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10代やギャルにも「かっこいいヱヴァ」を 新劇場版、モバゲー活用や109ジャックの狙い(2/2 ページ)

» 2009年06月22日 12時59分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 そのため、ファッションアイテムの監修はほとんど先方任せ。「先方のご担当は若い方が多いが、信頼できるコラボ相手と感じたら、ほとんどNGを出すことなく企画が進む」

 若い人に任せた背景には、「ヱヴァを自分たちの文化にしてほしい」という思いもある。「彼らに向けて発信されているメディアを使ってヱヴァを伝えることで、前世代の“お下がり”や押し付けではなく、『あなたがたの世代こそが新しいヱヴァを作っているんだ』と知らせたい」

ヱヴァケータイ人気 奪い合うようになくなるグッズも

画像 ヱヴァケータイ「SH-06A NERV」
画像 説明書も独自仕様

 NTTドコモと協力して開発した携帯電話も、強力なコラボグッズの1つだ。企画の検討を始めたのは、ソフトバンクモバイルが“シャア専用ケータイ”を出した07年ごろ。新劇場版第2作公開に合わせて発売することで、映画のプロモーション効果を狙った。

 外観デザインは、エヴァ初号機のデザインを取り入れるなど、ぱっと見て「エヴァっぽい」ものにするか、「NERV官給品」仕様にし、アニメにも登場させるかを検討。後者を選び、映画とのコラボ感を高めた。

 「ガワだけ変えてもつまらない」と、壁紙、メニュー画面、起動・終了時の画面まで入れ替え可能なものはすべてエヴァ仕様に。アラーム音や着ボイスは、アニメの効果音をそのまま使ったり、オリジナルの声優が新たに録りおろすなど、徹底的にこだわっている。

 さまざまなアイデアを詰め込んだ自信作だが、携帯サイトとの連動など、実現しなかったアイデアも多いという。「ドコモは部署による縦割り構造が強くてで、良かれと思った提案が部署間の壁や、過去の慣習にはばまれてなかなか通らない。もっと深く多面的なコラボレーションできればよかったのだが」と神村さんは残念がる。

 端末は、6月初めにドコモショップで2万台限定で予約を受け付けたところファンが殺到し、即日締め切った。あまりの人気にシステムがダウン。紙ベースで受け付けた予約は2万7500台と限定数を超えていたが、予約数分だけ増産することで落ち着いた(ヱヴァ携帯、仮予約分含め予約者全員に販売 「限定3万7500台」に)。

画像 箱根補完マップ

 ヱヴァ携帯はネットオークションにも多数出品され、実売価格の約2倍・20万円前後で取引されることもあった。ほかの限定グッズ――箱根町観光協会とタイアップした観光マップ「箱根補完マップ」や、ローソン限定で発売したコラボボグッズなども、オークションに多く出品されている。

 「グッズは、作品を好きになってもらったり、好きでい続けてもらうためのツール。どうやって手に入れたか、という経験込みで、イベントとして提供したかったのだが」――神村さんは、予想外の人気を喜びながらも複雑な表情だ。

 「数量の調整などをうまくできなかった責任もあるが、転売目的の人が大量に手に入れ、本当にほしい人の手に渡らないのが残念。『限定』という付加価値も提供しつつ、最大数のファンに喜んでもらえるよう模索し続けたい」

まっさらな状態で見に来てほしい

 新劇場版のプロモーションには、「お客に出している情報が極端に少ない」という特徴もある。コラボ商品を数多く出したのは、事前情報を制限している代わりの話題作りやファンサービスという意味もある。

画像 EVA-EXTRAはイメージ画像中心のフリーペーパーだ

 アニメ雑誌にキャラクターやストーリーの一部を公開したり、監督が雑誌のインタビューを受けるなどして露出を高めるといった従来の手法は採らない代わりに、カラーが制作したフリーペーパー「EVA-EXTRA」を、アニメグッズ専門店やローソン、TSUTAYA、HMVなどで配布するなど、メディアのフィルターなしに情報をダイレクトに届けることに注力した。

 異例の“見せない”プロモーションは、「新劇場版は、テレビシリーズのリメイクではなく、新しい映画。まっさらな状態で見に来てほしい」という制作サイドの思いを反映。雑誌の特集やインタビューで中身を確認するのではなく、新しい作品をさまざまに想像し、期待してもらいたいという。

 新キャラ「真希波・マリ・イラストリアス」登場や、アスカの名字が「惣流」から「式波」に変わったことがフリーペーパーや前売り券で明らかになり、ファンの間で話題になっていたが、神村さんは、「名前が“変わった”のではなく、まったく新しいキャラが登場する新作映画という意気込みで作っている」と強調。「まっさらな状態で見に来てもらい、新しい映画・新しいストーリーに感動してもらえれば」と話している。

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