすくなる。日本でどんな映像配信サービスが定着するかは分からないが、テレビには何が定着しても対応出来るような柔軟性が必要になってくる。

ts_bdps380.jpg 米国で販売しているBDプレーヤー「BDP-S380」。「Netflix」「Pandora」「YouTube」「HuluPlus」など30以上の動画配信サービスに対応している。米国での販売価格は110ドル前後

 例えば、ソニーはおおっぴらにはアナウンスはしていないものの、クロスメディアバーに追加されるアプレットは、追加インストールするアプレットにより新しいサービスにも柔軟に対応できるようになっているそうだ。世界各国で異なるビデオ配信サービスの事情に対応できるよう、開発基盤を共通化しているためだ。

 同じ開発プラットフォームはBDプレーヤーでも使われているそうで、製品に搭載されている内部メモリなどによって対応可能なアプレットには若干の差はあるものの、プレーヤとテレビの間でもネットワークサービスへのアクセス機能を共有できる。海外で発売されているBDプレーヤーが、すでにそのような設計になっている。

 今後、日本で同様の製品が発売されるときに、やはり多様なインターネット映像配信サービスに対応出来る柔軟性を備えていると想像される。同じプラットフォームが使われる事は間違いないはずだ。何時どうなるかは別として、他メーカーも同様にハードウェアが持つ能力の範囲内で、各種サービスへのアクセス手順をアップデートで追加・変更する機能の装備が今後は進んでいくだろう。

 次回はもう1つの大きな理由とハードウェア面の動向について触れる。

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