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» 2012年05月31日 18時49分 UPDATE

本田雅一のTV Style:受動的なネット利用がカギ? KDDI「Smart TV Box」の戦略(2)

前回のNTT西日本「光ボックス+」に続き、KDDIが今夏にトライアルを開始するという「Smart TV Box」を読み解いていこう。

[本田雅一,ITmedia]

 前回は、NTT西日本が発売したセットトップボックス(STB)タイプのネット端末「光ボックス+」を中心に、テレビで利用することを前提としたネット端末(セットトップボックス)を紹介した。

ts_hikaribox02.jpg NTT西日本の「光ボックス+」はAndroid搭載のSTB。西日本エリアで3月下旬から販売している。価格は8800円

 セットトップボックスに活路を見いだそうとする通信企業が増えている背景には、あふれるほどのコンテンツ、ユーザーニーズの多様化、時間編成で番組を見せる放送システムと現代人の生活スタイルのズレなどなど、さまざまな理由がある。

 しかし、これらは環境の変化であって、各企業の本当の目的(モチベーション)ではない。例えば前回取り上げたNTT西日本の「光BOX+」は、彼らが展開している光通信回線を用いた動画配信サービスと競合しているように思える。もちろん、光BOX+では地上デジタル放送などは見ることができないが、テレビとインターネット回線を使って何か楽しみたいというユーザーの時間を使う、という意味では競合。他社回線で光BOX+を使ってもいい。

 しかし、NTT西日本の清水氏は、「まずはテレビという身近なデバイスを通じて、ネットの世界にある情報を受け身で楽しんでもらう。インターネットを積極的に使っていない世代に対して、ネットの世界って結構面白いんだな、と感じてもらえれば、それでいい」と話す。NTT西日本が、サービスと端末、回線をセットにして売り付ける、といった構図ではなく、まずはネットワークサービスを一緒に楽しみましょう、と”こちら側に誘う”のが目的だからだ。

KDDIの「Smart TV Box」

 一方、KDDIは少し違った方向からテレビにアプローチしている。

 KDDIはケーブルテレビサービスを自ら提供しており、さらにJ:COMにも出資している。KDDIはケーブルテレビを1つの切り口として、CATV視聴に不可欠なセットトップボックスに、通信サービスを結びつけようとしている。「Smart TV Box」という商品で、昨年末ぐらいから噂に上っていたものだ。

ts_smarttvbox01.jpgts_smarttvbox02.jpg KDDIが5月15日の発表会でコンセプト発表した「Smart TV Box」。Android 4.0を搭載し、夏にはトライアルを開始するという

 同社は「ビデオパス」や「うたパス」といった、マルチスクリーン(複数種類の機器)を対象にしたメディアサービスを開始している。従来から「LISMO」などメディア配信サービスを展開していたが、スマートフォン向けサービスの拡充とともにサービス対象の機器を拡げていく。携帯電話、固定回線、CATVと、多様な回線、多様な端末に対して横断的なサービスを提供できる通信企業は他にない。

ts_smarttvbox05.jpgts_smarttvbox03.jpgts_smarttvbox04.jpg 定額制コンテンツ配信サービス「ビデオパス」「うたパス」はスマートフォン/タブレットなどマルチデバイスで楽しめる。STBの詳細は明らかにしなかったが、家庭用テレビでもauのサービスを利用できるようになるとみられる

 Smart TV Boxは、投資が集まってきているスマートフォンをフックにして、それを他分野にも波及させようとするKDDIの戦略を象徴する製品といっていいかもしれない。CATVチューナーとしてテレビを楽しみながらも、ネットワークサービスをテレビ番組と区別なく楽しめるよう工夫されているという。さらにAndroid 4.0搭載でGooglePlayにも対応するという。

 詳細は未発表だが、7月ぐらいにはデモできるバージョンが仕上がり、その後、クローズドなテストが行われる、といったスケジュールのようだ。もともとがCATVのセットトップボックスだけに、テレビ視聴者にとって自然なユーザーインタフェースが採用されるという。決済システムとしてau IDを活用できるため、各種有料サービス提供のプラットフォームとしても有望といえるだろう。

 こちらはauの強みである多様な通信インフラを提供し、決済システムを保有している点を強みとして生かした形。なお、インターネットサービス専用のセットトップボックスとしては利用できず、CATV加入者のみが利用可能な端末になるとのことだ。

 テレビ自身が持つネットワーク機能も、今後はどんどん良くなっていくだろうが、それを上回る速度で、他業種から”テレビ的な存在”へのアプローチが加速するのは間違いない。複数のメーカーが群雄割拠し、単価も(安くなったとはいえ)簡単に買い換えるようなものではないテレビではなく、そこに接続する機器で勝負しようとする企業は今後も出てくるはずだ。

 ただし、既存のあらゆるテレビには、そもそも通信機能があるではないか! と叫ぶ声もある。日本テレビが発表、以前、この連載でも取り上げた「JoiNTV」がそれ。すでに全国で1億台が稼働しているデジタル放送対応テレビのパワーを活用しない手はない(続く)。

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