激変するモバイル業界に3つの提言──VodafoneのサリーンCEO:3GSM World Congress 2007

» 2007年02月19日 00時15分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
Photo 3GSM World Congress 2007の基調講演に登場した英Vodafoneのアルン・サリーンCEO兼社長

 スペイン・バルセロナで開催中された「3GSM World Congress 2007」の2日目、英Vodafoneのアルン・サリーンCEO兼社長が基調講演を行った。Vodafoneは2007年に入り、MySpace、YouTubeなどのWebコンテンツプロバイダとの提携を相次いで発表。2月11日にはHutchison Essarの67%の株式を取得することで合意し、成長が見込まれるインド市場に進出することになった。サリーン氏は、激動するモバイル市場におけるオペレータの役割について話した。

 Vodafoneは今、まさにターニングポイントを迎えている。グローバル戦略では、日本を初めとするいくつかの市場を手放して新興市場へのフォーカスを強め、その結果、加入者が20億人の大台に乗った。Hutchison Essarの株式取得で実現したインド市場への参入も大きい。Hutchison Essarは同国第4位のオペレータだが、インド市場は携帯電話の普及率が13%と潜在需要が大きい。サリーン氏は「数年で40%に達する」と急成長を見込んでいる。同社はこの買収に約111億ドルを投じるが、これは同社がこれまでに取引した額でみると3番目の規模となる。

 ビジネスモデルでは、“モバイル専業”からの脱却を図っており、ホームゾーンタリフの導入や固定網サービスの提供を一部市場で開始している。また、欧州など成熟市場においては、一貫してデータ収益増を狙っており、MySpace、YouTubeなどとの提携はすべてポータルサービス「Vodafone Live!」の強化策だ。同社は3GSMの会期中にも、「Google Maps」でGoogleと、IMサービスでYahooと提携すると発表した。

 サリーン氏は今後オペレータが注力すべきこととして、(1)収益源の拡大(2)新しい業界に向けた協業(3)迅速な経営執行の3つを挙げた。

 収益源の拡大は、無線サービスを提供する“モバイルのみ”の事業形態からの転換だ。無線でもデータ定額制が始まり、固定サービスとの競合は明らかになってきた。またエンタテインメントやコミュニケーション分野への事業拡大により、収益を多角的に得ることができるだろう。Vodafoneの場合は、Web 2.0のトレンドを受け入れオンラインコミュニティにアプローチすることとなる。

 さらには、広告などの新しいビジネスモデルも考えられるとサリーン氏。ユーザーの属性や地域が明確で、常に電源が入った状態にある携帯電話は、広告主にとって価値のある絶好のターゲットだ。「市場はテレビやPCの世界よりも大きい。だが、モバイルブロードバンドなしにはこのチャンスを逃す」とサリーン氏は述べる。広告以外の新しいビジネスモデルとしては、モバイルテレビや決済機能などを挙げた。

 新しい業界に向けた協業は、共通仕様の確立に向けたものとなる。SMSの相互運用性確保でGSMが成功したように、モバイル広告などの新しい業界の課題に向け、協業が不可欠だとサリーン氏は説明。例えば広告の場合、動画配信を視野に入れたモバイル広告プラットフォームの標準がなければ市場は分断化し、「大きなチャンスを逃すことになる」と警告する。これはモバイルテレビや決済分野でもいえることだという。

 迅速な経営執行は、動きの速い通信業界で生き残るために不可欠な要素だ。Microsoft、YahooなどPCインターネットのプレイヤーが、モバイルに本腰を入れ始めている。サリーン氏は、YouTubeが18カ月で2000万ユーザーを獲得した例を挙げながら、「製品やサービスの迅速な開発・提供なしには、ほかの業界にパイを持っていかれてしまう」と話す。

 これは、次世代技術の導入でも同じことがいえる。固定ではWiMAXが、無線ではLTEがあるが、WiMAXは商用サービスが始まっているのに対し、LTEは仕様が固まっていない段階だ。「オペレーターの将来のニーズに対応しなければ、リスクを負うことになる」(サリーン氏)。そして、GSM Association(GSMA)に対し協力を呼びかけた。

 サリーン氏は最後に、業界との協調や提携を通して、モバイルのみのオペレーターからトータルコミュニケーションをサポートするオペレーターに変換していく必要性を強調して講演を締めくくった。

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