もうすぐiPhoneの独占提供が過去のものとなりそうだ。
仏電話会社Orangeは9月28日、Telefonica傘下の英O2がAppleと結んでいるiPhoneの独占販売契約が終了した時点で、英国でiPhoneを提供する計画だと発表した。英国では初めて、iPhoneを買いたいと思っている人が1社のキャリアからではなく、2社のキャリアから購入できるようになるのだ。
これは英国にとって素晴らしいニュースだが、ほかの欧州諸国と比べれば英国は大きく後れを取っている。欧州でiPhoneの独占販売契約が続く国として残るのはドイツだけになる。ドイツではT-MobileがAppleと独占提携を結んでいる。
では、米国ではどうなのだろうか。
AT&Tは依然としてAppleと独占販売契約を結んでいる。しかしこの状況がいつまで続くか疑問だ。欧州では、Appleはできるだけ多くのキャリアにiPhoneを提供するという姿勢を明らかにしている。そして一流品としてのiPhoneの魅力創出に貢献した独占契約方式は今、できるだけ多くのiPhoneを販売したいというAppleの願望の前に道を譲ろうとしている。
こういった状況を踏まえ、米国の企業やコンシューマーも、Appleが複数のキャリアを通じてiPhoneの提供を開始するという展開に備える必要がありそうだ。その準備を始めるのは、発表があってからでは遅い。現時点でも、iPhoneの入手先拡大に備えて企業とコンシューマーができることはたくさんある。
コンシューマーを対象とした契約は、キャリアが企業と結ぶ契約とは大きく異なる。コンシューマーは解約料さえ払えばキャリアとの契約を解除し、ほかに乗り換えることができる。一方、企業の場合はそう簡単にはいかない。企業はキャリアと複数年契約を結んでいることが多く、契約を直ちに解除するのは難しい。このため企業は現在の契約内容を点検して、どこかに抜け道がないか探し、iPhoneへの移行準備をいつ整えるべきかを見極める必要がある。準備は重要なポイントだ。
ユーザーはまだiPhoneを持っていないかもしれないが、同端末の採用を決める前に、それについて知ることが不可欠だ。「企業で必要とされる電子メール機能は備えているのか?」「生産性の向上に役立つのか?」「ITスタッフが把握しておくべきセキュリティ問題はないか?」――こういった数々の疑問を、企業は(そしてコンシューマーも)解決しておかねばならない。iPhoneは素晴らしいデバイスだが、完ぺきではないのだ。
iPhoneが魅力的だからといって、コンシューマーあるいは従業員が現在使っている端末よりも優れた製品であるとは限らない。「現行の携帯電話の利点はどこにあるのか?」――この疑問に答えるのは意外と難しいかもしれない。iPhoneの魅力は強烈だが、それが判断を曇らせることもあるのだ。
Apple製品を2台も購入するなんてとんでもないというユーザーもいるだろうが、もし余裕があるのなら、コンシューマーも企業のITスタッフもiPod touchを先に購入すべきだ。そうすることによるメリットは幾つかある。タッチスクリーンが自分に合っているかどうかをユーザーが判断できるだけでなく、デバイスに慣れるための時間もユーザーに与えられる。また、iPhoneの利用を始めたときに役立つアプリケーションを見つける練習にもなる。iPod touchは基本的に、iPhoneから電話機能を取り除いただけの製品なので、iPhoneを会社で使用する際に生じる可能性のあるセキュリティ問題を事前に調べることもできる。
ユーザーがiPhoneを使い始めるときに犯す最大の過ちの1つは、BlackBerryやWindows Mobileデバイスと同じような動作をするはずだと思い込むことだ。それは間違いだ。このことを念頭に置いて、ユーザーはこれまでとはまったく異なる携帯電話の世界に入るための準備をする必要がある。iPhoneの使い方を学ぶのには時間がかかり、その操作を一気に習得することはできない。iPhoneの導入に先立って従業員に使い方を学ばせることが、生産性の低下を防ぐ上で極めて重要なポイントだ。
iPhoneでは、携帯端末市場でもとりわけ複雑な料金プランが採用されている。ユーザーのニーズによってiPhoneの利用料金が大きく異なる可能性がある。特にコンシューマーは、この点に十分注意する必要がある。AT&Tの現在の料金プランを確認し、新規キャリアが参入した時点で、その料金プランがAT&Tのプランと同等であるかチェックする必要がある。キャリアのショップを訪れ、その場で契約を結んでiPhoneを持ち帰るというのでは不十分だ。最初にすべきことは、ユーザーがどれだけのテキストメッセージを送信し、何分間の通話をする必要があるのかを把握することだ。
これは企業で必要な作業だ。iPhoneを業務で利用するための準備を進めている企業は、機密データの漏えいを防止するためにセキュリティポリシーを確立する必要がある。以前から外部社会との交流に制限を設けているBlackBerryとは異なり、iPhoneは外部との交流が自由だ。8万5000本以上のアプリケーションがそろっているAppleのApp Storeは、企業が望んでいないことをする機会も従業員に提供する。セキュリティポリシーがあれば、こういった問題を多少なりとも抑制することができる。
ユーザーがiPhoneから得られる価値の主要な源泉はAppleのApp Storeだ。しかしそれは同時に、生産性の低下、セキュリティ問題、無駄な出費などの原因となる可能性がある場所でもあるのだ。企業はiPhoneの導入に備えて、どのアプリケーションを従業員の端末で許可し、どれを許可しないかを明確にしておく必要がある。同ストアで提供されているアプリケーションの中には、いかがわしいコンテンツが含まれているものもある。こういったアプリケーションを従業員のiPhoneにインストールするのを許せば、社内で深刻な問題になる可能性もある。
ほかのキャリアに移行する可能性に備えることは、iPhoneの入手先拡大に向けた準備において重要なステップだ。AppleがほかのキャリアからもiPhoneを提供すると発表した時点で、コンシューマーと企業はどういったポイントをチェックすべきか分かっていなくてはならない。例えば、各社が提供する通信エリアはどうか、3Gネットワーキングに対応しているのか、キャリアのネットワーク内での通話の料金プランはどうなっているのか、といったことだ。事前にこういった準備をしておけば、後から調べる時間を節約できる。それは、ユーザーがいち早くiPhoneを手にすることができることにもつながる。
iPhoneが複数のキャリアから提供され、その結果、AT&Tに乗り換えたくない企業とコンシューマーにとってiPhoneの魅力が高まる可能性があるからといって、必ずしもそうなるとは限らない。また、iPhoneに対抗できる携帯電話が登場しないとも限らない。iPhoneへの移行に備えるに当たっては、ほかの選択肢も検討すべきだ。iPhoneに近いエクスペリエンスを提供する携帯電話が出回っていないか確認する必要もある。もしそういった製品が存在するのであれば、そちらも検討すべきだ。
要するに、iPhoneは素晴らしいデバイスだが、完ぺきではないということだ。
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