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巧みなローカルディミング、新型ブラビア「HX850シリーズ」をチェックした本田雅一のTV Style

» 2012年04月02日 10時00分 公開
[本田雅一,ITmedia]
新型ブラビア「HX850シリーズ」

 先日、ソニーが新型“BRAVIA”(ブラビア)を発表した。発表内容の詳細は、別途、本誌のリポート記事を参照していただきたいが、さっそく視聴に適した環境で画質と機能のチェックを行うことができたので、今回は珍しく新製品のインプレッションをお届けしたい。

 まず、新型発売に伴う一番大きな変化は、ブラビアのラインアップが減ったことだ。最上位にあった「HX920シリーズ」は65V型が継続販売となるものの、それ以外のサイズは流通在庫のみとなる。65インチを除き、直下型ローカルディミング機がなくなるわけだ。

 HX920シリーズの128分割制御(16×8ブロック)に代わり、最上位となるのは、「HX820シリーズ」の後継である「HX850シリーズ」だ。これらは左右側面にエッジライトを配置した16分割(8分割+左右)によるローカルディミングであり、弊害を抑えながらとなると直下型ほどの輝度差は演出できないと予想していた。

 エッジライトのローカルディミングは、派手に動かすと周囲への影響が大きく不自然になるため、映画モードなどではほとんど動かないという機種が実は多い。ところが「ハリー・ポッター 死の不死鳥Part 2」のダンジョンでのシーン。暗い背景に被写体がいくつも浮かぶようなシーンでも、違和感なくローカルディミングが動作する。

HX850シリーズの「ダイナミックエッジLED」のイメージ

 HX850シリーズは、HX920シリーズほどではないものの、かなり積極的に輝度をコントロールしており、シネスコ映画を表示する際にできる黒帯も十分に沈む。もちろん、左右が2分割しか存在しないため、シーンによってはバックライト制御の動きを感じる。とはいえ、感じる弊害の度合いと効果の度合いを天秤にかけると、なるほど900番台シリーズの後継を絞った理由も理解できる気がした。

 少々、意地悪な検証として、打ち上げ花火の映像を映してみたが、花火のパーティクルに合わせて左右から光が出ているのが見えるものの、他社製の同機能パネルを使ったモノに比べると違和感が少ない。ユニフォミディー(画面全体の明るさや色の均一性)、発色やトーンの一貫性も優れており、バックライト制御と表示画像の信号処理を同時に行うことによるダイナミックレンジの拡大が不自然な振る舞いをもたらす傾向はなかった。このあたりのバックライト制御の巧みさは、分割数が少ないとはいえHX920から受け継いだものといえるだろう。

インパルスモードに注目

「美肌コントロール」は、顔認識機能を使って肌色部分の検出精度を上げ、適した映像処理を行う

 映像処理エンジンの「X-Reality Pro」も、さらに磨きがかかり、例えば顔検出した上で肌色や画像処理の程度をコントロールする「美肌コントロール」機能が加わっているが、画質面でもっとも大きく変化しているのは、インパルスモードの追加だ。

 4倍速駆動のHX820シリーズで同じコマを4回描き込み、液晶がもっとも安定している4枚目のコマだけを、2倍のバックライト発光量で映す。トータルでの光量は半分になり若干のフリッカー感は出るものの、スポーツ番組など応答性の高さが求められる場面では従来にない高画質が得られる。

 単に動画解像度が高くなるだけでなく、部分的なチラつきが激減し、画像が安定するのだ。フリッカーが気にならないなら、スポーツ以外の映像もインパルスモードにした方が質感が良いと思うほどだ。画面が暗くなるため、店頭では良さを実感できないかもしれないが、周囲の明るさが調整された場所で見る場合は、是非試してほしい。

インパルスモードの概要

 これらに加え、表面ガラスと液晶パネルの間に特殊な樹脂を充填する「オプティコントラストパネル」(OCP)も、HX850シリーズには採用されている。OCPは昨年からの引き続きの採用だが、部屋の照明をつけている環境ではとても大きな効果を発揮する。真っ黒い画面を映し、ほかのパネルと黒さを比べると、一目瞭然に黒が黒く見える。

「オプティコントラストパネル」も黒の締まりに効果を発揮する

 新モデルではネットワークサービス対応の大幅強化が強く訴求されているが、むしろ画質面での頑張りが目立つモデルチェンジだと思う。HX920の後継が登場しなかったことは残念だったが、その分、直下型LEDバックライトと細かなバックライトエリア分割を除く特長はHX850シリーズに盛り込まれており、HX850/HX750シリーズはそれぞれチューナー数が2個(従来は1個だけだった)に増加した。

 最高を求めた製品として最上位クラスの復活も期待したいが、総じてエッジライトのローカルディミング対応機種としては、もっとも巧みな絵作りと映像処理を実現していると思う。とくにユニフォミティーの高さとリニアな階調表現、複数枚超解像の効果などのアドバンテージは大きく、このクラスの国内向けモデルに賭ける意気込みを感じさせた。

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