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受動的なネット利用がカギ? NTT西日本「光ボックス+」の戦略(1)本田雅一のTV Style

» 2012年05月15日 13時19分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 スマートテレビというキーワードの是非や定義はともかく、”テレビ画面”を対象にしたネットワークサービスや、テレビ画面を通して従来からあるネットワークサービスを視聴する、といった提案が数多くされるようになってきた。

 しかし、テレビの寿命とネットワークサービスのトレンドは、同じ時間軸では動いていない。ネットワークサービスは、継続して機能が変化していくものだ。この1年ぐらいで「YouTube」は再生リスト関連の機能が大幅に上がっているし、画質やちょっとした再生時の使い勝手などもよく変わっている。

 これはYouTubeに限った話ではなく、サービスはアップグレードを行うことで、接続するあらゆる端末の価値が高まるので継続的に変化していくものなのだと思う。昨年と今年でネットワークサービスのトレンドがガラリと変化するなんてことは、しょっちゅうあることだ。

 そんな中で、にわかに増えていきそうなのが、テレビで利用することを前提としたネット端末。代表的な例は「Apple TV」だが、Apple TVはビデオ配信こそ日本のタイトルに対応しているものの、主に海外の情報サービスとしか連動しておらず、検索機能では日本語を入力できないなどの不便もある。目の前にあるテレビがAirPlay対応になるのは便利だが、ネット端末として見たApple TVの日本での位置付けは、現時点では微妙だ(繰り返しになるが、iOS搭載機器の所有者には便利ではある)。

 一方、Apple TVという先例にならってなのかどうかは分からないが、通信企業がテレビをスマート化するセットトップボックスを発売する例が増えている。KDDIはAndroid 4.0のCTS認証を取った端末を発売することを公言しているし、NTT西日本は昨年発売した「ブラウザBOX」という製品を改良。「光ボックス+」を用意した。

NTT西日本の「光ボックス+」はAndroid搭載のSTB。リモコン操作で各種動画配信サービスやスマホで撮影した写真をテレビに映し出して楽しめる。西日本エリアで3月下旬から販売中。価格は8800円

 ネット配信動画向けのネット端末という位置付けだが、実はこの製品。さらにいくつかの機能が組み込まれている(あるいは近日にアップデートされる予定)。この製品が興味深いのは、”インターネットを人々はどのように使っているか”に立ち返って、製品の企画を進めたことだ。”どんな機能が欲しいか”、”何をしたいか”の前に、どのように使っているか?を見直し、商品コンセプトを見直すことで、昨年発売した製品の不評を一掃しようとしたのだ。

前列右がマーケティング部アライアンス推進室の清水和也室長

 NTT西日本で光ボックス+を企画したマーケティング部アライアンス推進室の清水和也室長は、「商品企画の視点を見直し、さまざざなデータを精査しました。その結果、利用者の大半のネットワークサービス、コンテンツを”受け身で利用していることが分かったのです」と話した。

 例えば、ブログにコメントを残す人は100人中、わずか0.3人しかいない。Twitter利用者100人のうち、発言回数が10回以下の人は73人を占める。情報過多傾向の中、”まとめサイト”の閲覧数が急増。NAVERまとめのアクセス数は昨年対4倍で月間2.5億ページビューに達した。

 ネットに情報があふれた結果、自分で情報を探し、そこから取捨選択の判断をするという使い方は限界となりつつある。このような調査結果やユーザー動向から、スマートフォンやタブレットのように、アクティブに情報に接するだけでなく、受動的にインターネットを楽しむことが求められていると判断。「徹底的に受け身でインターネットを楽しめるように作られたのが光ボックス+です」(清水氏)。

 例えばYouTubeへのアクセスアプリは、YouTubeが用意しているネットチャンネルを中心に見せる形で、検索して面白い映像を探すといった要素は最小限しか用意していない。”探して見る”のは、スマートフォンやタブレットの仕事として割り切り、テレビにつなぐセットトップボックスとしては、受け身で用意されているチャンネルを見る。今後はYouTube映像のソムリエ的存在としてキュレーターを用意し、何人かの著名キュレーターの選定するYouTubeチャンネルを展開する。

 このほか、ネットラジオの「Radiko」をネットニュースの閲覧機能と統合し、音楽を聴いている間に、ニュースがテレビ画面上に流れる機能を提供。こう書いただけでは何が面白いか分からないかもしれないが、画面の動きを見ていると、なんとなくニュースによる世の中の動きが分かるように設計されており、BGV的に受け身で楽しめる作りになっているのだ。

 「NTTとは思えない」というと、清水氏は苦笑いしたが、光ボックス+はデザインやコンセプトが利用者サイドに立って考えられており、なおかつストレートに意見を反映するのではなく、ユーザーがどうやってインターネットを使っているのか? に立ち返った作りになっている。官僚的なイメージがあるNTTブランドからすると、光ボックス+の自由な発想は、良い意味で異質だ(続く)。

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