ニュース
» 2009年03月03日 07時00分 UPDATE

「ソニーらしさ」は「体験」に 「ネットワーク」に生き残り賭けるソニー

ソニーの大幅な改革のキーワードは「ネットワーク」。単にハードが優れていれば売れる時代ではなく、未来をネットワークに託したソニーだが、Appleや任天堂のような「らしい体験」の創出には産みの苦しみも伴いそうだ。

[ITmedia]

 「ネットワークにつながる製品の加速が必要だ」「ネットワーク化、ソフトウェアを統合した製品で差別化していく」──大幅な機構改革と新経営体制を発表したソニーのハワード・ストリンガー会長兼CEOは、「ネットワーク」という言葉を記者会見で繰り返し口にした。

 ゲーム事業とエレクトロニクス事業を統合し、「ネットワーク」を切り口でゲームやVAIOなどを含む新事業グループに再編。ソニーの未来を「ネットワーク」に託したが、米Appleや任天堂に後れを取ってきた「ユーザー体験」の創出には産みの苦しみも伴いそうだ。

photo 平井氏(右から2人目)らソニー新経営陣と、副会長に就任する中鉢社長(右から4人目)
photo 4月1日以降の新体制

 機構改革では、VAIOやゲーム、ウォークマンやソニー共通のサービスプラットフォームを開発する「ネットワークプロダクツ&サービス・グループ」を新設。ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の平井一夫社長兼グループCEOがプレジデントに(SCE社長も兼任)、デピュティプレジデントに米Sony Electronicsの鈴木国正氏が就任。鈴木氏はVAIO事業本部長も兼任する。

 ストリンガー会長は就任以来、「ソフトとハードの統合」を繰り返し訴えてきた。携帯型音楽プレーヤーの代名詞だったウォークマンという財産がありながら、その座をAppleのiPodに奪われたのは、iTunesというソフトを生み出す力がソニーに欠けていたからだ。

 ストリンガー会長は就任以降を振り返り、「ソフトとハードの統合は大きな前進を遂げてきた」と評価する。だがさらに「次の一歩を踏み出す。新しい市場、新しいユーザーを生み出せるようにビジネスを変えていく」という。そのキーになるのが「ネットワーク」だ。

 新設する「ネットワークプロダクツ&サービス・グループ」のトップに就任する平井氏はCBSソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)出身で、Sony Computer Entertainment America(SCEA)社長から2007年、久夛良木健氏の後任としてSCE社長に就任。北米経験が長く、英語も堪能な48歳だ。「プレイステーションでハードとソフトを一緒にマネージするビジネスをやってきたが、これがますます大切になる。インタラクティブエンターテインメントをゲーム以外の様々な領域に広げ、ネットワーク化されたソニー製品で世界に届けたい」と抱負を語る。

 ソニーのトップは常に「ソニーらしい製品とは何か」という問われ続け、自らも問い続けてきた。だが音楽やゲームなど、ソフト畑出身の平井氏はこう語る。「エレクトロニクスの会社なので『ソニーらしい製品』を追求しなければならないが、次のステップ『ソニーらしいエクスペリエンス(体験)』を考えなければならない」──

 平井氏と意気投合し、SCEAからVAIO事業部長に就任する鈴木氏も「クラウドにはあり余る情報があるが、それを有効かつスピーディーに楽しんでいるかというとそうではない。ではそこでソニーは何をするか、という点にヒントがある。デバイスからクラウドへ、逆にクラウドからデバイスへという方向もあるだろう。そしてネット上に多い映像や音楽は、ソニーがよく知っているコンテンツだ」と話す。

 「製品」から「体験」へのシフトは、“いいハードを作れば売れる”という旧来型メーカー思考の封印でもある。記者から「ソニーはエンターテインメント企業になるということか」と問われたストリンガーCEOは「ソニーはエレクトロニクス企業だ」と答えたが、その製品は豊かな技術イノベーションに加え、ネットワーク化とソフトによって差別化されていく。主力のテレビ事業で収益力向上と新興国向け戦略を推進する一方で、新しいチャレンジとなる「ネットワーク」に将来の成長を賭ける戦略だ。

 当面、ネットワーク戦略の要となるのは世界で2000万ユーザーが登録する「PLAYSTATION Network」(PSN)の活用だ。平井氏はネットワークサービスの例として、PSNを通じたビデオ配信や3次元仮想空間「Home」、PS3向け情報配信「Life with PlayStation」などを挙げた。だがそれぞれ、ソニー独自のものとは言いにくい。ユーザーに歓迎される「らしい体験」の創出は、望めば可能というものでもない。

 優れたソフトの力があれば、“簡素な体重計”というハードウェアを世界で1000万台以上販売できることを任天堂の「Wii Fit」は示した。そしてWii Fitは「任天堂らしい体験」が評価されたソフトウェアでもある。「ネットワーク」や「体験」へのシフトに生き残りを賭けるソニーは、Appleや任天堂とのこれまでの競争からさらに上の、さらにシビアなステージでその実力を試されることになりそうだ。

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -