chanmさんが待ち合わせ場所へ向かうと、黒縁の眼鏡をかけ、2つの箱を抱えて立つchankさんがいた。お互いの顔を見るのはこのときが初めて。chankさんはchanmさんを「なんかにやけた人だな」と思ったという。
箱の中身は「Wii」と「Wii Fit」。chanmさんに貸す約束をしていたことをchankさんは覚えていた。
「貸してくれるとは言ってたけどほんとにこんな重いものわざわざ東京から持ってくるなんてオタクの積載量ぱねぇと感動した」――chanmさんは後に、このときのことを振り返り、こんなつぶやきをTwitterに投稿している。
長野市の戸隠で名物のそばを食べ、映画「崖の上のポニョ」を見た。初めてのデートで「会話が続くわけがない」(chanmさん)と考え、会話しなくても時間がつぶせる映画を選んだ。だが予想に反して、chankさんとの会話は楽しかった。
「明日も長野で遊んでいけばいいじゃん」――chanmさんは、日帰り旅行のつもりで来ていたchankさんを無理やり引きとめた。次の日も、1日目と同じように待ち合わせし、そばを食べに行った。
長野から帰って少し経ち、chankさんは、携帯電話のメールでchanmさんに「好き」と思いを告げた。chanmさんも「話しやすい人。また会いたい」と思っていた。2人は恋人同士になった。
付き合い始めても、会話はオンラインの文字のやりとりが中心だった。昨年10月にchankさんがプロポーズしたときもSkypeを使った。プロポーズするまでに実際に会ったのは5回ほどだったが、文字の履歴は膨大だった。
2人が結婚に踏み切れたのはなぜだろうか。それには「飾らない発言ができる」(chanmさん)というTwitterならではの理由があるようだ。
TwitterはブログやSNSの日記に比べ、投稿内容を熟考したり、推敲せずに気軽に投稿できる上、さまざまな価値観の人とリアルタイムに話せるため、「ユーザーの人となりが分かりやすい」と2人は言う。Twitterを通じたやりとりがお互いを理解するのに役立ったようだ。
mixiなどでは、知り合いや共通の趣味を持つ人と交流することが多いが、Twitterでは「場に縛られず、誰もが好きにつぶやき、自分以外の人と話しているのも見られる」ため、そのうちに「立場などにとらわれず、話していて心地いい人とつながれる」という側面もあるという。「恋愛に限らずTwitterで人に出会うのはおすすめ」と2人は話す。
“ついったー婚”を知った周囲の人はみな驚いていたという。chanmさんは両親や上司、友人などに、chankさんと出会ったきっかけを聞かれたが、Twitterを知らない相手にうまく伝わらない。仕方なく「ネットで」と答えたら、両親は怪しがり、上司は「相手は実在しているのか?」と心配した。
「Twitterの説明は難しいので、今は、出会ったきっかけを聞かれれば、“mixiみたいなもの”と答えています」(chanmさん)
3月29日に入籍した。ちゃんみつ(chanm)の「みつ」(32)と、ちゃんく(chank)の「く」(9)――Twitterで使っていたアカウント名の読み方に数字を当てはめ、導き出した記念日だ。
「ネタとして面白いから」と、入籍当日、Twitterで結婚を報告した。chankさんは「つい婚」「皆様お騒がせしてすみません。」「知り合ったのもついった上です」とつぶやいた。
chanmさんは「エロ同人オタロリコン廃人の人妻なう」とつぶやき、おどけて見せた。祝福のコメントを寄せてくれた人には「結婚したらおもしろいかなーと思ったんですが思いのほか皆さん反応してくださってありがたいです」と感謝の言葉を返した。
chanmさんは今年6月に退職し、上京した。3月にはchankさんと一緒に暮らし始める予定だったが、仕事の引継ぎに時間がかかったため、入籍から約3カ月たってようやく同居生活がスタートした。
住まいは、chankさんの実家だ。2人の寝室の隣には、PCと液晶ディスプレイ、テレビなどが数台並ぶ部屋がある。「液晶大好きなんですが、とても暑いです」とchanmさんは笑って話す。
結婚してからTwitter上でやりとりは少なくなったが、Skypeは今でも続いている。寝室にいるchankさんと隣室のchanmさんがチャットすることがあるという。
結婚指輪はまだ買っていない。「指輪ってスペック表がないから選ぶのが難しくて……」(chanmさん)、「2人で使う家電はそろえたけど……。指輪はそのうちに」(chankさん)。
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